PIVOT TALK BUSINESS
伊藤忠に学ぶ一流の仕事術
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2025年5月25日

かつて総合商社で「準一流」と位置付けられてきた伊藤忠。 今では三菱商事、三井物産などとトップを争うほど急成長。 それだけの飛躍の背景には「商人としての心得」があった。伊藤忠を取材して見えたことについて、ノンフィクション作家でビジネス評論家の野地秩嘉氏に話を聞いた。 <ゲスト> 野地秩嘉|ノンフィク...
一流ビジネスパーソンの条件とは?伊藤忠商事から学ぶ成功の法則
「一流の人は機嫌がいい。怒る人は一人もいない」――ノンフィクション作家で美術評論家の野地秩嘉氏が語る一流ビジネスパーソンの特徴は意外なものだった。伊藤忠商事の成功事例から、ビジネスにおける真の「一流」の条件を探る。

Q. 伊藤忠商事はどのように商社業界でトップクラスになったのですか?
伊藤忠商事は長い間「万年4位」と呼ばれていました。三菱商事や三井物産といった大手商社は資源(石油や鉄鉱石、石炭など)を扱う事業の割合が大きく、それが大きな収益源となっていました。一方、伊藤忠は繊維商社として出発し、綿花を輸入して糸を作り、布を作って売るという仕事をしていました。資源と比べると単価が低く、規模の差がありました。
しかし、伊藤忠は事業投資に力を入れ、多くの関連会社や子会社を持つことで成長しました。ファミリーマートやウィーカーズ(中古車買取業)など様々な事業会社を保有し、それらの会社が成長して利益を上げることで本体の収益に貢献しています。資源価格の変動に左右されにくいビジネスモデルを構築したことが、現在の成功につながっています。
2026年の見通しでは、伊藤忠は商社業界で利益トップになる見込みです。
Q. 伊藤忠の経営方針や目標設定の特徴は何ですか?
伊藤忠の経営方針の特徴は「防ぐ」という点にあります。岡藤正広会長が社長に就任した際、会社の数字を分析したところ、特別損失が多いことが万年4位だった原因だと気づきました。そこで、事業会社の管理を徹底し、損失を「防ぐ」ことに注力しました。

また、目標設定の仕方も特徴的です。いきなり業界トップを目指すのではなく、達成可能な目標を段階的に設定していきました。最初は「非資源分野で他社より上になろう」という目標から始め、小さな成功体験を積み重ねていきました。その後、「総合商社の中で存在感を示そう」「トップ3に入ろう」と目標を徐々に高くしていきました。
このように現実的で達成可能な目標を設定し、一つずつクリアしていくことで、組織全体のモチベーションを高め、結果的に大きな成功につなげています。
Q. 伊藤忠の社風や人材の特徴はどのようなものですか?
伊藤忠の特徴として、学歴にあまりこだわらない点が挙げられます。もちろん一流大学出身者も多いですが、他の大手商社と比べると学歴を重視していない傾向があります。
また、社員の人柄として「優しさ」や「腰の低さ」が特徴です。例えば、ベンチャー企業の社長が大手商社に営業に行った際、どの商社も断ったものの、伊藤忠だけは最初から最後まで話を聞いてくれたというエピソードがあります。結果は同じでも、相手に対する姿勢が違うのです。
岡藤会長の人柄も特筆すべき点です。取材の際には質問に対する回答を自分で準備し、話し足りないことがあれば翌日また時間を作って話をするなど、誠実な対応をします。また、関連会社の社長全員を集めたゴルフコンペを開催し、賞品まで自分で選ぶなど、細部まで気を配ります。
Q. 一流のビジネスパーソンの特徴とは何ですか?
一流のビジネスパーソンには共通する特徴があります。まず、「誰かに評価されたいとは思っていない」ことです。二流の人は常に誰かに評価してほしいと思うため、自分の実績を話したがりますが、一流の人は仕事そのものに集中しています。

また、「絶対に愚痴をこぼさない」「仕事をくれとは言わない」といった特徴もあります。さらに、一流の人は常に「機嫌がいい」のも特徴です。柳井正氏(ユニクロ)や孫正義氏(ソフトバンク)など、一流のビジネスパーソンはほとんどが機嫌よく、怒ったり不機嫌になったりする姿をあまり見せません。
加えて、一流の人は「相談をする」傾向があります。地位が高くても、相手が誰であっても「これについてどう思いますか?」と意見を求めます。相談されると人はその人のファンになりやすく、相手の立場に立って考えるようになります。
Q. 若手ビジネスパーソンはどのように自分をアピールすべきですか?
若手のうちは、とにかく懸命に仕事に取り組むことが大切です。「評価されたい」「アピールしたい」という気持ちがあると、それが表に出てしまい、かえって評価を下げることになります。
アピールする方法としては、直接的に自分の実績を話すのではなく、「相談」を活用するのが効果的です。相手に「これについてどう思いますか?」と聞くことで、自然と自分の状況や取り組みを伝えることができます。相談の内容は仕事に限らず、些細なことでも構いません。
また、目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢も重要です。例えば、芸大の入試では90分という限られた時間内で「出産」というテーマで作品を作るよう指示されますが、合格する人は完成させることより、全力で取り組む姿勢を見せます。ビジネスでも同様に、結果よりもプロセスでの姿勢が評価されることがあります。
Q. 年齢や役職によって心がけるべきことは変わりますか?
若いうちは懸命に仕事に取り組むことが最も重要です。朝早く出社したり、休日も働いたりと、とにかく仕事に打ち込む姿勢を見せることがアピールポイントになります。

一方、年齢を重ねて役職が上がったら、若い人に「頑張れ」「夢を持て」と言う前に、自分自身が頑張り、夢を持つことが大切です。そして部下には、その人の能力に合った「クリアできそうな目標」を設定してあげることが重要です。目標が高すぎれば達成できず、低すぎれば手を抜いてしまいます。部下一人ひとりのことをよく理解し、適切な目標を設定することが良い上司の条件です。
Q. 一流のビジネスパーソンの意外な行動パターンはありますか?
一流のビジネスパーソンは、イベントや会合が雨で中止になりそうな時でも、可能な限り参加します。例えば、ゴルフコンペが雨で中止になりそうな時、ほとんどの人は行かないでしょう。しかし、一流の人は会場に足を運び、たとえ一人でも高級なお酒を注文して店に売上を作ってあげるなど、相手のことを考えた行動をします。
このような行動は直接的な見返りを求めているわけではなく、純粋に相手のことを考えているからこそできることです。そして結果的に、そのゴルフ場に次回行った時には大歓迎されるといった良い関係性につながります。
一流のビジネスパーソンは、「これをすれば得をする」という打算的な考えではなく、常に相手の立場に立って考え、行動するのです。