PIVOT TALK BUSINESS
【ランニングシューズ戦国時代】勝ち残るメーカーは
(672)
8,950回視聴
2025年9月14日

若い世代を中心にランニングクルーが増えている。なぜ今ランニングが人気なのか?ランニングシューズ戦国時代を勝ち抜くメーカーはどこなのか?元箱根駅伝ランナーの大森氏と、「WWDJAPAN」編集委員の五十君氏に聞いた。 <ゲスト> 大森英一郎|Runtrip代表 法政大卒。第84回箱根駅伝で9区を走る...
群雄割拠のシューズメーカー 勝ち抜くのはどこだ
箱根駅伝で見えたシューズ市場の変化、アディダスが躍進しナイキが後退
かつてランニングシューズ市場でナイキが独走状態だった時代は終わりを告げた。2025年の箱根駅伝では、アディダスがシェア36.2%と首位に立ち、アシックス25.7%、ナイキ23.3%と続く。特にナイキは前年比-19.3%と大幅に減少。シューズ業界は完全な戦国時代に突入している。この市場動向の裏側には何があるのか、ランニングシューズの未来像はどうなるのか。元箱根駅伝ランナーの大森英一郎氏とWWDJAPAN編集委員の五十君花実氏に話を聞いた。
Q. 箱根駅伝はランニングシューズ市場にどのような影響力を持っているのか?
箱根駅伝は日本のランニングシューズ市場において重要な指標となっている。2018年から2024年まではナイキがトップシェアを維持していたが、2025年1月の箱根駅伝ではアディダス36.2%、アシックス25.7%、ナイキ23.3%と、12年ぶりの戦国時代となった。

大森氏によれば「各メーカーはグローバルでマーケットを見ているにもかかわらず、日本の箱根駅伝には特に注力している。駅伝直前に駅伝パックのような特別商品を出すほど、マーケティング上重要な位置づけだ」と語る。実際、2025年上半期のアディダスの好調な売上は、箱根駅伝でのシェア拡大と無関係ではないという。
Q. メーカーはどのように箱根駅伝の選手にアプローチしているのか?
箱根駅伝に向けたメーカーのアプローチは非常に地道で計画的だ。「大学のスポンサーになったからといって、シューズまでは縛れない。選手に履いてもらうには信頼関係の構築が必要」と大森氏は説明する。

本番直前に新しいシューズを渡しても履いてもらえないため、夏の合宿シーズンから接触を始める必要がある。特に菅平などの合宿の聖地でポップアップストアを出すなど、早い段階からのマーケティング活動が重要だという。
五十君氏によれば、大手メーカーだけでなく、ブルックスなどの比較的小さいブランドの担当者が泥臭く箱根駅伝の選手に接触し、「いい靴なので履いていただきたい」と地道に活動している姿は「日曜9時のドラマになりそう」なほど情熱的だという。
Q. 近年急成長しているオン(On)の特徴は?
2010年にスイスで創業したオンは、比較的新しいブランドながら急速に市場シェアを拡大している。五十君氏によれば「ファッションとしてのイメージが強いが、近年は三浦龍司選手と契約するなどパフォーマンス面も重視している。高級ブランドのロエベとコラボレーションするなど全方位的な展開をしており、シューズだけでなくアパレルも猛烈に伸ばしている」と分析する。
大森氏は「オンの技術開発のスピードが非常に早い」と指摘する。選手にシューズを履かせてすぐにレビューさせ、2〜3週間後には新しいモデルを用意するなど、開発サイクルの速さが特徴だという。
Q. 今後注目すべきブランドや製品は?
大森氏は「アシックスのメタスピード東京シリーズが次の箱根駅伝で非常に面白くなる」と予測する。また「ニューバランスのフューエルセルスーパーコンプエリートの評価が非常に高く、シェアが増える可能性がある」と指摘。

さらに「プーマも選手からの評価が良くなってきている。ブルックスの最新モデル・ハイペリオンエリートも、他社に追いついてきた感覚がある」と語る。
かつてナイキが「ブレイキング2」プロジェクトで厚底革命を起こして以降、各社が追いつき追い越そうと努力した結果、現在は技術的にほぼ横並びの状態になっているという。
Q. シューズ市場の今後の勝負の鍵は何か?
厚底シューズは長距離ランナーのためのものから、短距離選手のスパイクにも採用され、さらにファッションアイテムとしても広がっている。今後のシューズ市場で勝ち抜くポイントについて、五十君氏は「結局はパフォーマンスとイノベーションに尽きる。イノベーションがあるブランドはかっこよく思えるという効果があり、売れるスニーカーランキングの上位に来る」と指摘する。
大森氏は「技術や素材の革命によって一時的にナイキ一強だった状況から、現在は製品が近似してコモディティ化している。次のステップとして、データ収集やコミュニティの形成が重要になる」と分析する。

アシックスはデータ収集に注力し、オンはコミュニティの熱量を高めるアプローチをしている。「ニューヨーク証券取引所に上場した際にはユーザーが走って集まってきた」とオンのコミュニティ力を例に挙げた。
Q. ランニング市場の将来についてどのような展望を持っているか?
五十君氏は「裾野が広がって楽しむ人が増えていくことで市場も成長し、メーカーはより新しいものを開発できるようになる。私たち消費者にとっても選択肢が増えることは素晴らしい」と期待を寄せる。
大森氏は「観る陸上と実際にするランニングがまだ近しいようで離れている」と指摘し、「世界陸上が東京に来るこのタイミングで、観るスポーツとしての陸上競技と市民ランナーたちとの接続がより強まる世界ができれば」と願っている。
ランニングシューズ市場は、競争の激化によって技術革新とユーザー体験の両面でさらなる進化を遂げようとしている。この熾烈な競争が、ランナーにとってもより良い選択肢をもたらすことは間違いない。