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iDeCo改悪説の根源【篠田尚子×山田真哉】
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2025年5月11日

日本の税制の中でも注目浴びるiDeCoの改悪説。退職金所得控除10年ルールへの変更で何が起こる?ファンドアナリスト篠田尚子がオタク会計士山田真哉氏に問う <ゲスト> 山田真哉|公認会計士・税理士 東進ハイスクール勤務を経て、公認会計士に転身。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部突破の...
【退職金とイデコ】税制の問題点とS&P500一択の時代はもう終わり?
年金や退職金の制度が人生設計に与える影響は大きい。特に個人型確定拠出年金(イデコ)の税制改正は多くの人の関心事だ。今回はファンドアナリスト篠田尚子がオタク会計士として知られる山田真哉氏に、退職所得控除の改正やイデコの現状、そして資産運用の選択肢について聞いた。

退職所得控除の「解約」報道は誇張?実態はどうなっている?
Q: 退職所得控除の「解約」という報道がありましたが、これはどういう意味なのでしょうか?
退職所得控除自体を抜本的に変えようという議論があり、その第一段階としてイデコの扱いを変更することになりました。これはセンセーショナルに報じられすぎです。イデコをずっと追ってきた人間にとっては大ニュースですが、世の中の多くの人はそこまでイデコに注目していません。そもそもイデコを受け取る人自体が多くないのが現状です。
2001年からイデコが始まり、私も加入したのは10年目くらいですが、その頃でも加入者は本当に少なかった。おそらく100万人もいなかったのではないでしょうか。
「5年ルール」改正の本質と退職金制度の問題点
Q: イデコと退職金の関係はどう変わるのでしょうか?
これまではイデコを先に受け取ってから5年後に退職すると税金がかからないというルールでしたが、今後はイデコから退職金をもらうまでに10年間開けなければならなくなります。本来、イデコと退職金は同時に受け取る設計なのです。

自営業や個人事業の場合は仕事を辞めた時に受け取るのが普通ですが、時期をずらすことで退職所得控除を二重に適用できる状態になっていました。特に今は60歳で一旦定年、65歳まで延長という会社が増えてきて、60歳でイデコをもらい、65歳で退職金をもらうという人が増えてきました。
しかし国の考えでは、イデコは退職金の上乗せであるはずなのに、タイミングをずらすだけで税金が変わるのは税制として中立ではありません。人々の行動が税金によって左右されてしまっているのです。だから10年空けることになったのです。
税制設計のミスマッチ-イデコの本来の目的とは?
Q: 税制設計にミスがあったということでしょうか?
これは最初に想定していた税制のミスと言えます。イデコの導入目的は、元々は退職金がない会社や退職金が少ない会社の従業員のためのものでした。中小企業の退職金共済でも受け取れる金額は1000万円あるかないかくらい。それにプラスで1000万円くらい足して、合計2000万円で大企業並みになるという発想だったのです。大企業の方がさらにイデコをやるということは、そもそも想定されていませんでした。
この10年くらいの間に制度改正が進み、今は国民全員がイデコに加入できるようになっています。そこに生じているズレが今回のルール改正の背景にあります。

将来の税制は分からない…それでもイデコはすべきか?
Q: 将来の税制が変わる可能性がある中で、イデコに加入するべきでしょうか?
お金をどうやって資産運用していくかという中で、イデコに関しては少なくとも運用するタイミングで税金がかからないですし、かけた金額はその時点で所得控除になります。税金的に優遇を受けながら資産形成するという意味では非常に有利な制度です。
出口の時にどうなるかは正直わかりません。ただし、今の優遇がなくなるかもしれないけど、その時は他の優遇もなくなっているかもしれません。もしイデコだから損をするという状況になるくらいなら、金融資産課税の方が先に進んでいる可能性が高いです。なぜなら、退職金は会社がつけてくれている人が多いので、退職金課税を完全に厳しくするよりは、金融資産課税の方が政治的にしやすいからです。
私は比較的イデコは有利だと思います。何も考えずに投資をするよりはイデコの方が良いでしょう。税優遇が出口の段階でゼロになるかもしれませんが、マイナスにはならないはずです。
イデコは投資ではなく「年金」として考えるべき
Q: イデコをどう位置づければ良いのでしょうか?
イデコは投資ではありません。資産運用ではありますが、「投資」は自分のお金をどこかに渡すことで、そこが成長したらインカムゲインなりキャピタルゲインが入ってくるという考え方です。イデコも最終的にはイデコの基金が投資信託などを買っているから投資っぽく見えますが、本来の目的は違います。
公的年金と同様に、自分が障害を負った時や亡くなった時に引き出せるという側面もあります。自分で積み立てる生命保険のような役割も持っているのです。
S&P500一択の時代は終わり?国際情勢の変化と資産配分
Q: イデコやNISAでS&P500一択で投資している人はこれからどうすれば良いでしょうか?
20代30代の資産形成フェーズの方はリスクを取れる時に取った方が良いと考えます。為替も含めた変動にリスクを取るのは理にかなっていると思います。特に新NISAであれば時間分散せざるを得ないので、S&P500一択でも良いですし、さらにリスクを取る方向に資産配分してもいいでしょう。

ただし、世界情勢は変わりつつあります。トランプ政権下での経済ナショナリズムの台頭により、世界経済はアメリカを中心としたグループと中国を中心としたグループに分かれつつあります。これまでは純粋に経済力だけを見れば良かったのが、今後は各国の軍事力も見なければいけない時代になってきました。
制度改正の波が押し寄せている
アメリカの強さは最終的に軍事力に支えられています。安全保障があるから安心して経済活動ができる。それに対して中国も軍事大国として台頭している状況で、私たちはどこに投資すべきなのか考える必要があります。アメリカの軍事力を評価するならS&P500一択でいいでしょうし、他のブロックにも興味があるならば全世界株式の方が安心という考え方もあります。
インデックス投資の限界と見直しのタイミング
Q: インデックス投資は今後も有効な戦略なのでしょうか?
S&P500か全世界株式のどちらかを選んで、そのまま20年30年投資を続けるというのは疑問があります。世界の状況は変わっていくものです。インデックスを買ってそのまま放置するのがいいというのは基本的には正しいですが、5年とか10年スパンでは見直した方が良いでしょう。
現実的に、今の時価総額加重平均インデックスはすでに時代に合わなくなってきているという見方もあります。S&P500も時価総額加重平均にしていることで、特定の上位企業(GAFAMなど)だけが大きな力を持っています。これがブロードマーケットインデックスと言えるのかという議論もあり、均等配分するようなインデックスなど、アレンジを加えたものも出てきています。
アメリカではもはやインデックスだけでなく、アクティブETFも派生しています。臨機応変に組入れを変えていく、限りなくアクティブに近いけれども一定のルールに基づいた商品もすでに多く登場しています。金融商品の世界ではアメリカが先行しているので、日本にもそういったものが入ってくる可能性は十分考えられます。
インデックス投資から始めるのは間違いではありませんが、5年10年後には新しい投資手法や商品が主流になっている可能性もあります。
AIが変える税金との付き合い方
Q: AI技術の発達は税制や会計の世界にどう影響するでしょうか?
金融の世界はAIの影響を大きく受けていますが、税制や会計の世界でもAIによる変化が起きています。現状ではAIによる税金計算は完全ではなく、過去の情報を引っ張ってきてしまったり例外規定に対応できなかったりという問題がありますが、いずれはAIが計算をしてくれるようになるでしょう。
「この家族構成で、この年齢で、この保険加入状況だと、最適な年収はいくらか」「最適な積立金額はいくらか」などをAIが分析してくれるようになれば、一般の人にとって税金がもっと身近になります。複雑な判断が必要な場合は税理士に頼む必要があるかもしれませんが、基本的な判断やデータ分析はAIで代替できるようになるでしょう。
現在は税理士が顧客から「いくら投資すべきか」といった漠然とした相談を受けても、家族構成や将来の見通し、勤務先の状況など様々な要素を考慮して提案を作る必要があります。これには大きな労力がかかる割に報酬が見合わないケースも多いのですが、AIが基本的な分析を行い、税理士はより付加価値の高いアドバイスに集中できるようになれば、それが本来あるべき形なのかもしれません。
AI技術が税制を身近にする
税制自体はそう簡単には変わらないでしょうが、一般の人にとっての親しみやすさという点では、わかりにくい税金の仕組みをAIが解説してくれる時代になれば、税金がより身近になるのではないでしょうか。