教育新常識
【スポーツVS音楽 学力が上がるのは?】
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2025年9月4日

習い事の効果を脳科学で解析!16万人のMRIを見てきた脳科学者・瀧靖之氏が、スポーツと楽器演奏にはどんな効果があるのか解説。 <ゲスト> 瀧靖之|医師 東北大学加齢医学研究所教授/専門:脳発達・加齢・脳画像分析 東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センタ...
脳科学から見る子どもの能力開発 スポーツと音楽、どちらが頭に良い?
子どもの習い事を選ぶとき、多くの親が「頭の良い子に育てるには何がいいだろう?」と考えます。スポーツと音楽は特に人気の高い選択肢ですが、脳の発達という観点からはどちらが効果的なのでしょうか?
医師の瀧靖之氏が語る最新の脳科学の知見から、子どもの能力開発に役立つ情報をQ&A形式でまとめました。

Q. スポーツと音楽演奏、脳の発達にはどちらが効果的?
結論から言うと、どちらも非常に効果的です。両者は脳に与える効果が少し異なりますが、どちらも子どもの脳の発達に大きなメリットをもたらします。
スポーツは記憶に関わる海馬という脳の領域を刺激し、神経細胞を増やして記憶力を高めます。実際、授業前に少し走るだけでも成績が上がるという研究結果もあります。運動は不安を感じるときに活動する扁桃体の働きを抑え、ストレスを軽減する効果もあります。
一方、楽器演奏は多様な脳機能を同時に使います。楽譜を見て一時的に記憶する「ワーキングメモリー」、記憶した内容を実行に移す「実行機能」、空間認知能力、リズム感覚など、脳のあらゆる領域が刺激されます。これにより脳の可塑性(変化する力)が高まります。
Q. 運動習慣はいつから始めるのが良い?
年齢に関わらず、運動習慣を持つことは脳にとって非常に良い影響をもたらします。子どもだけでなく、大人でも運動を習慣化すると記憶力が高まるため、いつから始めても効果があります。

特に注目すべき研究結果として、授業前に少し運動をさせたクラスでは成績が向上したという報告があります。勉強する前に少し体を動かすことで、脳が活性化し学習効率が上がるのです。
また、外遊びなど体を動かす活動は自己肯定感も高めることが分かっています。山登りや釣り、昆虫採集など自然体験を通じた体の動かし方も脳にとって非常に良い刺激となります。
Q. 楽器演奏はどのような効果がある?
楽器演奏、特にピアノなどの演奏は脳に様々な好影響をもたらします。楽譜を見て一時的に記憶し、その内容を理解して実際に指を動かすという過程で、脳の多くの領域が活性化します。
楽器演奏は左右の手を別々に動かすため、脳の発達に効果的です。特にピアノは左右を均等に使い、一人で一つの曲を奏でられるという点で初心者にも取り組みやすい楽器といえます。
興味深いことに、子ども時代にピアノなどの楽器演奏を経験しておくと、小学生になってからの学業成績にも良い影響があるという研究結果もあります。また、音楽の訓練は英語のリスニングなど、音の聞き分け能力の向上にも役立ちます。
Q. 習い事を途中で辞めても意味がない?
決してそんなことはありません。たとえ途中で挫折したとしても、その経験自体に大きな価値があります。
「子ども時代にピアノをやっておくと、それだけでも小学生に上がってからの学業成績に繋がる」という研究結果もあります。つまり、上達することだけが目的ではなく、楽器に触れる経験そのものが脳の発達を促すのです。
ピアノなどの習い事で挫折を経験する子どもは少なくありませんが、少しの間でも取り組んだことは無駄にはなりません。上達よりも「好きになるきっかけを作る」ことが重要です。
Q. 子どもの習い事選びで親はどう関わるべき?
子どもの習い事選びでは、親自身が楽しいと思えることを一緒にやることが最も効果的です。子どもは模倣を通じて多くのことを学ぶため、親が楽しそうにしている姿を見ることが、子どもの好奇心を刺激します。

習い事の種類については、親が得意なものから始めるのが良いでしょう。ピアノが得意な親はピアノを、スポーツが得意な親はスポーツを子どもと一緒に楽しむことで、子どもも自然と興味を持ちます。
選択肢を与える際は、無限にあると子どもも決められないので、最初は2つ程度に絞るのがおすすめです。例えば「ピアノと水泳、どちらがやりたい?」といった形で問いかけると良いでしょう。
Q. YouTubeなどの動画は子どもの成長に役立つ?
適切に活用すれば、YouTubeなどの動画は子どもの成長に役立ちます。現代は「知の共有」がなされている時代であり、スポーツの技術や楽器の弾き方など、様々な技能を学ぶための動画が豊富に存在します。
例えば、ピアノの弾き方やサッカーのテクニックなどを検索すれば、多くの上達法が見つかります。これらの動画を参考にすることで、「模倣」という人間の基本的な学習メカニズムを活用できます。
ただし、視聴時間を決めるなど適切なルールを設けることが重要です。時間を決めた上で、能力を伸ばしたい分野の動画を見るのが最も効果的です。
Q. 小さい頃から文化体験をさせるべき?
小さな子どもをコンサートや美術館に連れて行くことは、たとえ子どもが落ち着いて見学できなくても大きな意味があります。設定を見せるだけでも、「こんなものがある」という認識が芽生え、美的センスや美意識が育まれます。
3歳、4歳、5歳くらいの子どもにとって、こうした文化体験は将来の感性や知的好奇心の発達に繋がります。子どもが走り回ってしまうからといって諦める必要はなく、その場の雰囲気を体感するだけでも十分な価値があります。
文化体験と自然体験は、子どもの脳の発達において非常に重要な役割を果たします。このような体験は、未就学児の時期から小学校入学前までに積極的に取り入れると良いでしょう。
Q. 運動と音楽、両方やらせた方が良い?
理想的には両方取り組むことが最も効果的ですが、無理に詰め込む必要はありません。どちらか一方だけでも、脳の可塑性(変化する力)を高める効果があります。
興味深いことに、オリンピック選手などトップアスリートの多くは、子ども時代にピアノなどの楽器演奏を経験しているという報告もあります。これは、楽器演奏で培われるリズム感が、スポーツのパフォーマンスにも良い影響を与えるためと考えられています。

最終的には、子ども自身が「これが好き」と思えるものを見つけることが最も重要です。様々な体験を通じて、何かに「はまる」経験をすることで、他のことにも興味を持ち、挑戦する意欲が生まれます。
Q. 子どもの能力開発で最も大切なことは?
子どもの能力開発で最も大切なのは、「自己決定権」を尊重することです。将来の生きがいや幸福感に関わる重要な要素として、「自分の人生を自分で決定してきたか」という点が挙げられます。
親は選択肢を与え、サポートする立場に徹し、最終的な決断は子ども自身に委ねることが大切です。ただし、選択肢が多すぎると子どもも決められないため、最初は2つ程度の選択肢から選ばせると良いでしょう。
何よりも大切なのは、子どもが何かに「はまる」経験をすること。これは熱中体験とも言え、何かに熱中する経験を通じて「はまり方が分かる」ようになります。この経験は、勉強を含め、あらゆる活動に良い影響を与えます。
子どもの知的好奇心を育むためには、自然体験や文化体験が非常に有効です。特に未就学児から小学校低学年までの時期に、こうした体験を積極的に取り入れることで、将来の学業や様々な能力の発達に良い影響をもたらします。