AI半導体株を買わない理由/AI株はあと2年で下がる/芸人の価値が上がる/東大卒ポーカー王者に学ぶ株式投資術

FP1級芸人サバンナ八木がゲストとマネートークを繰り広げながら視聴者のマネーリテラシーを高める番組。第6回のゲストはプロポーカープレーヤーで個人投資家の木原直哉氏。前編では、AI半導体株を買わない木原氏が、AI株はあと2年で下がると予測する理由を聞く。 <ゲスト> 木原直哉|プロポーカープレーヤー...
ポーカー世界王者・木原直哉が明かす「負けない投資思考」とAI時代の生存戦略
世界最高峰のポーカー大会「WSOP」で日本人初のブレスレットを獲得したトッププロであり、現在は株式投資の利益だけで生活を支える個人投資家でもある木原直哉氏の投資眼が注目を集めている。
一見すると無謀な勝負の世界に身を置く勝負師に見えるが、その実態は確率と数学的期待値を極限まで研ぎ澄ませた冷徹なリアリストである。
現在、市場を席巻するAIや半導体トレンドに対して、木原氏はあえて背を向け、過熱する相場に警鐘を鳴らす。
かつて囲碁や将棋、チェスなどの頭脳ゲームがAIに制圧された歴史の当事者として、木原氏はAIの真の進化速度とその先に訪れるコモディティ化の恐怖を肌感覚で知っているからである。
本稿では、ギャンブルの胴元を避けて対人ゲームの期待値で勝ち続けてきた木原氏の確率思考から、AIバブルの本質、そしてAI時代に真の価値を持つ人間の領域までを徹底解剖する。

Q. ポーカーのトッププロが株式投資で成果を出せる共通の思考法とは何か?
世界的な金融界では、プロポーカープレイヤーが投資ファンドにヘッドハンティングされる事例が珍しくない。
その理由は、ポーカーと株式投資が持つゲーム構造の本質が完全に一致している点にある。
両者に共通するのは、不完全情報の中で確率を計算し、短期的な分散に惑わされず、長期的なプラス期待値だけを淡々と追う思考プロセスである。
勝負の世界で最も重要な鉄則は、勝つこと以上に「絶対に負けない打ち筋」を維持し続けることにある。
感情に流されて熱くなったプレイヤーから脱落していくのは、麻雀もポーカーも相場も全く同じである。
また、勝てる土俵の選び方にも明確な共通原理が存在する。
カジノでルーレットやバカラなどの胴元と戦うゲームを選べば、控除率の壁により数学的に長期的には絶対に勝てない仕組みになっている。
しかしポーカーはカジノに場代としての手数料を払うだけで、実際に戦う相手は同じ人間である。
相手との実力差さえ確保できれば、手数料を差し引いても長期的に勝ち越すことが理論上可能となる。
株式投資も同様に、理不尽な胴元が存在する市場ではなく、市場参加者同士の認識の歪みや価格差から利益を回収するゲームであるため、勝負師の直感と確率計算が直結する。
Q. ポーカーと株式投資では専業として生計を立てる難易度にどのような違いがあるのか?

初期の小遣い稼ぎという段階においては、株式投資よりもポーカーの方がはるかに敷居が低く勝ちやすい。
ルールと基本的な確率セオリーを学び、自分より実力の劣るプレイヤーが混ざるテーブルを選べば、比較的早い段階でプラス収支を達成できるからである。
しかし、そこから専業として生活費のすべてを賄う領域へ到達しようとすると、極めて高い壁が立ちはだかる。
レートを上げるほど対戦相手の大部分が百戦錬磨のプロで占められるようになり、極小の実力差を奪い合う過酷な消耗戦に突入するためである。
対照的に、株式投資は初期段階で安定した小遣い稼ぎを実現するまでのハードルが極めて高い。
銘柄選定や企業分析の作法を知らない素人が頻繁に売買を繰り返せば、手数料と損失を積み重ねて退場に追い込まれるのが常である。
だが、一度再現性のある勝てるロジックとリスク管理術を身につけてしまえば、生活費を賄う難易度はポーカーよりはるかに低くなる。
株式市場の流動性はポーカーのテーブルとは比べものにならないほど巨大であり、運用資産の規模を拡大させても期待値が目減りしにくいからである。
億単位の賞金が出る華やかな大会よりも、日常的なキャッシュゲームで地道に資金を積み上げ、それを巨大な株式市場に投じて生活基盤を築くのがプロの真髄である。
Q. 市場が沸騰するAI関連株や半導体銘柄に一切手を出さない合理的な理由は何か?

世間では半導体株やAI銘柄で莫大な利益を上げた投資家の話題で持ちきりだが、木原氏はこれらのトレンド銘柄を全くポートフォリオに入れていない。
その理由はAIの未来を悲観しているからではなく、むしろ世間の大半の人間よりもAIの急激な進化速度を高く評価しているからである。
囲碁、将棋、チェス、バックギャモンなど、木原氏がこれまで取り組んできたボードゲームの世界は、例外なくすべてAIによって人類が完膚なきまでに敗北してきた歴史を持つ。
その進化の現場をつぶさに観察してきた経験から、現在の生成AIブームに対して独自の冷静な視座を保っている。
ゲームの歴史を振り返ると、人間とAIの実力が拮抗している短い過渡期こそが、最も世間の注目を集め、巨額の商業的熱狂を生み出してきた。
トッププロとAIの頂上決戦が組まれ、驚異的な視聴率を記録するのはまさにこの拮抗期間である。
しかし、ひとたびAIが人間を完全に追い抜いて勝負にならなくなると、世間は人間対AIの試合はおろか、AI同士のハイレベルな対局にすら急速に関心を失っていった。
人間がどんなに努力しても勝てない領域に到達した技術は、ただの当たり前の風景となり、エンターテインメントとしての熱気と過剰なプレミアムは一瞬で消失する。
Q. AI需要のコモディティ化によって先端テック市場に何が起きると予測しているのか?
現在、人々がChatGPTやClaudeなどの最先端モデルに対して高額な月額課金を惜しまないのは、人間と同等かやや上回るレベルで性能競争が拮抗しているからである。
日々の微細な知能差に価値を感じるからこそ、より優れたモデルへの乗り換えや課金合戦が成立している。
しかし、あと2年もすればAIは完全に人間が太刀打ちできない水準へ突き抜け、一般人が日常的に利用する分にはどのモデルを使っても大差がない時代が確実に到来する。
電卓の計算能力がどんなに高度化しても、100円均一の電卓で誰もが満足するようになった歴史の再現である。
技術の普及によりAIの利用回数や処理需要そのものは爆発的に増加するが、性能差が消失した市場では激しい価格破壊が起こる。
結果として「需要の総量は増えるが、業界内で動くお金の総額は激減する」という縮小スパイラルに陥る可能性が高い。
さらに半導体メモリの価格は過去2年間で過剰に高騰しており、明らかなバブルの領域に達している。
急激に跳ね上がった価格が通常のインフレ水準まで急落するリスクを考慮すれば、短期的なさらなる上昇余地があったとしても、ポーカーの理論上、下落リスクの大きすぎる勝負に賭けるべきではない。
Q. AIが急速に普及する社会において生身の芸人やサービス業の価値が高まるのはなぜか?

高度な情報処理やデジタルデータの生成が容易になるにつれて、インターネット上には本物とフェイクの区別がつかないコンテンツが氾濫する。
その結果として、皮肉にも「本物の人間が目の前に実在し、生身でパフォーマンスを行っている」という事実そのものが究極の希少価値を獲得する。
頭脳労働やデジタルの作業はコピペによって瞬時に複製可能だが、物理的な身体を持った人間のライブ体験や感情の直接共有は決して複製できないからである。
劇場で客と対面して空気を読みながら笑いを生み出す芸人や、カウンター越しに対面して寿司を握る職人の価値は、AI時代においてむしろ単価が跳ね上がっていく。
一方で、芸人を含めたプレイヤーの参入が増加するため、大衆向けに薄く広くアプローチする旧来のビジネスモデルは激しい単価下落に直面する。
これからの時代を生き残る最適解は、わずか500人程度であっても強固な信頼関係で結ばれたコアなファンを直接囲い込む生存戦略である。
巨大組織の看板に依存せず、個人が直接熱狂的なファンと結びついて収益化できる仕組みこそが、AI社会における最大の防壁となる。
木原氏自身が現在最も注力して投資しているのも、過熱するAI関連の巨頭ではなく、こうした「生身の人間とファンの結びつき」を支援する事業領域である。