TIME IS
時間栄養学 入門/いつ食べるかで健康が決まる【柴田重信】
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2024年12月20日

多忙なビジネスパーソンへ、圧倒的な成果を上げている著名人が時間術のヒントを提供する「TIME IS」。今回は、時間栄養学の第一人者である柴田重信さんに「いつ・何を」食べればよいかを聞く。 <ゲスト> 柴田重信 時間栄養学会 理事・顧問 <参考書籍> 『65歳からの知っておきたい時間栄養学』 ht...
食事の時間が健康に与える影響は?「体内時計」を考慮して最適な食生活を送ろう
朝食を食べると体内時計がリセットされ、朝に魚を食べると油の吸収が良く脂質異常症予防にも効果的。タンパク質は高齢者の筋肉減少を防ぎ、認知症リスクも軽減する可能性がある。食事と時間の関係について詳しく見ていこう。

Q. 柴田さんはどのような専門家ですか?
柴田重信は日本時間栄養学会の理事顧問を務めており、早稲田大学名誉教授および広島大学特任教授の肩書きを持っている。1953年生まれで、九州大学薬学部薬学科を卒業後、同大学院薬学研究科博士課程を修了し、薬学博士の学位を取得している。早稲田大学先進理工学部教授などを経て現職に至っている。
Q. 時間栄養学とはどのような学問ですか?
時間栄養学は「いつ、何を、どう食べるか」の中でも特に「いつ」に注目した学問だ。食べるものが体内時計に影響し、朝食を摂ることで体内時計が朝だと認識する。一方で体内時計も食事の効果に影響し、同じものを食べても朝と夕方では血糖値の上がり方が異なる。この「食べるものが体内時計に影響する」と「体内時計が食べる効果に影響する」という2点が時間栄養学の重要な要素となっている。
Q. 体内時計とは何ですか?
体内時計とは体に時刻を教える仕組みだ。脳の中にメインの時計(親時計)があり、末梢の臓器には小時計がある。親時計が指揮をして現場の時刻調整をしていると考えられている。

Q. プチ断食(食事時間制限)は体に良いですか?
基本的にプチ断食は非常に良いとされている。これは食事時間制限法と呼ばれ、食べる時間を制限する方法だ。具体的には肥満の解消や血圧が改善するなどの健康効果が知られており、最近では2型糖尿病の治療応用にも用いられている。

Q. プチ断食はどれくらいの時間を開けるのが良いですか?
18時間以上の断食は避けるべきだ。18時間断食だと食事可能時間が6時間と非常に短くなってしまう。14時間断食で10時間だけ食べる、または12時間食べて12時間断食するという方法が良いとされている。
重要なのは、朝食はきちんと食べることだ。例えば12時間断食なら、朝8時に朝食を取り、夕食は午後8時にすると丁度12時間になる。朝食欠食で始める時間制限食事は効果がないことが分かっているので、必ず朝食からスタートすることが重要である。
Q. 食事は1日何食取るのが理想ですか?
1日1食は時間栄養学的にはメタボリックシンドロームの観点からも推奨できない。夕食が遅い場合は間食を入れることが良い。そのため、1日3食か3〜4食が望ましい。
朝食は健康的な食生活の基本なので、必ず摂るべきだ。朝食を摂ると体内時計をリセットでき、朝食が末梢時計に「朝」であることを教えることができる。また朝食は夕食に比べて熱産生が高く、体温が上がりやすくエネルギー消費量が多くなるため、朝食を食べても太りにくい。反対に、朝食を食べないとメタボリスクが高まることが分かっている。
体内時計をリセットする効果は朝の時間帯に強く、昼に近づくほど薄れていくので、起床後なるべく早めに、遅くとも9時までに朝食を摂るのが良い。
Q. 1日3食をどんな配分で食べるのが理想ですか?
肥満者は朝食の割合が低く、夕食の割合が高い傾向がある。日本人の平均的な食事の比率は、朝:昼:夕=2:3.5:4.5で、夕食に偏っている。
理想的な配分は朝:昼:夕=3:3.5:3.5だ。つまり夕食を少し減らして朝食に回すと、ほぼ均等な配分になる。
Q. 朝食は何を食べるのが良いですか?
朝食で体内時計をリセットするためには血糖値が上がることが重要だ。朝食は昼食や夕食に比べてインスリンの効果が強いので血糖値が上がりにくいという特徴がある。血糖値が上昇することと、それに付随するインスリンの分泌が末梢時計に「朝」を教えるため、朝食は非常に重要だ。
具体的には、高GI(グリセミックインデックス:血糖値の上がりやすさを示す指標)食品である炭水化物、特に白米・うどん・パンなどが適している。
また、食物繊維も朝食に良い。特に水溶性食物繊維は短鎖脂肪酸の産生量を増やし、血糖値の上昇を抑制する効果がある上、便通も良くする。水溶性食物繊維は海藻・ごぼう・熟した果物・菊芋などに含まれている。一方、不溶性食物繊維は野菜・キノコ類・豆類などに多く含まれる。
タンパク質(肉・魚・大豆製品・乳製品・卵など)も朝食に重要だ。特に高齢者は朝のタンパク質摂取が少ない傾向があるが、これを増やすとサルコペニア(筋肉の衰え)や虚弱を予防でき、認知症リスクも減らせる可能性がある。
油の中では魚の油(DHA・EPA)が最適だ。魚の油成分はインスリン分泌を促進し、体内時計のリセット効果や肥満防止にも役立つ。また朝は油の吸収が良く、脂質異常症や動脈硬化の予防にも効果的だ。和食の朝食に魚を取り入れるのは非常に良い組み合わせといえる。
Q. 野菜を食べるのに適した時間はありますか?
野菜は食物繊維が豊富なので朝も昼も夕も積極的に摂取すべきだ。例えばトマトの場合、朝に摂ると抗酸化作用の強いリコピンの吸収が最も良く、昼間の紫外線や酸化ストレスから体を守るのに役立つ。昼はトマトに含まれるカリウムが高血圧予防に効果的だ。夜はギャバが豊富なトマトを選ぶと、ストレス抑制や睡眠促進効果が期待できる。
Q. 牛乳はいつ飲むのが良いですか?
朝の牛乳に含まれるタンパク質は筋肉に良い。また朝の牛乳は睡眠にも良いとされる。これは牛乳に含まれるトリプトファンが昼間にセロトニンに変わり、そのセロトニンが夕方頃にメラトニン(睡眠を促す物質)に変わるためだ。
一方、夕方の牛乳に含まれるカルシウムは吸収が良く、骨を強化する効果がある。ビタミンD強化牛乳が特に良い。カルシウムの吸収は夜が良いことが分かっており、乳製品のカルシウムは特に吸収率が高い。チーズもおすすめだ。また、水溶性食物繊維(ごぼうや海藻など)と一緒に摂るとカルシウムの吸収がさらに促進される。
Q. フルーツはいつ食べるのが良いですか?
「フルーツは朝に食べると金になり、昼は銀、夜は銅になる」という言葉があるように、朝が最も良い。フルーツに含まれる糖分が体内時計を「朝」と認識させるのに役立つ。また朝に摂ると、フルーツに含まれるペクチン(水溶性食物繊維の一種)が腸内細菌を活性化し、便秘予防や腸内環境の改善に効果的だ。
Q. 昼食は何を食べるのが良いですか?
昼食は高血圧予防の鍵となる。多くの人が昼食でうどんやそばなどの単品メニューを選びがちだが、これでは野菜不足になりやすい。野菜に含まれるカリウム不足と高血圧には相関関係があるため、昼食には野菜たっぷりのタンメンや、小鉢や野菜スープ、味噌汁が付いた定食を選ぶと良い。カリウムを多く含む食材は野菜、果物、海藻、イモ類などだ。
昼食を抜いたり、軽い間食程度にしたりすると、夕食時に高血糖になりやすくなるため、きちんと昼食を摂ることが重要だ。昼食で摂取する中性脂肪は体脂肪として蓄積されにくいという特徴もあるので、カツ丼や牛丼などは夜よりも昼に食べる方が良い。また、しっかり昼食を食べることで夕食の過食も防ぐことができる。
Q. 夕食は何を食べるのが良いですか?
夕食は炭水化物の比率が低いほど減量効果が出やすい。主食(ご飯やパン)を半分程度に減らすと良いだろう。減量効果を高めるには、朝食から10〜12時間以内に夕食を摂り、19時までに済ませるのが理想だ。
夕食が遅くなる場合は分食がおすすめだ。夕方の早い時間に主食(ご飯やパン)を摂り、遅い時間の夕食ではタンパク質や脂質などが多い主菜・副菜を食べると高血糖を防ぐことができる。
Q. コーヒーはいつ飲むのが良いですか?
コーヒーは特に朝飲むと体内時計に「朝」という信号を送る効果がある。一方、夜遅いコーヒーは夜型生活を助長するため、ディナー後のデザートとしてのコーヒーは避けた方が良い。研究によると、朝のカフェイン摂取は肥満抑制効果があるが、夕方はその効果が見られないため、カフェインは朝か昼までに摂るのが望ましい。
Q. 緑茶はいつ飲むのが良いですか?
緑茶は夕食時に飲むとカテキンの作用で食後の血糖値上昇を抑制できる。ただし緑茶にもカフェインが含まれているため、夕方以降は低カフェイン系の緑茶を選ぶと良い。また、テアニン(甘みのある成分)が豊富な緑茶には睡眠促進作用があるため、夕方にはカテキンとテアニンのバランスが良い緑茶がおすすめだ。
Q. 間食はどのように取り入れれば良いですか?
間食には2つの考え方がある。1つは食事で十分に栄養が取れない場合の補給として、特に子供や高齢者に有効だ。例えば高齢者が朝食で十分なタンパク質を摂れない場合、午前中の間食(10時頃)にゆで卵やヨーグルトなどのタンパク質を補給すると良い。
もう1つは夕食が遅くなる場合だ。昼食から夕食まで時間が空くと夕食時に高血糖になりやすいため、午後4時頃に間食を摂ると夜の高血糖を防ぐことができる。水溶性食物繊維が入ったおやつ(機能性を考慮したせんべいやお菓子など)がおすすめだ。
Q. 夜食にラーメンを食べたくなる時がありますが、健康に良くないですか?
夜食はやはり良くない。特にラーメンのような高カロリー食品は太る原因になる。どうしても空腹で眠れない場合は、ラーメンではなく低カロリーで消化の良いスープ類などを選ぶと良いだろう。
糖質が高いものや油が多いものは習慣性があり、脳からドーパミンが出て「また食べたい」という欲求が生まれやすくなるため、
特に注意が必要だ。
Q. お酒を飲むのに良い時間帯はありますか?
一般的に多くの人が行っている17時や18時頃から飲み始め、遅くとも日付が変わる前に終える習慣が実は理想的だ。朝や昼からお酒を飲むと、体内でアルコールを分解・排出する能力が低下するため、夕方から飲む方が良い。
また、アルコール自体にはカロリーがあるため、摂りすぎると肥満の原因になることに注意すべきだ。
Q. 夜お酒を飲むと眠りが浅くなり、夜中に起きたりしますが、対策はありますか?
難しい問題だが、オルニチン(しじみに含まれる成分)が効果的かもしれない。オルニチンには睡眠効果があることが知られており、体内時計を少し遅らせる作用もある。特に超朝型の人や高齢者など睡眠が取りにくい人には良いかもしれない。
Q. 交代制勤務(シフトワーク)の食事はどうすれば良いですか?
シフトワークを長く続けると、メタボリックシンドロームやうつなどの問題が生じやすくなる。これは体内時計と社会の時計がずれ、食事時間が混乱し、食事回数も増えやすくなるためだ。
シフトワーカーも「シフト開始時」を朝と考え、「シフト終了後の食事」を夕食と位置づけ、その間を10時間以内にすると良いという研究結果がある。
シフト終了後は疲れから大量に食べがちだが、控えめにすることが重要だ。また、真夜中(通常は睡眠時間)のシフト中も大量に食べないよう注意する必要がある。
Q. 食事時間が不規則になりがちなビジネスパーソンへのアドバイスはありますか?
朝食を摂ってから12時間以内(または10時間以内)に夕食を済ませるようにし、その後はカロリーのあるものは摂らない。水や緑茶は構わないが、カロリーのあるものは避ける。
不規則な食事時間になる人は特に夜が遅くなることが多いため、「分食」を活用すると良い。分食を上手く取り入れれば、夜遅い時間の食事は軽めで済ませることができるので、夜遅くはなるべくカロリーの低いものを選ぶようにしよう。