マーケット超分析
日本株はさらに下がる?/底打ちは10月or年末/来年は日経平均9万円超
(712)
1.6万回視聴
2026年8月18日

「マーケット超分析」では株式相場を徹底解説。前編では、大和証券・木野内栄治&山和証券・志田憲太郎が今後の相場を展望する。 <出演者> 柴田阿弥(MC) 木野内栄治|大和証券 チーフテクニカルアナリスト 1988年に大和証券に入社。 以来一貫してテクニカル分析業務に従事。 日経ヴェリタス「人気アナ...
日本株はさらに下がる?/底打ちは10月or年末/来年は日経平均9万円超
株式市場の動向を深く掘り下げる「マーケット超分析」が、この度、隔週配信に移行した。これにより、最新の相場変動と展望を、これまで以上にタイムリーに届けることが可能になった。
今回は、大和証券調査部部長であり、元敏腕トレーダーとして独自の視点を持つ志田憲太郎氏を迎え、大和証券チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏と共に、市場の「今」を徹底解説する。
直近の日米株価動向から長期的なAI相場の真贋、そして今後の金利・為替が日本株に及ぼす影響、さらには警戒すべき市場リスクまで、プロフェッショナルの深い洞察を交え、詳細に分析する。


Q. 直近の日本株急騰は、一時的な反発に過ぎないのか?
7月下旬はAI投資回収への懸念や原油高を背景に、日米ハイテク株が調整局面を迎えた。日経平均は7月29日に一時6万1434円19銭まで下落したが、8月に入ると米大手テックの好決算を受け急反発した。
特にS&P500は8月13日に史上最高値を更新、日本株も14日には日経平均が6万9608円まで上昇し8連騰を記録、TOPIXも史上最高値を更新した。
しかし、この急騰は本格的な相場の底入れとは考えにくい。過去の大底で確認される騰落レシオの水準が未達であることや、市場を牽引する銘柄が、単独波動に過ぎないゲーム機関連や炭素繊維企業、海運株など、市場全体を連れ高にする「グループ効果」を期待しにくいセクターに限られているためだ。
8月のSQ週に株価が堅調に推移したが、日経平均VIが大きく高まらなかったことから、本格的な買い戻しやヘッジ目的の資金流入ではなく、一時的な「幻のSQ」であった可能性が高い。足元のリクルートや弁護士ドットコムなどのAIネイティブ企業の株価上昇は、AI活用による生産性向上という側面があり、これらが日立や富士通、NECのような大手テック企業に波及すれば、日本のIT関連セクター全体への牽引も期待できる。だが、今のところ全体を動かす動きにはつながっていない状況である。
Q. 半世紀に一度といわれるAI相場は、短期的なブームではなく本当に長く続くのか?
現在のAIブームは短期的なものとして捉えるべきではない。デフレが終わり、コンドラチェフの波と呼ばれる約半世紀の長期経済循環の上昇期に位置している。これは、蒸気機関や鉄道、自動車(T型フォード)、コンピューターの登場時と同様に、過去の歴史的なイノベーションが引き起こした相場が約20年間続いたのと同じフェーズにあると言える。
AIがもたらす今回のイノベーションも同様に長期的なものと予測され、短くとも2030年頃まではハードウェア株を中心に市場を牽引する可能性がある。設備投資の即時償却、米大統領選サイクルによる景気刺激策、中国の共産党大会年における株価上昇パターンなど、政治・経済的な支援材料も多く存在するためだ。
Q. AI分野への巨額な設備投資は、どのようにして回収される見込みか?

AI分野、特にハイパースケーラーと呼ばれる大手IT企業(Amazon、Meta、Google、Microsoftなど)の設備投資は急増しており、2026年には合計約6500億ドル規模に達すると予測されている。この投資回収に関して、チャットボットなどの個人向け課金のみでまかなうのは現実的ではない。
しかし、回収の肝は世界のホワイトカラー市場が持つ約30兆ドルの潜在的な価値である。AIがこの市場の作業を約20%代替し効率化することで、約6兆ドルの新たな価値が生まれる計算だ。AI企業は、この創出された価値から手数料(5%〜10%程度)を得ることで、年間数千億から1.4兆ドルを超える莫大な収益を見込むことができる。これは、設備投資額を十分に上回る規模であり、極めて良好な採算性が期待されるため、回収は十分可能であると試算されている。
Q. AIによるホワイトカラーの雇用代替は、既に現実の世界で起こっている現象か?
米国では既にAIによる雇用構造の変化、特に雇用の二極化がデータで示されている。ChatGPTリリース後、ヘルスケアや教育など対面サービスを必要とするエッセンシャルワーカーの雇用は増加傾向にある。しかし、情報処理、出版、通信、ウェブサービスなどの情報産業では、雇用者数が減少の一途をたどっている。これは、AIがホワイトカラー業務の一部を代替し、企業が人員削減や採用抑制を進めているためと考えられる。
例えば、新卒採用においては、米国で男性若年層の失業率が悪化する傾向が夏に見られている。また、日本においても富士通のような大企業が一括新卒採用を廃止し、即戦力となる中途採用にシフトする動きを見せており、AIによる雇用変革の波は確実に日本にも到来している。多くの企業がAIの活用で人件費効率化を進める流れは、今後も加速すると予測される。
Q. 米国市場の動向は日本の金利や為替にどう影響し、日本株にどのような影響をもたらすか?
米国の物価動向は、コアCPIの4割以上を占める住宅(帰属家賃)の改定期である夏を通して鎮静化に向かうと予測される。これに伴い、米長期金利も低下し、ドル安円高基調が強まる可能性がある。FRBはFIMAファシリティ(米国債を担保にFRBからドルを借り入れ為替介入を行う制度)を活用し、米国債の金利上昇を伴わない形でのドル安誘導、ひいては為替介入を実施していると見られている。
過去のデータを見ると、日本の株価と米国のFF金利は正の相関が強く、米金利低下は日本株にとってむしろ逆風となる場合がある。特に、急激な円高は輸出企業の業績に打撃を与え、日本株全体の重しとなるリスクがある。また、熊本での地震などの大規模災害が保険会社の海外資産レパトリエーション(本国送還)を促し円買いを誘発したり、日本株が下落した際に外国人投資家が為替ヘッジを解消して円を買い戻すといった、日本固有の要因も円高を後押しする可能性がある。
一方、円安が継続する場合、日本銀行は更なる利上げに踏み切る可能性が高い。市場はすでに年内に2.5回程度の利上げを織り込んでいる状況だ。加えて、日銀が四半期末に実施する強力な量的引き締め(QT)は、日本の長期金利を押し上げ、日本株全体にはマイナスの影響を与えるだろう。しかし、大手銀行にとっては利上げによる収益向上の機会となり、上方修正を促す好材料となる二面性も持ち合わせる。日本の金利・為替の行方は、世界の株価にも影響を及ぼし、投資家にとって複雑な局面が続くと予測される。
Q. 足元のAI関連株の調整は一時的なものか?また、その影響はどの程度続く見込みか?

足元のAI関連株、特に半導体セクターの不安定な動きは、一時的な「停滞の谷」にあると考えられる。この背景には、NVIDIAの新製品(Blackwellや次世代チップ「ルービン」)の出荷遅延や、製造工程における歩留まりの悪化が関係している。具体的には、SK HynixやKioxiaの決算で予想未達が見られるように、製品ミックス悪化によるメモリー単価の低下が顕著に現れ、日本の鉱工業生産統計でも電子部品・デバイス工業や集積回路(IC)の生産額が大きく落ち込んでいる状況である。
AIサーバー最大手ホンハイも、NVIDIAの新サーバー「ルービン」の出荷開始を遅らせるなど、サプライチェーン全体で新製品の立ち上げに課題を抱えている。この問題はNVIDIAの粗利益率にも影響を与え、一時的に株価を下押しする可能性がある。また、この「停滞の谷」は、データセンター向けの半導体製造装置や電子部品、非鉄金属などの日本の輸出景気全体にも波及し、その影響は最大で年末まで続く可能性があるだろう。しかし、これは長期的なAI相場の終了を意味するものではなく、新世代製品への移行に伴う一時的な調整と捉えられている。過去のイノベーションにおいても、新技術導入期にはこうした供給側の課題から一時的な停滞が見られるのが常である。
Q. 投資家が現在、最も警戒すべき市場リスクとは何か?
短期的なAI関連株の「谷」がある中でも、長期的なAI相場は依然として強力な成長余地を秘めている。しかし、投資家が最も警戒すべきは、「景気後退局面での急な金利下落」や「不景気なのに金利を上げざるを得ないスタグフレーションのような局面」である。日本においては、日銀の利上げ姿勢と、為替変動のバランスに注目が集まっている。特に、米金利を下げたい米国の一部関係者が、日銀に利上げを促すような言動を示すことがある。もし日銀がこれに乗じて引き締めを急ぎ過ぎれば、日本経済は一時的に資金繰りが窮屈になり、結果として株が買いにくい状況に陥る可能性がある。
このシナリオは、本来の景気改善とは異なる要因で市場が停滞するリスクをはらんでおり、長期的なAI相場という大きな流れを見極めつつも、短期的な金利・為替の動きや金融政策の判断が日本株に与える影響には、細心の注意を払うべきである。今回の調整局面は、短期的なノイズと長期的な成長トレンドを識別する重要な機会となるだろう。