PIVOT TALK BUSINESS
AbemaからNetflixへ挑む
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2024年12月14日

映画「Winny」で話題となった映画監督、松本優作氏がAbemaで連続ドラマを制作。Netflixにも配信し、世界へ挑戦する松本監督が考える、日本映画の世界での戦い方とは。
「透明な私達」松本優作監督が語る、令和の20代の息苦しさと配信ドラマの未来
映画「ウィニー」や配信ドラマ「透明な私達」で注目を集める松本優作監督。白黒はっきりと分けられる社会への息苦しさや、若者が抱える悩みを丁寧に描き出す彼の作品は、多くの視聴者の心に深く刺さっている。今回は松本監督に「透明な私達」を中心に、現代の若者の悩みや配信ドラマの可能性について語ってもらった

Q. 「透明な私達」というタイトルから連想するものとして、1997年の神戸連続殺人事件で14歳の少年Aが「透明な存在」というメッセージを送ったことがあります。今の若者も同じような感覚を持っているのでしょうか?
「確かにその事件は私が生まれてから最も印象に残っている事件の一つです。その感覚がずっと引きずられているような気がしています。調べてみると、それ以前からずっとあったものだと思います。長山ノリ男の時代から今に至るまで、自分の居場所のなさや埋まらない何かを抱えながら生きている感覚は続いているのではないでしょうか。今回はそれを改めて描きたいと思いました」
Q. スマホやSNSの普及で「何者かになれる」ように見える時代ですが、それでも若者の悩みは変わっていないのでしょうか?
「むしろSNSがより苦しくなってきている部分もあると思います。Twitterが最初に出てきた頃は、掲示板のような感覚で気軽につぶやける、リアルな自分からの逃げ場所のような新しい居場所という感覚がありました。しかし今はそちらの方が居心地が悪くなっています。一言で人生が狂ってしまう怖さもあり、私も酔った時は絶対につぶやかないようにしています。Xは下書きを書いてから投稿するほど慎重になっています」
「また、SNSで他人の投稿を見ていくと、自分が全然進展していないと感じたり、どうしても他人と比べてしまい、自己肯定感が低くなっていくことも感じます」

Q. 作品の中で描かれている若者の苦しみとは具体的にどのようなものですか?
「やはり白黒きっぱりと分けられている社会に対する息苦しさがあると思います。『こうしなければいけない』とか『これはダメ』とか、結果ばかりが求められる中で、中間点やグレーゾーンが大事なのに、それが見られていない。そこをちゃんと見ないと息苦しさから解消されないのではないでしょうか」
「また、対立するものの間で悩む若者も描いています。富山と東京、地方と都会、お金持ちと貧乏など、さまざまな対立がある中で、隣の芝生は青く見えるというか、自分がいないところは良く見えてしまう。富山にいる人は東京に憧れ、東京にいる人は地方に戻りたいと思う。そういった価値観の多様性も描きたいと思いました」
Q. 今の20代の若者を取材してどんな印象を受けましたか?
「一括りにできないと思いました。スタートアップの若手企業家の方々も人それぞれでした。ただ、埋まらない溝のようなものがずっとあったり、日本の出る杭は打たれる文化のように、出てきた時に叩かれるような感覚は多くの人が持っていました。それは『ウィニー』を撮った時と同じような感覚で、20年前と今も変わっていない部分が多いのかなと思いました」
Q. 今回の作品は配信プラットフォームで6話のドラマとして制作されましたが、映画制作との違いはどこにありましたか?
「映画は2時間で省略の文化・芸術だと思いますが、6話という長さだからこそできる表現もあります。ドラマの方がビジネスに近い部分があるので、そこの難しさを今回実感しました」
「ドラマの主流としては展開を早く見せて次を見たくさせることが大事なテンプレートになっていますが、私たちが伝えたかったのは結果よりも過程が大事ということでした。しかしそういう作り方をすると、視聴者に見てもらいにくくなるというジレンマがあり、そのバランスが難しかったです」
「今回の作品は1本の映画を6等分したような感覚に近く、一気見の方が見ていただきやすいかもしれません」
Q. 配信ドラマという形式の可能性をどう感じていますか?
「配信ドラマは映画とテレビドラマの中間的な位置にあると思っています。テレビドラマでは1週間ごとの放送なので視聴者が内容を忘れないようにフラッシュバックやセリフで説明が必要ですが、配信の場合はより映画に近い感覚で作れます。また視聴者がお金を払ってサービスを利用しているので、テレビの作り方に縛られなくていいという自由さもあります」
「作り手や俳優にとっては、配信プラットフォームの増加で作品数が増え、チャンスが広がっています。また、世界配信を視野に入れると、日本だけでの知名度よりも実力が問われる時代になってきており、より平等になっていく可能性を感じています」
Q. 配信プラットフォームの今後についてどう考えていますか?
「今後どうなるかはまだ未知な部分もありますが、ショートドラマなど新しい形式も増えています。テレビよりも表現の自由度が高く、予算も多く使える一方で、配信ドラマのバブルは終わりつつある感じもします」
「今後は各プラットフォームがどうブランディングしていくかが重要になります。Netflix、Amazon Prime、Disney+など海外の配信プラットフォームが大半を占める中で、日本の企業はどうしていくべきか。海外に負けない、戦えるコンテンツを作っていくことが必要です」
Q. 「透明な私達」が世界で受け入れられると思いますか?
「まだ分からない部分ですが、とても楽しみです。日本ではそれほど流行らなかった青春ドラマが海外で人気を集めることもありますので、一つの挑戦だと思っています」
「Netflixの人がよく『ローカルを突き詰めるとグローバルになる』と言っていますが、『SHOGUN~将軍~』も日本の時代劇の伝統をしっかり受け継ぎながら、日本人が見ても納得できる形に仕上がっていました。日本らしさを突き詰めることが成功の鍵になるのではないでしょうか」
「『透明な私達』でも富山のお祭りや白エビ、渋谷のスクランブル交差点など、日本的な要素は意識しました。海外の人が『こんな日本を見てみたい』と思えるような、日本の多様な顔を見せたいという思いがありました」

Q. 松本監督は今後どのような方向性で作品を作っていきたいですか?
「世界に届けたいという思いが強いので、映画やドラマという枠組みに縛られず、自分がやりたいことを世界に見てもらえる方法を模索していきたいです。テーマは進化し続けていますが、根底にあるものは同じで、それをどう進化させながら世界の人に見てもらえるかを考えています」
「そのためには、どういう見せ方をすれば多くの人に見てもらえるのか、どういうところと組めばより多くの人に届くのかを常に考えています」
「今は日本の作品や日本絡みの作品への評価が高まっているので大きなチャンスです。先人たちが切り開いてくれた道をどうつないで次の世代に残していけるかを考えながら、日本ならではの要素を世界に発信していきたいです。