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【上原浩治×斎藤隆】なぜ平均球速は上がり続けるのか?
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2025年10月17日

13年間で平均球速が7km/hも上昇しているプロ野球。なぜ平均球速は上がり続けるのか?野球新時代に必要な能力は何なのか?データを用いて徹底討論。 <ゲスト> 斎藤 隆|野球解説者 91年ドラフト1位で 横浜大洋ホエールズ入団。 06年ドジャースでクローザーとして活躍 。MLBでは5球団に在籍し...
プロ野球の常識を覆す!?上原浩治の「再現性なき投球術」と球速高速化の真実
NPB(日本プロ野球)はストレートの高速化が急速に進んでいる。平均球速は年々上昇し、150km/h超の球が当たり前になった現代野球。そんな常識とは一線を画す投球で、長年にわたり日米の強打者を翻弄してきたレジェンド、上原浩治氏の思考に迫る。果たして現代野球は「速い球を投げる投手こそが優秀」という結論に至るのか。データが示す事実と、天才投手・上原氏が実践した“あえて再現性を捨てる”独自のピッチング哲学を明らかにする。

Q. 現代プロ野球のストレートはどれほど速くなっているのか?
近年、プロ野球におけるストレートの平均球速は驚くべきスピードで上昇している。2012年頃から右肩上がりの傾向が続き、2024年にはNPBのストレート平均球速は147.1km/hに達し、過去最速を記録した。これはわずか数年前と比較しても5km/h以上速い数値である。150km/h以上のストレートが投じられる割合も劇的に変化しており、2010年頃には約20球に1球程度(約4%)だったものが、現在では約3球に1球(約30%)にまで増加した。斎藤隆氏もコーチ時代から「球が速くなっている」と感じていたという。まさにプロ野球は高速化時代に突入したと言えるだろう。

Q. ストレートが高速化した主な要因は何が考えられるか?
ストレートの高速化には複数の要因がある。一つは球速測定技術の進化だ。2010年代半ばからPitchFXやホークアイといったトラッキングシステムが導入され、従来型のスピードガンよりもリリース直後の最も速い「初速」を正確に測定できるようになった。このシステムでは、従来の計測法よりも2〜3km/h速く表示されると言われる。しかし、平均球速の上昇幅が5km/h以上であることを考えると、測定技術の変化だけで全てを説明できるわけではない。球速アップのためのドリルやトレーニング方法が進化し、投手自身の能力が向上した点も大きい。さらに、「速いボールが打たれにくい」というデータが現場に浸透し、球速を重視した育成や選手起用が増えたことも、全体の高速化を後押ししているだろう。

Q. やはり「球速が速いピッチャー」が良いピッチャーと言えるのか?
データは「速い球を投げる投手ほど成績が良い」という事実を明確に示している。球速帯が速いほど、被打率と被長打率は低下し、空振り率とゴロ率は上昇する傾向にある。具体的に見ると、140km/h以下の球速帯で被打率が2割5分以上であるのに対し、160km/h以上では1割台にまで低下する。また、空振り率は倍以上となる。このため、球速は投手の評価において重要な要素であり、「野球はスピードじゃない」と嘆くのはデータ上、「ひがみ」や「ねたみ」に過ぎないとさえ言えるだろう。メジャーリーグではリリーフ投手には150km/h以上の球速が求められるなど、速球の重要性は日米球界で共通の認識となりつつある。ただし、上原浩治氏が語るように、球速だけでは測れない「フォームでごまかす」技術も存在する。球速測定はあくまでボールが手元を離れてからのデータであり、打者が感じる体感速度や、タイミングを外す巧妙な投球術は数値には表れにくい。しかし、客観的なデータとして「球速と成績には正の相関がある」ことは疑いようのない事実だ。
Q. 上原浩治が球速に頼らず打者を抑えられた秘訣は何だったのか?
球速の平均値が低い上原浩治氏が日米の強打者を抑えられた秘訣は、まさに常識を覆す投球術にあった。彼は「再現性」という一般的な投球指導のセオリーをあえて捨て、「同じフォームで投げない」ことを意識していたのだ。足の上げ方や体のひねりの角度などを微妙に毎回ずらし、打者のタイミングを巧妙に狂わせていたのである。この独自の投球スタイルを、斎藤隆氏は「天才は再現させない」と評した。再現性を高めるほどコントロールは安定するが、同時に打者もタイミングを合わせやすくなるという逆説を突き、あえて打者を欺くことに徹したのである。上原氏自身も、球速を上げることは不可能と諦め、プロ入り後はコントロール、特にフォークボールの精度を磨くことに集中したという。四隅を正確に突き、いかにフォークボールを有効に使うかを徹底的に追求したのである。彼のこの投球術の極意は、投球動作の前半部分でタイミングをずらしながらも、最終的なボールのリリースポイントはストレートとフォークで寸分違わず一致させる点にある。これによって打者は球種の判断が困難となり、さらに体勢を崩されて凡打を誘われたのだ。少ない球種で成功を収めた裏には、非常に高度で感覚的な「抑えるスキル」が凝縮されていたのである。このスキルは、身体能力を向上させる球速アップよりもはるかに習得が難しいと言えるだろう。

Q. ピッチャーはマウンドで感情を出すべきか、抑えるべきか?
マウンドにおける感情のコントロールは、投手の性格によって最適なアプローチが異なる。上原氏は、感情を出すことで発散し、次の投球へ気持ちを切り替えるタイプだと語る。斎藤隆氏のような、マウンドで感情を表に出さないタイプの投手もいるが、上原氏は感情を溜め込むとパフォーマンスに悪影響が出ると考えていた。過去にはマウンド上で涙を流した姿が印象的だった上原氏だが、それも一球一球に懸ける勝負師としての並々ならぬ思いと、精神的な戦いの現れであったと言えるだろう。どちらのスタイルが良いかは一概には言えず、自分に合った方法を見つけ、メンタルを良い状態に保つことが重要だ。チームや指導者の方針も影響するが、最終的には投手個人のパーソナリティが大きく関わるといえる。

Q. 打者にとって球速で重要なのは初速と終速のどちらか?
かつてテレビ中継などで表示されていた「初速と終速の差」は、打者の視点から見ると実は意味がないという衝撃の新常識がある。投手からホームベースまでの距離約18.44mをボールが到達するのにかかる時間は約0.4秒。打者がスイングを開始するかどうかを判断する時間として許されるのは約0.2秒だ。この0.2秒という短い時間の中で、打者は球種やコースを見極め、スイングの判断を下さなければならない。そのため、打者が判断する頃にはボールはまだ投手の手元を離れて間もない「初速」の情報しか活用できないのだ。したがって、ボールが捕手のミットに収まる際の「終速」や、初速と終速の差によって変化するボールの軌道は、打者の判断にはほとんど影響しないことになる。打者を打ち取る上で本当に重要なのは、数字に表れる球速だけでなく、打者が「速く感じる」「見にくい」といった「体感速度」であると上原氏は強調する。クルーンのように速い球を投げていても、打者には意外と早く感じられない場合もある。一方で、藤川球児氏のストレートのように、実際の球速以上に速く感じられる「火の玉ストレート」は、打者を圧倒する大きな武器となるのだ。上原氏自身も現役時代からキャンプ中に味方打者に自身の投球が「速く見えるか」「見にくいか」を常に確認し、打者の感覚を自身のピッチングの重要な指標としていた。この事実から、現代のデータ野球においても、数値だけではない「見えない感覚」が、勝負の鍵を握ることが明らかとなる。

Q. 高校野球の球速トレンドは?大谷翔平の投手としての可能性は?
プロ野球やメジャーリーグで球速の高速化が進む中、意外にも高校野球の球速トレンドは異なった状況を見せている。甲子園に出場する高校球児のストレート平均球速は、実は過去10年間でほぼ横ばいの130km/h台を維持しているのだ。稀に150km/hを超える突出した選手はいるものの、全体としてはプロのような高速化の傾向は見られない。一般的には、高校(130km/h台)から大学(140km/h台)、そしてプロ(150km/h台)と、体が完成するにつれて段階的に球速が向上するパターンが依然として主流と言える。大学野球のデータに着目すると、プロと同様に平均球速の上昇傾向が見られる可能性が高い。一方、大谷翔平投手に関して、斎藤隆氏は「投手としての能力はまだ半分も完成していない」「伸びしろしかない」と断言した。野手としては決して見せない苦労や不完全な姿を、大谷は投手としてあえて楽しんでいるように見えるという。大谷にとって、野球という舞台の中で「できないこと」を探し、挑戦し続けることが喜びなのかもしれない。このような探求心がある限り、投手・大谷翔平はまだまだ予測不能な進化を遂げる可能性を秘めていると語る。