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【工藤公康×プロ野球】9月終盤、優勝の行方は
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2025年9月3日

独走態勢に入った阪神タイガース。かたや、激しい首位争いを繰り広げるソフトバンクと日本ハム。それぞれの強さの源泉と、9月の戦い方を元ソフトバンク監督の工藤公康氏とPIVOTデータ班が徹底分析。 <ゲスト> 工藤 公康|元福岡ソフトバンクホークス監督 1982年西武ライオンズに入団 以降、福岡ダイエー...
プロ野球監督が語る!9月の戦い方とチーム運営の極意

Q. 阪神タイガースが今シーズン独走している理由は何ですか?
独走する阪神の強さの秘密は「防御率」にあります。セリーグ平均が3点台の中、阪神はダントツの2.10。先発陣の防御率は2.18、リリーフ陣に至っては1.93という驚異の数字を誇っています。
外国人投手デュプランティエは、三振率から四球率を引いたKマイナスBBパーセンテージランキングで26.6%と12球団トップクラスの成績を残しています。投手陣は制球力に優れ、四球を出さずに三振を奪う能力が高いのが特徴です。

また、セットアッパーの石井選手は防御率0.19という非現実的な数字を維持。ストレートの空振り率はNPB全体でもトップクラスで、マウンドでの存在感は絶大です。
打線も見逃せません。チーム全体でフォアボール選択率が高く、規定打席到達選手10人中5人が阪神の選手という結果に。打者の目が肥えており、ストライクゾーンをしっかり見極める能力が高いことが得点力の源となっています。
元ソフトバンク監督の工藤公康氏は「阪神の打者は狙った球を一発で仕留められる選手が多い。それがピッチャーにプレッシャーをかけている」と分析します。
Q. ソフトバンクホークスと日本ハムファイターズが激しい首位争いを繰り広げていますが、両チームの特徴は?
ソフトバンクは今シーズン、怪我人が多く出る中でも勝ち続ける「組織力」を見せています。主力の柳田選手や今宮選手、栗原選手らが離脱する中、野村選手が内野の様々なポジションで穴を埋める活躍を見せました。
野村選手はショート、サード、セカンドなど複数のポジションでリーグ平均を大きく上回るOPS(出塁率+長打率)を記録。打撃だけでなく走塁面でも貢献し、チームに多くのプラスをもたらしています。

工藤氏は「怪我人が出る中で支えてくれた選手たちがいなければ、ソフトバンクはここまでいけなかった」と評価します。
一方、日本ハムは若い選手を中心とした攻撃的なチーム編成が特徴です。先発野手の平均年齢は若く、特にショート(24.9歳)や外野陣の若さが目立ちます。
長打力があるのも強みで、パリーグ最多の106本塁打を記録。1番から8番まで様々な打順で本塁打を量産しており、攻撃に厚みを持たせています。
守備面でも日本ハムは成長しており、内野に打球が飛んだ時のアウト率はリーグトップクラス。若い選手たちの身体能力の高さと技術の向上が実を結んでいます。
Q. 監督として9月の戦い方で重視することは何ですか?
工藤氏によると、「9月の戦いは8月のうちに終わっている」とのこと。すでに1カ月先までのローテーションは決まっており、大きな変更はあまり行わないそうです。
「9月に入ったら選手のコンディショニングを安定させることが最優先」と工藤氏。疲労という言葉は使わず、いかに選手が最高のコンディションで試合に臨めるかを考えることが重要だと強調します。
例えば3連戦の場合、初日と最終日はシートノックを行い、中日は行わないなど細かい配慮をします。バッティング練習も、移動日が続くホーム戦では少なくするなど、選手の体調管理を最優先に考えるのです。
直接対決については、通常通り戦うのが基本とのこと。残り試合が少なくなった時点でローテーションを変える可能性はあるものの、選手にはあらかじめ「残り20試合を切ったらローテーションが変わるかもしれない」と伝えておくなど、心理面への配慮も欠かしません。
Q. 球場によって投手のパフォーマンスは変わりますか?
工藤氏は現役時代、球場によって投げやすさが大きく異なったと語ります。特に京セラドーム(大阪)は投げやすかったといいます。
その理由は「マウンドの高さと硬さ」。工藤氏はかかとから着地するタイプの投手だったため、マウンドの状態がバランスに大きく影響していました。硬すぎず柔らかすぎない、ちょうど良い土の状態が投球のリズムを作るのに重要だったとのこと。
一方、マウンドが低い千葉マリンスタジアムは苦手だったといいます。向かい風の影響でストレートの伸びがなくなるだけでなく、カーブやスライダーが想定以上に曲がってボールになることが多かったそうです。
また、デイゲームとナイトゲームでも投げやすさが変わります。工藤氏は「デイゲームは暑さもあって、リズムに乗るまでが大変」と振り返ります。
監督時代もこうした経験を活かし、選手とマウンドとの相性を考慮してローテーションを組むことがあったそうです。
Q. 育成や選手起用について、どのような考え方を持っていましたか?
工藤氏は「ピッチャーの基本はストレートであり、そこにこだわりを持ち続けることが大切」と強調します。変化球の種類を増やすことも重要ですが、ストレートが劣化すれば変化球の効果も薄れるため、ストレートの質を維持・向上させることが最優先だと説きます。
また、選手の育成では「5年、10年というスパンで考えること」の重要性も語りました。一時的な成功ではなく、長期的に活躍できる選手を育てる視点が大切です。
選手起用では、怪我から復帰した主力をどう扱うかという難しい判断が求められます。工藤氏は「復帰した選手に対するコミュニケーションの取り方」が重要だと指摘。「もう任せる」と完全に信頼を置くのか、「状態を見て判断する」と余地を残すのかで、選手のモチベーションや心理状態が変わるため、監督の覚悟を持った判断が必要だと語ります。
ドラフトについては、「基本的には球団のスカウトを信頼し、彼らが選んだ選手を育てることが監督の仕事」という考えを示しました。長期的な視点で選手を育成することが、球団の継続的な強さにつながるという哲学が伺えます。
Q. データ分析は野球にどう役立てられていますか?
守備位置の調整にデータは不可欠です。例えば外野手が通常より前に位置する「ナイトゴロ」という守備は、打者のバッティング傾向を分析した上で実行されます。
「追い込んだ後に逆方向を狙ってくる打者」などの傾向があれば、それに合わせて守備位置を調整。こうしたデータの裏付けがあるからこそ、選手は自信を持って通常とは異なる守備位置に立つことができます。

工藤氏はピッチャーの育成についても、データと経験の融合を重視しています。トラックマンなどの機器から得られるデータを分析し、選手と共有することで、より効果的な指導が可能になるとのこと。
ただし、短期決戦ではデータの有用性が限られることもあります。工藤氏は「通常と戦い方を変えてくるチームがあれば、それは自分たちのことを恐れている証拠」と捉え、相手の変化を自信に変える心理戦の重要性も指摘しました。
野球は単なる数字の競争ではなく、心理的な駆け引きや選手の成長が複雑に絡み合うスポーツ。データは判断材料の一つでしかなく、最終的には人間的な洞察と決断力が勝敗を分けるのです。