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私が50年ローンを推す理由【塩澤崇】
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2026年1月16日

住宅ローンは「早く返す」から「賢く猶予する」時代へ?金利上昇で取るべき不動産戦略の新常識とは?住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が「50年ローン一択」を宣言する理由とは。 <ゲスト> 塩澤崇|モゲチェック 取締役CMO 東京大学大学院情報理工学系研究科修了。モルガン・スタンレー証券にて住宅ローン証券...
「50年ローン」がゲームチェンジャーに?住宅ローン専門家が語る、金利上昇時代における不動産戦略の最適解
金利上昇が現実味を帯び、都心部の物件価格高騰も止まらない。そんな中、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」の塩澤隆氏が、これまでの常識を覆す住宅ローン戦略を提言している。
長きにわたりメディアで活躍し、変動金利と固定金利の論争にも精通する塩澤氏だが、現在の市場においては「50年ローン一択」と言い切るのだ。
元モルガン・スタンレーで住宅ローンの証券化ビジネスに携わった経歴を持つ彼は、金融機関の思考や市場メカニズムを熟知しており、その視点から導き出される結論は、私たちの住宅購入における新たな常識となるかもしれない。
本稿では、変動金利の合理性を認めつつも日銀の利上げを鑑み、「50年ローン」の持つポテンシャルとリスク、そして最適な活用法について、塩澤氏の解説に基づき深掘りする。
従来の「変動か固定か」という二者択一から一歩踏み出し、返済期間という新たな視点で最適な選択を考える上で、以下の点が鍵を握るだろう。

Q. 金利上昇時代において、50年ローンは本当に借り手にとって有利な商品なのか?
結論から言えば、50年ローンは借り手側に大きなメリットがある商品だ。個人間で50年という超長期でお金を貸すことが非現実的であるように、金融機関にとってもこれほど長期の融資は高い回収リスクを伴うものである。
この貸し手側のリスクは、裏を返せば「借り手のメリット」に転化する。つまり、50年という長い期間、返済を待ってもらえる「返済猶予」こそが、このローンの本質的な強みと言えるのだ。返済期間が長ければ長いほど、借り手は月々の返済額を抑えられ、資金を他の用途、特に資産運用へと回す選択肢を得る。これが現在の金融情勢下において、借り手にとって極めて有利に作用する点だ。

Q. なぜ金融機関は、借り手に有利とされる50年ローンを次々と導入しているのか?
金融機関が50年ローンを導入する背景には、主に三つの理由がある。
金利以外の差別化
若年層の顧客確保
定年時の残債に関する懸念(金融機関側での認識)
マイナス金利導入以来、住宅ローンは熾烈な金利競争に陥り、金融機関は利益を確保しづらい状況が続いた。そのため、金利以外の差別化要因が常に模索されている。当初は団体信用生命保険(団信)の充実化がその軸であったが、近年は不動産価格の高騰に伴い、顧客の購買力を引き上げる「50年ローン」が新たな差別化戦略として浮上している。
例えば、イオン銀行は高い金利であっても「完済までイオンでの買い物5%オフ」という特典を提供し、金利以外の付加価値で顧客を引きつけようとしている。ローンを選ぶ際は、単に金利の数字だけでなく、団信の内容や付帯サービスなども総合的に評価することが賢明だ。特に「がん団信」は支払い事由のトップを占めることが多く、過去にがんと診断され完治したケースで4000万円のローンが帳消しになった事例もあり、その恩恵は計り知れないほど大きい可能性がある。

Q. 35年ローンと比べて、50年ローンは具体的にどのようなメリットと懸念点があるのか?
50年ローンを選択する際の最大のメリットは前述の「返済猶予」だ。これにより月々の返済額が大幅に減少し、その差額を他の用途に回せる。仮に元金5000万円、金利0.75%の場合、35年ローンと比べて月々約3万5000円返済額が少なくなることが予想される。
主な懸念点は二つあり、一つは総利息支払額が300万円程度増加すること、もう一つは完済時の年齢が80歳を超え、老後の返済負担が増えることだ。しかし、この懸念も戦略的な活用によって解消できる。

増える総利息については、月々の返済で浮いた3万5000円を長期積立投資に回すことで、はるかに大きな利益が期待できる。金融庁のシミュレーターによれば、月3万5000円を年利4%で35年間積み立てると、元本約1470万円に対し、約3150万円(1500万円以上の利益)になるという。過去のS&P500の実績では35年運用で平均年6%のリターンがあり、元本割れ期間がないことを考えると、これは非常に現実的な戦略だ。ただし、この戦略が有効となるのは、浮いたお金を飲み代など無駄な消費に回さず、堅実に積立投資に充てることが大前提である。
さらに、50年ローンを活用することで、年収がまだ高くない20代の若年層でも住宅購入が可能になる。これにより、30代半ばまで賃貸で生活する場合と比較して、数年間分の家賃(数百万円から1000万円超)を「掛け捨てコスト」として支払わずに済む。住宅ローン返済は不動産という自身の資産形成につながるため、賃貸を脱して早期に持ち家を取得できることは、50年ローンが増える利息額を補って余りある大きなメリットをもたらすと言えるだろう。

Q. 50年ローンの老後返済や残債割れといったリスクにはどのように対処すべきか?
50年ローンの主なリスク、老後の返済負担と残債割れに対しては、多角的な対策が求められる。老後返済については、以下の3つの方法で対応可能だ。
現役時代からコツコツと積み立てた長期積立投資の運用益
ライフステージの変化(子どもの巣立ちなど)に合わせた住み替えによる不動産売却益
健康寿命の延伸を活かし、無理のない範囲で働き続けることによる収入確保
また、残債割れ(物件価格がローン残債を下回ること)のリスクも認識すべき点である。50年ローンは元本の減りが遅いため、35年ローンに比べてローン残債が多く残りやすい。このリスクを軽減するためには、購入する物件の選定が極めて重要だ。将来の住み替えも視野に入れるのであれば、資産価値が落ちにくい都心部の優良物件や、将来的に値上がりが期待できるエリアの物件を選ぶことが肝要となる。高騰している都心物件は一見購入しづらいが、50年ローンで月々の返済額を抑えることで、より質の高い物件に手が届きやすくなり、結果として残債割れリスクの低減につながるのである。

さらに、50年ローンの審査基準は金融機関によって異なる。35年ローンに通過した人向けに追加オプションとして提供する保守的な銀行もあれば、50年分割後の低い返済額で審査するため、年収が低い人でもより多額の融資を受けられる積極的な銀行も存在する。ネット銀行の登場で住宅ローン市場は競争が激化しており、借り手はより有利な条件を引き出しやすくなっているため、複数の金融機関を比較検討することが必須である。
Q. 50年ローンは日本の住宅市場や個人の資産形成戦略をどのように変化させるのか?
50年ローンの普及は、賃貸か持ち家かという長年の論争にも変化をもたらす可能性を秘めている。賃貸期間を短縮し、より多くの若年層が早期に持ち家を取得することを可能にする、まさにゲームチェンジャーと言えるだろう。若いうちから資産形成に繋がる持ち家を選択できることで、生涯を通じた資産形成の有利なスタートラインに立つことができるのだ。
また、50年ローンは不動産価格の高騰をさらに加速させる一因ともなっている。不動産価格の上昇に伴い、ペアローンや50年ローンといった高額融資を可能にする商品が登場する。これにより消費者の購買力が高まり、不動産の売り手は強気な価格設定をするというサイクルが回っているのが現状だ。これは、都心部などでは今後も不動産価格が上昇し続ける可能性が高いことを示唆しており、持ち家のキャピタルゲイン獲得という側面も無視できない要素となっている。

インフレ時代において、お金の価値は時間と共に目減りする。そのため、無理のない範囲で最大限の借金(レバレッジ)をし、不動産という実物資産に変えて保有することは、資産を守り増やす上で極めて有効な戦略となる。塩澤氏はこの借金を「資産形成のための蜘蛛の糸」と表現している。日本の住宅ローンは、先人たちが真面目に返済を続けてきた歴史があるため、世界的に見ても低金利で利用できるという恵まれた状況にある。現役世代は、この低金利という恩恵を最大限に活用し、レバレッジを積極的に効かせるべきであると彼は訴える。借金に対するネガティブなイメージを払拭し、逆転の発想で賢く活用していくことが、これからの時代における資産形成の鍵を握るだろう。