マーケット超分析
日本株・米国株は停滞期へ/実体なき株高が是正される/AI・半導体企業の淘汰が始まる
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2026年10月1日

「マーケット超分析」では株式相場を徹底解説。後編では、金融ストラテジスト・岡崎良介が今後の相場を展望する。日本株・米国株は停滞期へ? <出演者> 柴田阿弥(MC) 木野内栄治|大和証券 チーフテクニカルアナリスト 1988年に大和証券に入社。 以来一貫してテクニカル分析業務に従事。 日経ヴェリタ...
日本株・米国株は停滞期へ/実体なき株高が是正される/AI・半導体企業の淘汰が始まる
日米の中央銀行が相次いで利上げに舵を切り、世界的な金融緩和の時代から本格的な引き締め局面へと市場環境は劇的な転換点を迎えている。
金融引き締めが引き起こす株価暴落への恐怖や、市場を牽引してきた人工知能(AI)ブームの持続性に対する疑念が交錯し、多くの投資家が先行きの不透明感に直面している。
しかし、過去数十年にわたる金融サイクルの歴史を冷静に紐解けば、利上げが直ちに市場の破滅を意味するわけではないことが客観的なデータから浮き彫りになる。
過去のバブル崩壊や急激な引き締めの教訓を蓄積した金融当局の挙動と、足元の実体経済の底堅さを正確に把握することが極めて重要である。
本稿では、過去8回の金融政策転換期におけるデータ比較を通じて、調整局面の真の規模や今後の投資戦略について論理的に解明していく。

Q. 米国の利上げ再開によって株式市場が再び大暴落する危険性はあるのか?
結論から明確に言えば、金利上昇要因そのものによって株式市場が直ちに大暴落へ突入する危険性は、現時点では極めて低いと評価できる。
株式市場の歴史を検証すると、1987年のブラックマンデーや2000年のITバブル崩壊、さらに2022年の急激な調整局面では、いずれも1年間で長期金利が2パーセント以上も急騰していた共通点がある。
これに対して足元の米10年国債利回りは前年比で約0.8パーセントの上昇幅にとどまっており、金利急騰による直接的な市場ショックを吸収するための十分なバッファーが残されている。
金利とは風船を一瞬で破裂させる針のようなものではなく、高水準の調達コストが長期にわたって持続することで経済を徐々に蝕む性質を帯びている。
昨年から市場に対して丁寧な地ならしが行われてきた経緯を踏まえれば、現在の金利水準のみを理由として市場全体が自壊する懸念は薄い。
しかしながら、公開市場の外部に位置し情報開示が不透明なプライベート・クレジット市場には、高金利の歪みが水面下で蓄積している点を見落としてはならない。
最低水準の格付けを持つ企業群や非公開融資で予期せぬ焦げ付きが発生した場合、市場心理の急速な悪化から信用収縮の負のスパイラルへと発展するリスクには十分な警戒を払う必要がある。
Q. 過去の金融引き締め局面と比較して今回の米利上げにはどのような特徴とリスクがあるのか?

1980年代半ば以降に米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和から引き締めへと舵を切った過去8回の転換期において、実際に株価暴落が起きたのはわずか2回にとどまる。
「利上げの実施は株価の下落を招く」という単純化された方程式は成り立たず、利上げ局面における市場の成否は当時の経済背景と市場参加者の期待値に左右されてきた。
21世紀以降の利上げ局面は急激なインフレを追認・抑制するための正常化プロセスであったが、今回は既に実質政策金利がプラス圏に達している点で過去と決定的に異なる。
表向きには物価安定が標榜されているものの、今回の引き締めの本質的な狙いは過熱した労働需給ギャップや増加基調にあるマネーサプライを冷ます点にある。
この構造は景気過熱を抑制するために引き締めを行った1997年や1999年のサイクルに酷似している。
1997年はアジア通貨危機の発生という外部要因から利上げが1回で終了し株価が4割急騰した一方、外部リスクが消えた1999年は容赦ない追加引き締めがITバブル崩壊を招いた。
足元では長期金利の上昇局面において景気敏感株である輸送株が軟調に推移しており、FRBが強気な雇用データを背景に引き締めを過度に進めて景気を殺してしまうオーバーキルへの警戒が必要である。
Q. 過熱が指摘されるAI・半導体分野の相場はバブル崩壊に向かうのかそれとも成長が続くのか?
現在のAIブームには一時的な過熱感が漂っているものの、これが直ちに致命的なバブル崩壊へと直結するシナリオは現実的ではない。
かつてのITバブル期においても、光ファイバーや高速通信インフラへの過剰投資が批判されたが、15年後には動画配信やクラウドサービスとして社会に不可欠な実を結んだ。
今回のAI相場も初期の無差別な期待買いが一巡したことで、実需を生み出せる本物の企業とそうでない企業をふるい分ける選別期間に突入している。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が大幅な調整を見せる中で、市場の選好は圧倒的な競争優位を持つエヌビディアや強固なサプライチェーン企業へと一段と集中している。
ハイパースケーラーの巨額投資競争においても、自前の事業から日銭として強固なキャッシュフローを稼ぎ出せるアマゾン、アルファベット、マイクロソフトの3社が生存競争で優位に立つ。
簿外債務を活用した無理な投資を行う企業は淘汰を免れないが、50年に1度の技術革新相場は将来の成長期待によって高金利下でも株高が許容される「利回り革命」を市場にもたらす。
過去のコンピューター黎明期がそうであったように、卓越した競争力を持つ本命銘柄を主軸として、20年単位の息の長いイノベーション相場が形成されていく可能性は極めて高い。
Q. 日米揃い踏みの利上げ新局面において日本株市場にはどのような影響や調整が想定されるのか?

米国の力強い景気拡大を背景とした利上げ局面は、本来であれば外需主導の日本株にとって決してネガティブな材料ではない。
しかし、近年の日本株急騰は低金利環境とインフレによる企業名目業績の嵩上げに依存した「リフレ相場」の側面が強く、実力以上の水ぶくれを抱えていた。
市場が真の健全性を取り戻すためには、日経平均株価で1割から2割程度、水準にして6万円割れを試すような本格的な市場調整を経ることが不可欠である。
米国市場と同様に3ヶ月から6ヶ月程度の冷却期間を設けることで、相場にまとわりついた過剰な期待が剥落し、金利上昇分と企業の実質成長が整合的な水準へと落ち着く。
この必要な調整期間を消化することにより、日本市場は2027年以降に向けて持続可能で強固なリスタートを切るための基盤を整えることができる。
これからの投資戦略においては、バリュー株かグロース株かという形式的な二項対立を超え、財務の健全性と高い信用力を兼ね備えた「クオリティ株」の厳選が成否を分ける。
金融引き締めの影響で信用リスクへの警戒が高まる局面だからこそ、強固なバランスシートと安定した収益力を持つ優良企業が、長期投資家にとって揺るぎない安全資産として再評価される。
Q. 日本の追加利上げが進展する中で長期金利や今後の為替相場はどのように推移していくのか?

日本銀行が段階的な追加利上げを推進したとしても、国内の10年国債利回りが制御不能なレベルまで急騰する心配は極めて少ない。
貯蓄意識の強い日本の家計部門は年間消費額を数倍も上回る膨大な現預金を保有しており、魅力的な利回りが生じた国債は国内資金によって円滑に消化される構造が確立されている。
一部の報道ではインフレによる預金価値の目減りが喧伝されているが、巨額の預金残高から得られる利息収入が消費物価の上昇分を十分にカバーするため、国内資金の好循環が金利の天井を自然に形成する。
一方で為替相場に関しては、際限のない円安トレンドを放置することは若者の海外挑戦の道を閉ざし、国力を根底から衰退させる重大な脅威となる。
日銀は実質金利を適正水準へと引き上げる毅然とした姿勢を示し、市場に対して日本円の先高感を明確に醸成していく責務を負っている。
米国サイドでは住宅市場の減速を起点としてサービス物価の伸びが確実に鈍化しつつあり、FRBが過度にタカ派的な金融引き締めを長期間にわたって継続する余地は狭まりつつある。
引き締め効果による景気の適度な冷却が原油需要を押し下げて資源高を是正すれば、日米金利差の縮小と相乗効果を生み出し、為替は持続可能な円高方向へと自律的に修正される道筋が見えてくる。