政策超分析
中国軍事力を衛星写真で徹底分析/経済不調で軍備増強に限界も/海の支配を目論む中国の弱点
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2025年7月25日

「政策超分析」では、専門家が政策や国際情勢を徹底解説。今回のテーマは「中国の海洋進出」。前編では、中国の軍事力を衛星写真を用いて分析する。 <ゲスト> 磯貝初奈|MC 峯村健司|キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員 https://x.com/kenji_minemura 小原凡司|笹川平和財...
激化する中国の海洋進出 - 南シナ海から第二列島線へ
中国の軍事力が急速に拡大し、アジア太平洋地域の安全保障環境が変化しています。特に南シナ海から第二列島線までの海洋進出は、日本を含む周辺国に大きな影響を与えています。安全保障の専門家たちが中国の海洋戦略と最新の軍事動向を解説します。

Q. 第一列島線と第二列島線とは何ですか?
中国から見ると、第一列島線と第二列島線は「邪魔な線」です。日本やアメリカが中国の船や飛行機が外に出ないように押し込めている線だと中国は認識しています。彼らはこれをどう突破するか長年考えてきました。

2005〜2006年頃に作られた中国の内部文書によると、2010年までに第一列島線を「自分たちの内海」にする目標が記されていました。第一列島線には東シナ海や尖閣諸島、南シナ海が含まれています。2020年には第二列島線(日本本土やグアム、パラオを含む)を突破する計画でした。現在の中国の動きを見ると、まさにこの作戦通りに進行しています。
Q. 南シナ海は中国にとってなぜ重要なのですか?
中国から見ると南シナ海は死活問題です。中国が輸入しているエネルギーの海上輸送路はマラッカ海峡を通って南シナ海に入ります。周辺にはフィリピンなどアメリカに協力的な国があるため、中国としては海上交通路を確保する必要があります。

南シナ海の南沙諸島や西沙諸島を確保することで、海上輸送路の安定と周辺諸国への軍事的プレゼンスを確保しようとしています。また海底資源の権益も絡んでおり、中国にとって複合的な重要性を持つ海域です。
2014年頃から埋め立てを開始した人工島には、3000メートルを超える滑走路や大型船が接岸できる岸壁を建設し、ミサイルシェルターやレーダーも設置されています。現在、最大の人工島には約1200名の兵士が駐留していると言われています。
Q. 南シナ海の人工島には弱点もあるのですか?
中国が建設した人工島には大きな弱点があります。元々珊瑚礁だった場所を埋め立てて作った人工島は非常に脆弱です。海抜がほとんどないため、温暖化による海面上昇の影響を受けやすく、岸壁が崩れる危険もあります。
また、有事の際には孤立する可能性が高いという戦略的な弱点もあります。太平洋戦争で日本が経験したように、遠方の島を防衛し続けるのは困難です。特に補給路が断たれると全滅リスクがあります。平時は問題なくても、戦時には数発のミサイルで機能停止する可能性があります。
周辺国としては、長距離の対艦ミサイルや巡航ミサイルを整備して「いざという時は攻撃する」という非対称戦の体制を整えることが現実的な対抗策となります。
Q. 南シナ海が中国の核戦略にとって重要なのはなぜですか?
南シナ海の最も重要な意味は、アメリカに対する核抑止政策の最終的な保証になるということです。これはロシアにとっての北方領土と同じような戦略的意義を持ちます。
以前、中国の潜水艦に搭載されるミサイルは射程が約8000kmと限られており、南シナ海から発射してもアメリカ本土に届きませんでした。しかし、現在は新型の「JL-3」弾道ミサイルが配備され、射程が1万km以上(一説には1万5000km)あるため、南シナ海からでもアメリカ本土を狙えるようになりました。
このため、中国にとって南シナ海は絶対に手放せない戦略的要衝となっています。核抑止力を維持するための「聖域」と言えるでしょう。
Q. 中国軍の空母による第二列島線越えはどのような意味がありますか?
今年6月、中国の空母「遼寧」と「山東」が南鳥島の南西約300kmを航行し、日本の排他的経済水域に一時的に侵入しました。これは中国軍の空母による第二列島線を超えての活動を日本側が公表した初めての事例です。また、中国の空母2隻が太平洋で同時に作戦行動を行っていることも初めて確認されました。
この行動には複数の意味があります。まず、中国海軍は沿岸型から外洋型への脱皮を10年以上かけて進めており、太平洋での訓練を通じて実戦能力を高めようとしています。政治的には「広い太平洋でも作戦能力がある」とアメリカに示すメッセージでもあります。
また、中国空母「福建」は従来の2隻と異なり、カタパルト(射出機)を装備しており、航空機の運用効率が飛躍的に向上しています。カタパルトにより、戦闘機が燃料や弾薬を満載して発艦できるようになり、短い間隔で発艦・着艦させることが可能になりました。
Q. 中国が空母を持ちたい本当の理由は何ですか?
中国が空母を持ちたい本当の理由は、半径1000kmにも及ぶ攻撃能力を世界中のどこへでも展開できるようにするためです。現在、この能力を持つのはアメリカだけです。
中国はアメリカの軍事介入を阻止したいと考えています。例えば台湾に軍事侵攻しても、アメリカが手を出せないような状況を作りたいのです。そのために軍事力を誇示しているのです。
中国は核戦力を増強していますが、まだ完全に欠けているのは「アメリカ本土を通常兵力で攻撃する能力」です。中国の政府関係者は「アメリカは中国近くまで軍事力を展開しているのに、中国にはそれに対抗する手段がない」と主張しています。将来的には空母を活用してアメリカ周辺での活動も視野に入れているのです。
Q. 沖ノ鳥島や南鳥島周辺での中国の活動には、どのような意図がありますか?
中国空母「遼寧」は南鳥島の排他的経済水域内に、「山東」は沖ノ鳥島周辺に入りました。これには明確な意図があります。
中国外務省は今年5月、沖ノ鳥島について「これは島ではない」と改めて主張しました。その後、この海域に空母を派遣したことは「ここは日本の領土と認めず、勝手に経済活動を行う権利があり、それを軍事力で守る」というメッセージです。

南鳥島についても、中国は「無人島だから排他的経済水域を主張できない」と主張しています。将来、この海域でレアアースなどの資源開発が可能になった場合、中国は「日本はここに排他的経済水域を持てない」と主張し、軍事力で威嚇してくる可能性があります。
これは中国版の「航行の自由作戦」とも言え、軍事力を見せつけることで自分たちの主張を既成事実化しようとする戦略です。
Q. 日本はこうした中国の動きにどう対応すべきですか?
中国が軍事力を使って主張を押し通そうとする以上、日本も軍事力で対抗して覚悟を見せるしかありません。しかし現実的な課題もあります。
南鳥島は本土から1800km離れており、航空自衛隊の戦闘機のスクランブル発進は現実的ではありません。海上自衛隊が対応する必要がありますが、現状では船も人員も不足しています。
日米同盟においても重要なのは、まず日本自身が防衛する姿勢を見せることです。アメリカは後から援軍として来るのであり、日本がまず守り切る意思と能力を示すことが不可欠です。これは「ウェスタン映画で、開拓者が先住民に囲まれ、騎兵隊が来るまで耐えなければならない」状況に例えられます。
一方で、尖閣諸島防衛においては、「いずも」級護衛艦を空母化して航空自衛隊の戦闘機の燃料・弾薬補給基地として活用するなど、効果的な対策も検討されています。