THE DEEP SHOW
宮内義彦の失敗と後悔
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2026年6月2日

90歳になった元オリックス社長・宮内義彦氏に、東野幸治が忖度なく切り込む。「あの判断は間違いだった」という告白から、規制改革の問題点、ビジネスパーソンへのメッセージまで、90年の経営人生を語り尽くす。 <MC> 東野幸治|お笑いタレント 加藤シルビア|アシスタント <ゲスト> 宮内義彦|オリック...
90歳を迎え語る日本経済の論点:マクロ視点で読み解く課題と経営の真髄
日本経済界の重鎮として、長きにわたり多くの改革と事業を牽引してきた経営者が、90歳という年齢を迎え、これまでの経験と日本の現状、そして未来への展望を語る。プロ野球球団経営での痛恨の失敗から得た教訓、停滞する規制改革の裏側にある既得権益との攻防、喫緊の課題である人口減少と移民政策。そして、これからの時代を生き抜く若手経営者に向けた金言まで、多岐にわたるテーマに対する深く本質的な考察が示されている。

Q. オリックス球団を買収した真の狙いは何だったのか?そして、その経営からどのような教訓を得たか?
オリックス球団買収の動機は、多くの人が思うような野球への純粋な情熱ではない。社名を変更したオリックスの知名度向上が主な目的であった。当時の広告宣伝費と比較して球団維持費は安価と判断し、年間10億円程度の赤字補填ならば、効果的な広告宣伝として許容範囲だと考えていたのだ。
しかし、実際に球団を運営すると、赤字は毎年30億円にも膨らんだ。さらに自身の最大の失敗は、経営者に対し「黒字にしろ」と指示したことだと振り返る。この指示が経費削減を招き、有力選手への投資を滞らせ、結果としてチームを弱体化させた。事業成長のためには、単純な経費削減ではなく、投資による事業拡大こそが不可欠だという痛烈な教訓をここから得たのである。
西宮球場での運営にも問題があった。阪急グループ所有の球場では、野球の日程よりも競輪開催が優先され、当時の西宮市長からは「競輪の邪魔をするな」と言われた。この異常な状況が、球団を神戸へ移転させる決定的な要因となった。その後、阪神・淡路大震災からの復興支援「がんばろうKOBE」のもとでチームは結束し、イチローの活躍もあってパ・リーグ優勝、日本一を達成する黄金期を迎えることとなった。

Q. 日本経済の発展を阻むと指摘される規制改革が進まない根本原因は何だと考えるか?
日本の規制改革は、多くの課題を抱えている。バブル崩壊後、多すぎる規制が日本経済を弱体化させているとの問題意識から1990年代に動き出した改革だが、政治家と既得権益との関係が改革を阻む大きな壁として立ちはだかった。
規制改革会議で提言がまとめられても、法律の改正を必要とするため、最終的に政治家が動かなければ何も変わらない。しかし、政治家は票や献金などで支える業界団体に配慮するため、「できることしかやらない」。これでは抜本的な改革は望めない。
さらに、個別の規制緩和から農業、医療、教育といった「制度」そのものの改革へと踏み込もうとすると、強固な抵抗勢力と衝突し、議論が完全に停滞してしまう。日本の構造そのものと対峙することになるため、問題の根が深いのだ。

Q. 規制改革の推進者として、特に印象深い「改革の壁」を体感した具体的なエピソードを教えてもらえるか?
規制改革の中で特に印象に残る成功事例は、橋本龍太郎内閣時代に行われた「金融ビッグバン」である。過剰な金融規制を緩和し、市場の自由化を促したこの改革は、日本経済に合わない硬直化した金融市場を変える契機となった。
例えば、かつて固定されていた株式売買手数料の自由化を提言した際は、証券業界から激しい反発を受け、自身はメディアから「ぶっ壊す悪人」と激しく批判された。批判を浴び、訴訟に発展したケースすらあったものの、その必要性を確信し、改革を推進した。当時は自分自身が政治家になる選択肢は一度も考えなかった。あくまで民間から制度を改善しようとしたのである。
また、規制が日本に深く根ざしていることを象徴する出来事があった。細川護煕氏が熊本県知事時代、わずか10メートルバス停を移動させるために、当時の運輸省へ許可を取りに行く必要があった。地方のわずかな決定権さえ霞が関が握っている、この「中央集権」の象徴のようなエピソードは、日本の非効率な官僚主義の壁を如実に示している。政府の官僚たちは、巧みな「霞が関文学」を駆使して改革を先延ばしにする傾向があったのだ。
Q. 日本が直面する人口減少という構造的課題に対し、国力を維持するためにどのような施策が必要だと考えているか?
日本の将来を憂う上で、人口減少は避けて通れない喫緊の課題である。国力を維持したいと考えるならば、移民の受け入れは不可避な選択となる。もし「小さく貧しい国になっても構わない」というのであれば別だが、経済力を保つためには労働人口の確保が必須だ。
生産性の向上、女性や高齢者の労働参加促進といった施策も重要だが、現状の出生数を踏まえると、これらだけでは根本的な労働力不足を解消することは困難である。日本は移民政策において後発国だが、これは有利な点でもある。先行するヨーロッパの移民政策における成功と失敗の両面を学ぶことで、「いいとこ取り」の政策設計が可能だ。
単純な3K労働を移民に押し付けるのではなく、共に日本の経済力を高めるパートナーとして迎え入れる質の高い政策が必要である。文化の変容に対する国民の強い抵抗感があることも理解しているが、既に農業、コンビニ、飲食店など、多くの現場が外国人労働者なしには成り立たない現実がある。理想と現実のギャップを埋めるべく、具体的な議論を進めるべきである。
Q. これから事業を起こそうとする若い世代へ向けて、成功のために最も重要なメッセージがあるとすれば何か?
若い経営者たちに伝えたい最も重要なことは、「マクロ感を持つ」ことである。

日本人は真面目で、自分の事業領域を深く掘り下げようとする「深掘り」タイプが多い。しかし、成功する経営者になるためには、そのアプローチだけでは不十分だ。本当に重要なのは、「世の中がどう動いているか」「世界はどちらの方向に向かっているか」「自身の業界の将来はどうなるか」という大きな流れ、すなわち「マクロ感」を養うことだ。この「鳥の目」で全体を俯瞰する視点こそが、経営者に最も求められる資質である。専門的な深い知識は、その道の専門家に任せればよい。経営者は常に、全体像を見失わない視座を持つべきなのだ。

このマクロ感を養うためには、絶え間ない勉強が不可欠である。世の中は日々刻々と変化しており、学び続ける姿勢がなければ、すぐに時代に取り残されてしまうだろう。粘り強く勉強し、しっかりとしたマクロ感を持つ人物こそが、成功を掴む可能性が高いと私は信じている。