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AI時代に必須の思考・習慣
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2026年9月1日

AIの進化が止まらない。汎用人工知能の開発も進み、AIが組織を経営する未来もまもなく訪れるとされている。ヒトとしてAI時代にも価値を持つ思考・習慣とは何か?千葉工業大学大学院教授の岡瑞起氏に聞いた。 <ゲスト> 岡瑞起|千葉工業大学大学院教授 Artificial Life Institute(人...
AI時代を生き抜く「必須の思考・習慣」
AIの目覚ましい進化は、私たちの生活や働き方を大きく変革している。
その一方で、AIへの過度な依存が「人間の思考力低下」という予期せぬリスクをもたらす可能性も指摘され始めた。この新たな時代において、私たちはどのように振る舞い、どのような力を育んでいくべきだろうか。
本稿では、AIを最大限に活用しつつ、人間本来の価値を高めるために必要な視点と具体的なスキルを解説する。

Q. AI時代において、私たちの認知能力や思考力低下のリスクにどう向き合えばよいか?
AIが普及し、あらゆるタスクにおいて強力なアシスタントとなることで、私たちは安易にAIに答えを求め、自ら考えることを放棄しがちである。人間の認知能力や思考の筋力は、使わなければ筋肉と同じように衰えていくものだ。AIを単なる「答えをくれる存在」としてのみ扱うと、この思考力低下の最大のリスクに陥ってしまう。
そうではなく、AIを自分の思考を展開したり、深めたり、自身の仮説が本当に正しいか検証したりする「思考の壁打ち相手」と捉えるべきである。自分の頭で考え抜き、AIと対話しながらより質の高い結論を導き出す「対話リテラシー」こそが、AI時代に求められる能力と言える。
Q. AIによって生成された成果物の価値は、今後どのように変化するのか?

これまで、資料作成や議事録作成といったアウトプットには、それに費やす時間や労力、つまり「コスト」が存在し、そこに価値が生まれていた。しかし、AIの登場により、プロンプト一つで瞬時にこれらの成果物が生成可能となったことで、その作成コストは劇的に低下したと言える。その結果、短期的に見ればAIを活用して簡単に作られた成果物が高い評価を受けるかもしれない。
だが、長期的視点で見ると、AIが簡単に生み出すような成果物には本質的な価値がゼロになる未来が訪れる。AI任せで思考を停止したままでは、人間が貢献できる価値が残り得なくなるからである。企業がAIを使いこなせる人材を求める現在の潮流は、あくまで一時的な過渡期であり、3年から10年後にはその前提が通用しなくなると予測されている。
Q. AIを活用する時代に、私たちはどのような視点や美意識を磨くべきか?
AIによって誰でも短時間で一定水準の成果物を制作できるようになったからこそ、その「良し悪し」を適切に判断できる能力が極めて重要となる。専門家と非専門家を分ける決定的な要素は、この判断力にあると言える。例えば、衣服のシワの表現一つで登場人物の社会的背景を描き分ける漫画家の技法のように、対象の細部を見極め、本質を捉える「視点」は経験を通じて培われるものだ。絵の苦手な人が上達するには、単に描き方を学ぶだけでなく、動物の顔における目、鼻、口の位置関係といった「他と見分けるポイント」を認識する視点を得ることが重要なのである。このような視点は、実社会の経験を通じて無意識のうちに獲得していることが多く、これが「美意識」の基礎となる。
AI時代に磨くべき美意識とは、まず物事を捉える自分なりの確固たる視点を持ち、それを言語化できるレベルにまで整理することだ。そして、明確な正解がない領域において、「これが良い」と自信を持って言える独自の指針を持つことである。奈良美智の絵が即座にそれと分かるように、その人ならではのオリジナリティに基づいた美意識こそが、AI時代における真の価値となるだろう。
Q. AI時代に私たちが特に鍛えるべき具体的な能力は何だろうか?

AIを使いこなす上で、人間が鍛えるべきは以下の5つの力だ。
対話する力
問いを立てる力
カテゴリーを深掘る力(偏愛)
感動する力
批判する力
まず「対話する力」は、AIのように常にユーザーに寄り添う完璧な相手ではなく、子どもや高齢者のように簡単には意思疎通できない「不完全な相手」との対話を通じて磨かれる。相手に理解させるために頭をフル回転させる経験こそが、人間の対話能力と脳を活性化させる源泉となるからだ。
次に「問いを立てる力」は、AIに解決させる「答え」ではなく、過去のデータに囚われないユニークで解くことが困難な「問い」を自ら生み出す能力だ。例えば、庭の小枝集めのような誰も価値を見出さないようなささやかな出来事から独自の視点を見出し、それを価値ある問いへ昇華させる経験が重要となる。
さらに「カテゴリーを深掘る力」、すなわち「偏愛」も欠かせない。当初は周囲から役に立たないと見られていた研究でも、自身の熱狂的な関心に基づき追求し続けることで、やがて時代の最前線で必要とされる武器となることがあるからだ。
「批判する力」とは、AIが提示する結果を鵜呑みにせず、常に異議を唱え、自分で検証を試みる精神である。AIによる効率化に甘んじることなく、自分の直感や現場での実体験を信じる姿勢が専門性を高める。
最後に「感動する力」は、自分の無意識な判断基準を言語化し、「なぜそれが良いのか」「なぜそう感じたのか」を明確にできる美意識そのものである。
これらの5つの力を意識的に鍛え上げることが、AIと共存し、新たな価値を創造する上で不可欠だと言える。
Q. まだAIを使ったことがない初心者でも、今日から実践できる取り組みはあるか?
AIに触れることがまだない、という初心者の方には、まず「音声モード」から始めることを強く推奨する。パソコンやスマートフォンに向かって、テキストでプロンプトを入力しようとすると、構えてしまい心理的なハードルが高くなりがちである。オードリー・タン氏も提唱するように、まずは音声入力機能を使って、AIに話しかけてみよう。日常会話のようにAIと雑談を交わすことで、AIとのインタラクションの仕方や、基本的な挙動を自然と習得できる。
最初のステップでは、この「心理的なハードルを下げること」が最も重要だと言えるだろう。
Q. AIをすでに活用している経験者が、さらにAIを効果的に使いこなすにはどうすればよいか?

AIをすでに日常的に使っている方は、次のレベルへ進むことを目指すべきである。それは「タスクを部分的に切り出してAIに指示する」という従来のやり方から脱却し、「仕事そのものを丸ごとAIに任せる」というアプローチへの移行だ。
最新のAIモデルは、細かな手順指示よりも、達成したい「目的」とその背後にある「意図(インテンション)」だけを提示された際に、より高品質なアウトプットを自律的に生成することが判明している。これは「インテンションのコンパイル」と呼ばれている。自分の意図と言語化した目的をAIに伝えることで、プログラミングにおけるコンパイルのように、AIが自ら最適なプロセスを考えて実行するのだ。このような仕事の委託を通じて、AIを単なる道具ではなく、自律的に思考し行動する「エージェント」として体験できる。
さらに、これまでにAIと行ってきた対話の「セッションログ」を蓄積させ、それをAI自身に分析させることで、自身の思考プロセスを客観的に見つめ直し、学びを得るという高度な活用法も可能だ。これらの実践は、AIとのより深化し、価値創造につながるパートナーシップを築くきっかけとなるだろう。