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「オルカンで1億円」は可能か
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2026年4月16日

いまや不動の人気を誇る「オルカン」。果たしてオルカンだけで、1億円の資産を作ることは可能なのか?オルカンは今後も盤石だと言えるのか?「オルカン生みの親」である代田秀雄氏に聞いた。 <ゲスト> 代田秀雄|三菱UFJアセットマネジメント特別業務顧問 三菱UFJアセットマネジメントの投信商品企画部長など...
オルカンで1億円も夢ではない:生みの親が語るオルカンの強みと展望
全世界株に分散投資する「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)」は、今や個人投資家の間で圧倒的な支持を集める。新NISAの開始もその人気を後押しし、まさに国民的投資信託と言えるだろう。
では、なぜオルカンがここまで選ばれるのか。そして、「オルカン」だけで老後資金1億円を築くことは本当に可能なのか。本記事では、オルカン誕生の立役者である代田秀雄氏への取材を基に、その人気の秘密、そして長期投資における揺るぎない哲学と具体的な戦略をQ&A形式で深く掘り下げる。

Q. オルカン投資で資産1億円を築くことは本当に可能か?
結論から言えば、十分に可能だ。オルカンが採用する「MSCI ACWI」指数の過去平均リターン(1998年末から昨年末まで年率9.72%)で試算すると、25歳から60歳までの35年間、月々2万8000円の積立で1億円に到達する。将来のリターンが変動しても、例えば年率5%なら月々8万8000円、7%なら月々5万5000円で達成可能であり、NISAやiDeCoといった非課税制度を活用すれば、多くの個人にとって無理のない目標となる。

ここで最も重要なのは、少額からでも早く投資を始め「習慣化」することにある。最初は月5000円や1万円といった金額からで良い。ライフイベントや生活状況に応じて積立額を柔軟に調整しながらも、途切れることなく継続する習慣が長期的な複利効果を最大限に引き出す。この積立習慣があれば、日本国内でも将来的に1億円達成者が多数現れても、決して不思議ではないだろう。
Q. 市場の下落局面に対し、長期投資家はどのように向き合うべきか?
市場が大きく下落する局面は、短期的に見れば不安を招くものだ。しかし、長期投資の視点に立てば、この下落こそが最大のチャンスである。相場が下がった時こそ積立を継続し、保有し続けることが、長期的には最も有効な運用方法となる。
例えばリーマンショック時には、市場が回復して元の価格に戻るまでに約6年を要し、下落局面も2年ほど続いた。このような辛い時期であっても、慌てて売却せずに淡々と積立を継続する経験を通じて、「長期投資力」が養われる。この力は、マーケットの変動に動じない精神的な強さであり、資産形成を成功させる上で不可欠な要素だ。
すぐに回復しない大きな下落が訪れる可能性は常に存在する。だが、過去の例を見ても市場は最終的に回復し、成長を続けてきた。下がった時は安く多くの口数を買い増す「買い場」と捉え、これを乗り越えることで資産は着実に積み上がっていくのである。
Q. なぜ今、個人投資家の間でインデックス投資が最適解とされるのか?
eMAXIS Slimシリーズのようなインデックスファンドの急成長は、投資家の「長期・積立・低コスト」というニーズに応える形で進んだ。特にeMAXIS Slimは「業界最低水準の運用コストを目指し続ける」というコンセプトを掲げ、顧客からの圧倒的な支持を得ている。運用会社側の利益は信託報酬率、残高、そして投資期間の積によって決まるため、信託報酬率を低く抑えることでより多くの顧客に残高を長期的に保有してもらう戦略は、薄利多売ながらも持続可能なビジネスモデルとして成立する。
日本におけるインデックス投資の普及は、アメリカとは異なる特徴を持つ。アメリカではファイナンシャルアドバイザー(FP)のアドバイス主導でインデックス化が進んだが、日本では個人投資家がYouTubeなどの情報源を基に、自らの判断でインデックスファンドを選んでいる。これは、日本の個人投資家の金融リテラシーが急速に高まっている証拠であり、非常に素晴らしい変化だと言える。

本業を持つ個人投資家にとって、多忙な中で企業分析や市場予測に多大な時間を費やすのは現実的ではない。そのため、市場全体に低コストで効率的に分散投資できるインデックスファンドは、最も合理的で時間をかけずに資産形成できる最適解と言える。プロの機関投資家が個別企業分析(アクティブ運用)を行うことで資本市場の効率性が保たれており、個人はその恩恵をインデックス投資で享受することが理にかなっているのだ。
Q. インデックス投資がアクティブ投資に勝る理論と実際のデータは何か?
ノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・シャープ氏の理論「アクティブ運用の算術」によれば、市場全体のリターンにおいて、コストを差し引く前のアクティブ運用とパッシブ運用(インデックス)の平均リターンは等しくなる。これは、誰かが市場平均以上のリターンを得れば、必ず市場平均以下のリターンしか得られない投資家が存在するため、全体としては相殺されるゼロサムゲームに近い構造のためである。
この前提にコスト要因が加わることで決定的な差が生まれる。パッシブ運用は一般的にコストが低い一方、個別企業分析などに多くのコストがかかるアクティブ運用は高コストだ。結果として、コストを差し引いた後の「手取り」リターンでは、低コストのパッシブ運用が平均的にアクティブ運用を上回ることになる。これは理論的に証明された事実であり、多くの研究で裏付けられている。
実際のデータもこの理論を強く支持する。モーニングスターの分析によると、国内株式の大型ブレンド型アクティブファンドがインデックスを上回る勝率は、1年後には約65%あるものの、10年後にはわずか22%にまで激減する。海外株式の場合、さらに勝率は低く、10年後にインデックスに勝てるアクティブファンドは1割強しか存在しない。これは、短期的にはたまたま良い成果を出せるアクティブファンドが存在しても、長期にわたって「勝ち続ける」ことは極めて困難であり、多くの個人投資家がそれを事前に見抜き、その勝ち続けられる期間を通じて保有し続けることは、現実的な選択ではないことを示している。
Q. 個人投資家はどのようにリスクを管理し、最適な資産形成戦略を立てるべきか?
最適な資産配分を考える上で重要なのは、投資資金だけを見るのではなく、預貯金や不動産などを含めた自身の「全財産」を俯瞰することだ。ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービンの分離定理にも通じる考え方だが、まずは無リスク資産(預貯金など)とリスク資産(株式など)のバランスを明確にすることが基本となる。

年齢やライフステージによってリスク許容度は変化するため、若いうちはリスク資産の割合を高めに設定し、年齢を重ねるにつれて無リスク資産の比率を増やす「水割り」のようなイメージで資産構成を調整するのが合理的だ。例えば70歳から投資を始めるとしても、全財産のうち3割程度をリスク資産に配分するというのは十分あり得る選択肢となる。投資に「遅すぎる」ということは決してなく、自身の財産全体を見ながら適切なリスクの割合を考えることが最も重要なのである。
具体的な投資戦略としては、「コア・サテライト戦略」が有効だ。資産の大部分(7~8割)をオルカンのような全世界株インデックスファンド(コア)で堅実に運用し、残りの少額(2~3割)で個別株や特定のテーマ型ファンド(サテライト)など、よりリスクを取り、高いリターンを狙う投資を試みる。サテライト部分で挑戦することで、投資経験を積み、市場の動きや自身のリスク許容度への理解を深めることができる。ただし、サテライト投資がコアの安定性を侵食しない範囲に留めることが肝心だ。オルカン誕生の「生みの親」自身は、コア100%の運用で、サテライトに時間を費やすよりも、他の有意義なことに時間を使う選択をしているという。
Q. 全世界株式に投資する「オルカン」の優れた点とは何か?
オルカンの最大の優れた点は、一本の投資信託で「世界経済全体を味方につけられる」ことである。投資の根本的な理念は、世界経済の成長に乗ることで、中長期的に自身の資産も成長させることにある。オルカンは、世界中の企業に分散投資することで、特定の国や地域の経済状況に左右されるリスクを軽減し、安定した成長を追求できるのだ。
言い換えれば、私たちは個別企業や特定の産業を日々追いかける必要はなく、世界の進化という大潮流に身を委ねるだけで、資産形成が可能となる。シンプルな構造と低コストがその実現を支え、まさに「ほったらかし投資」の究極形と言える。この普遍的なアプローチこそが、オルカンを長期資産形成の最強ツールたらしめている理由である。