PIVOT TALK ECONOMY
中国は世界の覇権を握るか?
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2026年6月1日

「経済不況」の文脈で語られることの多い最近の中国。AI分野等で進められている経済の構造転換はどのくらい進んでいるのか?最終的に中国は世界の「覇権」を握るのか?元・創価大学客員教授の李虎男氏に聞いた。 <ゲスト> 李虎男|元・創価大学 客員教授 中国・延辺大学朝鮮言語文学科を卒業後に来日。2005年...
中国は世界の覇権を握るのか?『大国』を目指す中国の本音
中国経済の現状、対外政策、そして国家の目標に関して、一般に流布するイメージは、実際の中国の実態と乖離しているかもしれない。不動産バブルの崩壊や強硬な外交姿勢、そして台湾への武力行使といった報道は少なくないが、はたしてそれは真の中国像なのだろうか。本稿では、元創価大学客員教授である李虎男氏の見解に基づき、複雑化する中国経済の行方と、その真の野望について、新たな視点から掘り下げた。

Q. 現在の中国経済はどのような状況にあるか?
現在の中国経済は多くの予想に反し、好調に推移している。過去の伝統的な不動産やインフラ投資に依存した経済モデルから脱却し、AIや「低空経済」といった新しい経済へと見事なシフトを遂げたからだ。習近平国家主席の「不動産は住むものであって、投機目的ではない」という言葉は、意図的な不動産バブル崩壊を招いたものの、結果として新経済への転換を促したと見ている。
Q. 中国が目指すのは「覇権国家」か、それとも別の姿か?
中国が覇権国家になる可能性は、ほぼゼロに近いと言える。その理由として、まずハードパワーの不足がある。経済力では世界第2位を誇るものの、軍事力や国際社会を牽引する政治的リーダーシップはアメリカに比べてまだ途上段階にある。次にソフトパワーの欠如だ。アメリカのマクドナルドやスターバックスのように、世界中の人々を惹きつけるような文化的な魅力が不足している点は否めない。多くの若者がいまだにアメリカ留学を目指すのに対し、中国留学を目指す者は少数である現状は、このソフトパワーの差を示している。

加えて、中国には同盟国が存在しない。常に「平等」な関係を追求する外交政策のため、アメリカのような強固な同盟ネットワークを持っておらず、これが覇権国家になる上での決定的な障壁となる。中国は支配を目指す「覇権国家」ではなく、国際社会において一目置かれる「大国」の地位を目指しているのだ。
Q. 中国の外交戦略はどのように変化したのか?
かつて中国がとっていた強硬な「戦狼外交」は、国内外からの強い反発を招き、自国のイメージを悪化させた。この反省を受け、中国は外交スタンスを「真面目」かつ「穏健的」な路線へと転換した。習近平主席の指示により、周辺国との関係安定を重視するようになり、以前のような高圧的な姿勢は影を潜めている。
この変化の背景には、2035年までに電気自動車(EV)をはじめとする製品や技術を「中国標準」として世界に普及させるという野心的な計画がある。世界に中国スタンダードを浸透させるためには、周辺諸国との協調が必要不可欠であり、外交姿勢の軟化は長期的な国家目標達成に向けた戦略的判断と見ている。
Q. イラン戦争は中国にどのような恩恵をもたらしたか?
イラン戦争において、中国は間接的に「最大の勝者」となった。中国は平和の仲介者として積極的に裏で動き、国際社会に平和を求める国家としてのイメージを強く印象付けた。これは、中国がウクライナ戦争ではあまり表に出なかったのと対照的だ。

この積極的な関与の背景には、中国が推進する「一帯一路」プロジェクトにおいてイランが最大の中心地であるという地政学的な重要性がある。イランの安定は「一帯一路」の成功に直結するため、中国はイランの平和的解決を強く求め、その実現に向けて力を尽くしたのである。結果として、国際的な影響力とイメージ向上という大きな恩恵を得た。
Q. 米中関係はなぜ「敵対」だけでは語れないのか?
日本国内では米中関係が深刻な敵対関係にあるとのイメージが強いが、中国側の視点からすると、それは「兄(米国)と弟(中国)」のような「兄弟関係」として捉えられている。激しい対立や競争はあるものの、完全に決裂するような敵対関係ではない。この視点を持つことで、両国の複雑な関係性を理解しやすくなる。
来る中間選挙を控え、アメリカにとって中国の協力は不可欠な状況にある。トランプ政権が当初、中国への強硬策で失敗を重ねた後、両国間でようやく交渉システムが構築され、現在、アメリカは中国のカードが重要だと理解している。したがって、今後の米中首脳会談では、中国が有利な立場で交渉を進め、双方にとって利益となる、いわゆるWin-Winの関係を築く可能性が高いと見ている。金融市場の部分的解放などがその例だ。
Q. 中国国民は習近平主席をどのように見ているのか?
習近平主席は就任当初、汚職撲滅や社会保障制度、医療改革を断行する「改革者」として国民から絶大な支持を得た。国民は心から彼を尊敬し、「習おじさん(習大大)」といった親しみを込めた愛称で呼ぶほどだった。

しかし、新型コロナウイルス流行時の厳格すぎるゼロコロナ政策が転換点となる。数年間にわたる厳しい移動制限や都市封鎖は、特に大学生のような若者から強い反発を買った。大学に通えず、学費だけを払わされるといった理不尽さへの不満は高まり、結果として大規模な抗議活動につながった。この国民、特に若者の反発によってゼロコロナ政策が緩和されたことで、国民の間では「若者がよくやった」という認識が広がっている。
Q. 香港と台湾の現状が中国とどのように絡み合っているのか?また、台湾統一への中国の本音は何か?
香港では、中国本土から流入した富裕層による不動産買占めが進み、物価が高騰した結果、現地住民の生活が困窮している。彼らは自らの給料でアパートを購入することも難しくなり、中国本土への反発を強める根源となっている。台湾の若者たちはこの香港の現状を注視しており、「今日の香港は明日の台湾だ」というスローガンに代表されるように、中国との統一が自分たちに同様の不利益をもたらすことに強い警戒心を抱いている。
しかし、中国は台湾の武力統一を望んでいない。毛沢東時代からの基本的な方針はあくまで「平和統一」であり、現状維持が実質的な形と見なされている。中国が武力行使に踏み切るのは、台湾が外国勢力の支援を得て一方的に「台湾独立」を宣言する場合のみだ。それ以外の場合は、台湾が独立しない限り、現状維持を崩してまで統一を急ぐ意図はない。