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【上水道の破損は年間2万件も】日本の水道インフラ、老朽化の危機
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2025年7月5日

日本の水道インフラが、崩壊寸前だ。たとえば上水道では、年間2万件もの漏水・破損事故が発生している。老朽化が進む水道インフラの危機を、水ジャーナリストの橋本淳司氏に聞いた。 <ゲスト> 橋本淳司|水ジャーナリスト アクアスフィア・水教育研究所代表。 国内外の水問題と解決策について各種メディアで発信し...
「いつまでもあると思うな親と水道」日本の水道インフラ危機を水ジャーナリストが警告
水道管の老朽化が進み、全国各地で道路陥没や水漏れが相次いでいる。
一体、日本の水道インフラはどんな危機を迎えているのか。水ジャーナリストの橋本淳司氏に詳しく聞いた。

Q. 日本の水道インフラの現状を一言で表すと?
「いつまでもあると思うな親と水道」と表現したい。日本の水道インフラはボロボロの状態だ。
親の恩と水道は見えにくいところが共通している。水道管は地下に埋まっていて目にすることがないため、どれだけ劣化しているかが分かりにくい。
そのため、いざ何かある時には手遅れというようなことが起こりうる。
Q. 水道インフラはどんな危機を迎えているのか?
上水道管の破損は年間2万件以上発生している。
これを1日あたりに換算すると相当な数になる。下水道管の破損による道路陥没も年間2000件程度起きている。
特に注目すべきは、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故だ。この事故では、直径約5mの下水道管が地下約10mに埋設されていた。
下水道管に穴が開くと、上部の土が徐々に下水道管内に落ち続け、いつの間にか地中に空洞ができる。
その空洞がある日突然崩れ、大きな陥没事故につながる。
現状の技術では、地下2〜3m以上の深い場所にある空洞を道路上から検知するのは難しい。
下水道管の内部点検は行われているが、上部に穴が開いているかどうかまでは分からないのが実情だ。
Q. 下水道管の老朽化はこれからどうなるのか?
日本全国には約49万kmの下水道管があり、現在は約3万km(7%)が耐用年数とされる50年を超えている。
これが2042年には20万km(40%)にまで増加する見込みだ。老朽化のスピードが年々加速していくため、事故の確率も上がっていくことが予想される。
早急に対策を取らなければ、八潮市のような大規模な陥没事故が各地で発生する可能性がある。
しかし、予防的な対策を行うためのお金と人材が不足している状況だ。
Q. 水道料金の値上げはなぜ必要なのか?
水道料金は「運営費用÷利用者数」で決まる。
しかし、老朽管の交換や耐震化といった費用が増える一方で、人口減少により利用者数は減っている。
こうした理由から、現在の仕組みを維持するためには水道料金の値上げはやむを得ない状況になっている。
Q. 将来の水道料金はどうなるのか?
現在でも自治体によって水道料金には大きな格差がある。
最も安い地域は兵庫県赤穂市の約870円、最も高い地域は北海道夕張市の約6,500円と、約8倍の差がある。

2046年の予測では、安い地域は静岡県長泉町の1,266円と現在とあまり変わらないのに対し、
最も高い地域は福島県鏡石町の2万5,000円と予測されている。格差は約20倍にまで拡大する見込みだ。
このような状況では、水道料金が家計に占める割合が地域によって大きく異なり、居住地選択にも影響を与えかねない。
日本全体でコンパクトシティ化や都市の縮小について議論する必要がある。
Q. 人材不足の実態はどうなっているのか?
小規模な自治体では水道事業に携わる技術者が極めて少ない。
給水人口3万〜5万人規模の自治体では、技能職(現場で実際に作業する人材)がゼロというケースも珍しくない。

ある北海道の自治体では、たった1人で水道事業を担当している例もある。
その人の頭の中にだけ町の水道管の情報が入っていて、図面すら存在しないケースもある。
そのため、その人が不在になると水道事業が立ち行かなくなる恐れがある。
さらに深刻なのは、法定保存期間(7年)を過ぎた水道管の図面が廃棄されるケースもあることだ。
人材不足と情報の喪失が同時に進行すれば、将来的に大きな問題となる可能性がある。
Q. 上水道と下水道では何が違うのか?
上水道と下水道では、設置場所や構造、コスト面で大きな違いがある。
上水道管は比較的浅い場所(地下約1m)に埋設され、常に水圧がかかっているため、破損すると水柱が立つなど水漏れが目に見える形で現れる。
一方、下水道管は深い場所(地下10m程度)に大きな管が埋設されており、破損しても外からは分かりにくく、
時間をかけて地中に空洞ができ、突然道路が陥没するといった事故につながる。
また、コスト面でも大きな違いがある。上水道事業は料金収入でほぼ賄えているのに対し、
下水道事業は料金収入だけでは費用を賄えず、一般会計からの繰り入れに大きく依存している。
これは下水道普及のために料金を低く抑えてきた歴史的経緯があるためだ。
Q. 水道インフラの危機にどう対応すべきか?
まず必要なのは、水道施設の統合や縮小だ。現在、日本の水道設備は実際の使用量の約2倍の能力を持っている。
人口減少に合わせて適切な規模に縮小することで、経営効率を高める必要がある。

また、クライシスマネジメント(事故が起きた後の対応)からリスクマネジメント(予防的な対策)へと発想を転換する必要がある。
八潮市の事故では完全復旧まで5〜7年かかると言われており、その間の経済的・社会的損失は甚大だ。
事前の予防対策にコストをかける方が、長期的には効率的である。
さらに重要なのは、インフラ整備と街づくりを一体的に考えることだ。
今あるインフラをすべて維持することは現実的ではなく、コンパクトシティ化など都市の在り方そのものを見直す必要がある。
街の将来像を描き、それに合わせたインフラ整備を行うという順序で考えるべきだ。