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菊池雄星 WBCへの思い
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2026年2月27日

WBC開幕を控える菊池雄星への特別インタビュー。リスクを承知で出場を熱望する、その背景には何があるのか。前大会で侍ジャパンに帯同した野球アナリスト・山田隼哉が、鋭く核心を突く。 <ゲスト> 菊池雄星|メジャーリーガー 1991年岩手県盛岡市で生まれ、花巻東高校卒業後、西武ライオンズに入団。 最多勝...
プロ野球選手としての生き様を映す WBC、そして未来
菊池雄星がキャリアにおける新たな挑戦、WBC出場を決断した。
怪我のリスクを伴う短期決戦に、35歳で挑む彼の背景には、計り知れない覚悟と、日の丸を背負うことへの揺るぎない情熱がある。
過去の栄光に触れながら、目の前のWBC、そしてメジャーリーグでの経験、さらにはアスリートとしての未来まで、彼の率直な思いに迫る。

Q. WBC出場は怪我のリスクを伴うが、それでも出場を強く希望する理由は何があるか?
WBC出場を決意したのは、井端監督から昨年「どんな成績でもWBCでプレーしてほしい」と直接打診されたことが大きな要因となっていると語る。
年齢的にも選手としてベテランの域に入り、「最後のチャンス」と捉えていることも大きい。
もちろん、投げれば怪我のリスクは常にあるが、それ
を承知で「出たい」と強く思わせるのがWBCという舞台の魅力だ。
日の丸を背負って戦う経験は、野球人生はもちろん、人生全体にとっても大きなプラスになると確信している。
2009年のWBC決勝でイチロー選手が見せたセンター前ヒットは、高校時代に甲子園出場を控えていた自身の目に焼き付いており、侍ジャパンへの強い憧れの原体験となっている。
この得難い経験こそが、いかなるリスクをも上回る価値があると考えているようだ。

Q. 最強と言われる米国やドミニカ共和国との対戦にはどのような期待を抱いているか?
今大会の米国やドミニカ共和国は、メジャーリーグのオールスター級、MVPクラスの選手が1番から9番まで名を連ね、投手陣もサイ・ヤング賞クラスが集結する「ドリームチーム」だ。
彼らのような世界トップクラスの選手たちと真剣勝負をしたいという思いは、野球選手としての本能的な欲求であると語る。
当然ながら、それらのチームは「めちゃくちゃ強い」と認識している。
しかし、野球は短期決戦で、いかに相手が強力であっても「ピッチャーがしっかり試合を作れば、必ずチャンスは生まれる」という心構えで臨む。
侍ジャパン投手陣が試合の主導権を握れるかが、勝利への鍵を握ると分析している。

Q. WBCに適用されるメジャーリーグの新ルール、特にピッチクロックにどう対応するか?
WBCで初めて国際大会に挑む立場としては想像しかできないが、メジャーリーグで培った経験は侍ジャパンにとって強みとなると考える。
特にピッチコムの扱い方など、メジャーリーグ独自のルール対応は伝えていきたい点のひとつだ。
ピッチクロックは試合時間を大幅に短縮する新ルールだが、これにより選手は常に時間に追われる。
例えば、サイン交換で2回首を振ると3回目はもう時間がなく、ピッチャーが自分で球種をコールしないとタイムオーバーになる場合もあるという。
事前にキャッチャーとの綿密な話し合いや、状況に応じて時間を稼ぐノウハウなども、自身のメジャーでの経験を通じてチームメイトに共有できると見ている。
厳しい球数制限についても「あまり意識しても仕方がない」と語る。
自身のピッチングスタイルは「2ストライクに追い込んだら、見せ球なくとにかく三振を取りにいく」ことであり、球数が多かろうと少なかろうと、その基本姿勢は変わらない。
短期決戦においては特に、長打を浴びるリスクを減らすことが重要であり、ランナーを溜めた状態でのホームランを防ぐためにも、三振を奪う意識が不可欠だと分析する。

Q. 昨今の日本人投手の球速向上と野球界全体のレベルアップについて、どのように見ているか?
日本人投手の球速がここ10年で平均5キロも向上した背景には、トレーニング理論やデータ活用の進化がある。
球速を上げるためのポイントは既に確立されつつあり、トラックマンやフォースプレート、バイオメカニクスの導入により、これまで感覚的だったものが数値として可視化されるようになった。
これは日本だけでなく、アメリカも同様であり、野球全体のレベルが日々上昇し続けている状況であると指摘する。
この「球速革命」の大きな理由は、野球界の評価軸の変化だと言う。
契約のテーブルに着くための第一条件が「何マイル投げられるか」という指標に変わったため、選手は必然的に球速アップを追求する。
評価される部分を必死に伸ばすのはアスリートの性であり、球速が最重要視される限り、今後もこの傾向は続くとの見方を示す。
自身も35歳となり、この球速競争の波に身を置く中で「いかに下り坂の角度をなだらかにするか」が大きなテーマだと語る。
常に進化し続ける野球界において、ベテラン選手としての新たな挑戦が続いていると言えるだろう。

Q. アスリートのセルフマネジメントと育成環境は、過去と比べてどのように変化したと考えるか?
自身がメジャーリーグでプレイした8年間で、選手たちの取り組み姿勢は劇的に変化したと実感している。
以前は一部のストイックな選手に限られていた意識の高さが、今や全体に波及し、飲酒を控える選手が増え、デバイスで睡眠スコアを管理する選手も珍しくない。
球団も睡眠データなどをチェックさせることで、選手の生活の質を向上させるよう働きかけている。
かつて日本人選手の強みとされてきた「練習量」や「真面目さ」といった側面は、もはや優位性ではなくなりつつある。
身体能力に恵まれた中南米系の選手たちが、マイナーリーグ段階から栄養士、メンタルトレーナー、フィジカルコーチの指導を徹底的に受け、生活管理までをデータに基づいて行うようになったからだ。
これは選手本人が望むか否かに関わらず「やらざるを得ない環境」が教育システムとして構築されている結果であり、世界の野球レベルはさらに高くなると見ている。
メジャーリーグが導入するロボット審判などの新ルールについても言及し、アメリカらしい「試してダメならすぐ戻す」というサイクルが速い点を評価する。
これにより、審判への「野次」という選手やコーチの一部の役割は減るかもしれないが、この変化への柔軟な対応力こそがメジャーの強みだと感じている。
自身の今シーズンの目標は「世界一のピッチャー」ではなく「世界一健康なピッチャー」だと言う。
怪我なく1年間ローテーションを守り抜けば、必ず数字は後からついてくると信じているようだ。

Q. 引退後のキャリアプランについて、現時点で考えていることはあるか?
引退後の明確なプランはまだないものの、「好きなことは全部する、やりたいことは全部叶える」という自身の生き方における信条は揺るがない。
野球を深掘りしながらも、その時々で興味を持ったことには積極的に挑戦していく「ピボット思考」を大切にしていると話す。
実際に、現役中から野球関連の活動に加え、ベンチャー企業への投資なども行っている。
人の興味や関心は毎年変化していくため、引退を待たずに今から様々なことに挑戦し、小さくてもやり続けることが将来に繋がると考えているようだ。
一昔前であれば「野球に集中しろ」という声もあったが、今では現役中から多様な活動が認められる時代になり、アスリートの価値観も変化していると捉えている。
この流れは自身に限らず、多くのアスリートの間で加速していくと予測する。
