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【太陽光パネルの大量廃棄】リサイクル産業の抜け穴と可能性
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2025年9月2日

2030年頃に迫るとされる、太陽光パネルの大量廃棄時代。新しい環境問題の到来は、私たちにどのような課題を突きつけるのか?一方で新しいビジネスが生まれる可能性はあるのか?経済学者の細田衛士氏に聞いた。 サムネイル 写真:iStock
「ミクロの成功」と「マクロの課題」:日本の資源循環の現状と未来
日本の資源循環政策は個別分野では世界トップレベルの成功を収めているものの、全体を俯瞰する視点が不足している。経済学者の細田衛士氏に、この"循環経済の日本的パラドックス"と将来の展望について聞いた。
Q. 日本の資源循環への取り組みをどう評価していますか?
日本人の真面目さが際立つ分野だと思う。個別の問題が出てくると非常に真面目に取り組む国民性がある。例えば自動車の不法投棄が問題になれば自動車リサイクル法を作り、容器包装類の問題には容器包装リサイクル法で対応するといった具合だ。

特にペットボトルは約92%が回収され、89%程度がリサイクルされている。最近ではボトル to ボトル(ペットボトルからペットボトルへの再生)技術も開発され、個別領域で見ると非常に成功している。
ただし問題は、これらの取り組みが分断化されていることだ。欧州連合(EU)では全体を俯瞰する概念を先に作り、その下に個別の対策を落とし込んでいく発想がある。しかし日本では全体像が非常に見えにくい。
Q. なぜ日本は個別対応に走りがちなのでしょうか?
マスコミの責任も一部あると思う。プラスチック問題が話題になるとプラスチックだけに注目し、リチウムイオン電池の問題が出ればそれだけを追う傾向がある。全体を見たときの優先順位や関連性を考慮せず、個別の問題にのみ対応してしまう。

例えばプラスチック製容器を紙に切り替えると、紙は油が染み込まないよう表面コーティングが必要になる。すると重量が増えて製造エネルギーも多く必要となり、CO2排出量が増加する可能性もある。また、表面加工された紙は従来リサイクルできていた紙と比べてリサイクルが難しくなることもある。
環境に優しくありたいという意図とは裏腹に、結果として環境負荷が高まることもあるのだ。紙ストローの例も同様で、プラスチックストローよりも材料が多く必要で、製造工程でのエネルギー消費も大きいため、CO2排出量が増えてしまう可能性も指摘されている。
Q. 自動車リサイクルはなぜ成功したのでしょうか?
自動車リサイクルは、法制化される前に「自動車リサイクルイニシアチブ」という業界の自主的取り組みがあった。これはソフトロー(法的拘束力のない社会規範や業界ルール)によって、自動車の上流工程から下流工程まで関わるすべての関係者が協力してリサイクル率を高める仕組みだった。
この全体図を描いた上で、足りない部分を法制化した。当時の自主的取り組みで85%程度だった有効利用率を、欧州基準の95%に引き上げるため、費用負担の仕組みや情報共有・啓発の仕組みを法律で整備したのだ。
不法投棄が発生した背景には経済的要因もあった。かつての自動車は「鉄の塊」で、世界経済が好調な時は鉄スクラップの需要も高く、リサイクル事業者は利益を出せていた。しかし経済停滞で鉄の価格が下がると儲からなくなり、不法投棄が増加した。法制化によって費用負担の仕組みが整備され、解体業者や破砕業者の基準も確立された。
さらに自動車メーカーにも責任が生じ、シュレッダーダスト、エアバック、フロン類の処理責任が課せられた。メーカーは不適切な処理業者とは取引できなくなり、処理基準も厳格化された。その結果、現在では99%の有効利用率を達成している。
Q. 自動車リサイクルにも課題はありますか?
日本車は性能が良いため、日本で使用済みになった車両や部品が海外に輸出されてしまう問題がある。特にハイブリッド車や電気自動車のリチウムイオン電池など、貴重な資源が日本国内でリサイクルされない状況だ。

しかも自動車リサイクル法では矛盾した制度設計になっている。自動車を輸出する業者が申請すれば、自動車リサイクル料金が利子付きで返還される仕組みになっているのだ。これは「国内でリサイクルされないものには料金を使えない」という真面目な発想からだが、結果として輸出を奨励する仕組みになってしまっている。
さらに、規制の抜け穴を突いて、廃棄物処理法や自動車リサイクル法を知らない海外の業者が日本でヤードを運営し、使用済み自動車を取り扱うケースも見られる。
Q. 日本の資源循環を改善するには何が必要でしょうか?
基本原則としては、まず「発生回避」(長持ちする製品設計、無駄なものを使わない)、次に「リユース」(誰かに使ってもらう)、「アップサイクル」(より高い価値に変換)、「リサイクル」(材料として再生利用)、最後に「適正処理」(熱回収、適切な焼却、最小限の埋立)という順序で考えるべきだ。
ただし、経済構造や産業構造、生活スタイルが複雑になっている現代社会では、大原則を機械的に当てはめるだけでは不十分だ。全体像を見ながらも細部に配慮し、かつ状況変化に対応できる柔軟性も必要になる。
日本の法律は細部まで非常に精緻に作られているため、一度うまく機能すると周辺環境が変化しても対応しにくい面がある。自動車リサイクル法や容器包装リサイクル法もそうした例だ。
Q. 企業にとって資源循環ビジネスのチャンスはどこにあるのでしょうか?
私たちの生活スタイルが大きく変わってきている点に注目すべきだ。高度経済成長期には物質的な豊かさが幸福の象徴だったが、現在の若い世代には「欲しいものがない」という人も多い。物の所有より経験や使用価値を重視する傾向が強まっている。
内閣府の調査では、1977年頃を分岐点に「モノの豊かさ」より「心の豊かさ」を重視する人が多数派になっている。このような価値観の変化にビジネスモデルがまだ追いついていない部分があり、ここにチャンスがある。

使い捨て型経済からリユース・リサイクルを前提とした循環型経済へと移行する中で、リサイクルしやすい製品設計や循環型のビジネスモデルが求められている。ペットボトルのボトル to ボトルのように技術的には進展していても、社会システムとしてはまだ発展途上だ。
ただし、サーキュラーエコノミー(循環経済)でのビジネスは、すぐに大きな利益が出るものではない。「狭き門」から入る覚悟と地道な努力が必要だ。短期的には利益が薄くても長期的な視点で取り組むことで、やがてビジネスチャンスを活かせるようになる。
最近は金融関係者からサーキュラーエコノミーについての問い合わせが増えてきており、資金も回り始めている。潮目が変わりつつある今こそ、長期的視点での取り組みが求められている。