PIVOT TALK BUSINESS
3万人の調査で見えた変化する購買行動
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2026年3月11日

今、AIの進化が止まらなく私たちの生活を大きく変えようとしている。 どこまで人間がやって、どこからAIに任せても問題ないのか? どのくらい信じて良いのか? AIに詳しい博報堂DYホールディングの西村啓太氏と紐解いていく。 〈ゲスト〉 博報堂DYホールディングス Human-Centered AI ...
3万人調査が暴くAIの意外な真実: 私たちの暮らしはどのように変わるのか
生成AIは急速な進化を遂げ、その普及は日々の生活やビジネスに大きな変化をもたらしつつある。
博報堂DYホールディングスの実施した約3万人を対象とする「生活者AIサーベイ」からは、AIが一部の先進的なツールとしてだけでなく、私たちの身近な存在として深く浸透している実態が浮き彫りになった。
AIが生活者にどのように受容され、私たちの購買行動や価値観にどのような影響を与えているのか、ビジネスシーンで語られる一般的な予測とは異なる、意外な未来像を探る。

Q. AIは日本社会にどの程度浸透しているのか?
生成AIの利用率は既に33.6%に達している。
この数字は、技術登場からわずか2年半という短期間で達成されたもので、その普及スピードは非常に速いと言えるだろう。
社会全体における新技術の普及度を示す「ロジャースの普及曲線」では、全体の16%に利用者が達すると、そこから爆発的に普及する転換点「キャズム」を超えたと見なされる。
生成AIは、既にこのキャズムを大きく突破しており、過去のECサイトやスマートフォンの普及と比較しても、非常に速いペースで社会全体へと浸透している事実が明らかになった。
利用者の内訳を見ると、10〜30代の若年層が半数を占めるが、50〜60代の層も全体の約3割を占めており、特定の世代に限定されず、幅広い年齢層に受け入れられつつある。
また、ほぼ毎日利用するユーザーは全体の24.6%、「2〜3日に1回」が20.7%と、利用者の約半数が日常的に生成AIを活用している状況である。

Q. AI利用の主流はビジネスではないのか?
「AIは仕事の効率化ツール」という一般的なイメージを覆す驚くべき調査結果が出ている。
生成AIの利用シーンにおいて、
ビジネス利用は15.9%に留まるのに対し、プライベート利用が30%と倍近い数字であった。
このデータは、AIが単なるビジネスツールとしてではなく、私たちの日常生活に溶け込むパーソナルな存在へと変化している現実を物語る。
宿題やレポートの「勉強の相棒」として活用したり、さらには人間には相談しにくい悩みを打ち明ける「感情のない相談相手」としてAIを利用するユーザーもいる。
若年層を中心とする利用者たちは、AIとの対話から多角的な視点や新しいアイデアを得ており、情報を得る手段を超えた活用が進んでいるのだ。

Q. なぜAIを使わない人が存在するのか?その障壁とは?
生成AIの非利用者も少なからず存在し、その理由は大きく二つのタイプに分けられる。
潜在層:「使い方が分からない」「何ができるか不明」といった知識不足やリテラシーの低さにより、利用に踏み切れていない人々を指す。彼らは使い方の情報提供や具体的なユースケースの提示によって、利用に転換する可能性を秘めている。
非利用意向者:「必要性を感じない」「あまり魅力を感じない」「信頼性に疑問を感じる」と回答し、AIへの価値自体を見出していない人々である。特に年齢層の高い人々に多く見られる傾向で、身近にAIを利用する人がいないことも、必要性を感じさせない要因となっている。この層に対しては、AIの利便性や必要性を一方的に押し付けるのではなく、なぜ「必要ない」と感じるのかを理解した上での、新たなアプローチが必要不可欠である。
普及が進む現代において、企業は両者に対し異なるコミュニケーション戦略を構築しなければならない課題に直面しているのだ。
Q. AIから得られる情報はどの程度信頼されているのか?
生成AIの情報に対する信頼度も注目すべき点である。
AI利用者の実に55%がAIから提供される情報を「非常に信頼している」「どちらかといえば信頼している」と回答しているのだ。
この傾向は、特に10〜30代の若年層で顕著であり、彼らは生まれた時からインターネットやデジタルデバイスに触れてきた「デジタルネイティブ」の進化系とも言える「AIネイティブ世代」として、AIを主要な情報源として受け入れていると推測できる。
ただし、彼らがAIの情報を盲信しているわけではない。
約半数のユーザーは、生成AIからの情報だけでは不十分だと考え、他のマスメディアやSNSなどを通じて情報の裏付けを取ろうとしている現実も判明している。
これは、AIの利便性を享受しつつも、情報の正確性や多角的な視点の確保には引き続き人間の判断が重要であるという、健全なメディアリテラシーを多くのユーザーが持ち合わせていることの表れだろう。
Q. AIは将来的に購買行動にどう影響するのか?
生成AIは情報探索の段階で、すでに検索エンジン、動画系SNSに次ぐ3番目のツールとして生活に浸透している。
しかし、企業側では、AIがチャット画面で完結する特性から、従来の購買プロセスが大きく変化する可能性を懸念する声が多い。
米国では既に、「ブラウザ操作エージェント」というAIが開発され、ユーザーの代わりにECサイト上で商品の比較検討から、最終的なカートへの追加までを自動で行うことができる。
もしこの技術がさらに進歩し、購入ボタンを押すことまでAIが代行するようになれば、消費者は企業や商品の公式サイト、比較サイトなどを経由せずとも、AIからの情報のみで購買を決定することになるかもしれない。
これは企業と生活者との間にあった従来の接点が失われ、マーケティング戦略の抜本的な見直しが迫られる事態を意味する。
とはいえ、現在のところ、最終的な「購入」フェーズにおいては、依然としてECサイトが主要な購買チャネルであり、AIは情報収集の補完的な役割に留まっているのが実情である。

Q. AIに仕事を任せるとしたら、人間は何をするべきなのか?
AIと人間の最適な役割分担は何か、という問いに対し、今回の調査からは明確な線引きが見えてくる。
回答者たちは、ルーティンワーク、単純作業、翻訳、データ分析、環境モニタリングなどを「AIがやるべきこと」として認識している一方、医療診断、教育支援、カウンセリング、そして最も「人間がやるべき」とされたのが、
「日々のお買い物」であった。
買い物を人間が担当したいと考える背景には、単に効率や合理性だけではない、より深い感情的な価値観がある。
商品を選ぶ楽しさ、偶然の発見、作り手の背景や物語への共感、そして気に入ったものを「応援したい」という気持ちは、AIに代替されにくい人間の領域だと考えられているようだ。
一部で予測される「2026年エージェントエコノミー元年」というシナリオに対し、調査結果は慎重な見方を示している。
AIが購買を代行する世界を実現するには、技術的な進歩に加え、ECサイトの利用規約や返品・責任の所在など、法整備が追いついていない点が大きな障壁となっている。
さらに、人々の「自分で選びたい」という根強い欲求も、AIによる完全な購買代行がすぐには到来しない可能性を示唆している。
AIと人間の共存は、単なる効率化だけでなく、私たちの感情や価値観とどのように調和させるかが鍵となるのだ。