PIVOT TALK BUSINESS
SNSの偽情報が消えない理由
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2024年11月22日

偽情報対策の専門家 高森雅和氏は、グローバルに展開するビジネスに偽情報のリスクが迫っているという。 そもそも偽情報とは何で、どんなリスクが迫っているのか。 <ゲスト> 高森雅和|Japan Nexus Intelligence代表 プロラグビー選手を経て、電通に入社。情報通信、小売業のコミュニケー...
情報戦のプロが語る、デジタル時代の新たな脅威:「偽情報」から身を守る方法
デジタル空間でのリスク情報、特に偽情報を含む悪意ある情報を把握・分析する会社として注目されているジャパンネクサスインテリジェンス。SNSの普及により誰もが情報発信できる時代になった今、私たちは気づかないうちに情報戦の渦中にいるのかもしれない。

Q. ジャパンネクサスインテリジェンスはどのような会社ですか?
世の中、特にデジタル空間上でのリスク情報や偽情報を含む悪意ある情報を把握して分析する会社だ。大きくはリスクマネジメント会社と言えるだろう。
Q. 最近なぜ偽情報対策が注目されているのですか?
SNSの普及が非常に大きい。様々な人が発信できるようになり、多くの人がそこから情報を得て影響を受けるのが一般的になった中で、偽情報が広がりやすい状況が生まれている。地方自治体を含め、相談が増えている。
Q. 具体的にどのような「敵対的情報作戦」が行われているのですか?
大きく4つある。1つ目は、組織の評判や人々の心理をネガティブに操作する活動。2つ目は、実行者が存在し、資金や人的リソースを投じて相手を貶める狙いで活動していること。3つ目は、突然起こるわけではなく、事前に準備されていること。例えば選挙での影響力工作は、数ヶ月前からアカウントの準備やメディアへのアプローチが始まる。4つ目は、匿名性やサイバー攻撃、ボットなど、様々な手法を組み合わせていること。
Q. 偽情報にはどのような種類があるのですか?
大きく2つに分けられる。1つ目は「内容が完全に嘘」というもの。2つ目は「広げ方が偽物」というもの。2番目については、内容自体は正しい場合もあるが、例えば「多くの人がこう言っている」と見せかけるパターンだ。1番目は比較的見抜きやすいが、2番目は本当のこともあれば嘘のこともあり、混ぜてくることもあるので一般の人が見分けるのは難しい。
Q. 「広げ方が偽物」の具体例を教えてください
例えばアルプス処理水の件では、あるメディアがシンプソンズのキャラクターを使って、日本の総理が福島の魚を食べている画像と組み合わせ、「汚染された魚を食べている」というイメージを作った。これは一見メディアが報じているように見えるが、実際は特定の目的のために作られたメディアだった。
また、ソーシャルメディアでリポスト数やいいね数を水増しするケースもある。分析ツールで見ると、6割以上のアカウントが不自然な増幅行動をしていることがわかる。現在のアルゴリズムではエンゲージメントが多いと表示されやすくなるため、このような手法は非常に効果的だ。
Q. AIで作られた偽のインフルエンサーなども使われているのですか?
そうだ。実際に顔写真を出していて本物っぽく見えるが、よく見るとポイントが多い、つまりAIで作られた画像だということがわかる。このようなアカウントを使って影響力を持たせようとする試みもある。
Q. 日本の言論空間ではこうした偽情報の影響はどの程度ありますか?
日本語の言論空間の中では限定的だと理解している。しかし、世界に目を向けると、日本のことをよく知らない、情報に触れる機会が少ない多様な言語や考え方を持つ人々に対しては、影響を与えやすい環境にある。
例えば、アルプス処理水に関連して「魚が北海道で大量死している」という動画が拡散した場合、日本人の感覚では「数年に一度あることだ」と思うが、他の情報と組み合わされると海外では信じてしまう人が多いだろう。さらに、そうした海外の記事を見た日本人が「海外ではこう報じられている」と再び影響を受けるリスクもある。
Q. どうすれば偽情報から身を守れますか?
まず、情報を正しく開示していくことが大事だ。デバンキング(偽情報の暴露)を提供していくことも重要。
個人としては、様々な情報源にアクセスして検証してみることや、一つひとつのニュースに対して「これは本当かな」という目を持つことが必要だ。
企業や政府など偽情報の対象になった側は、即時に見解を示し、「これは正しくない情報である」とコミュニケーションすることが大事。早い段階で見解を述べ、オンライン空間上で両論併記の状態を作ることが重要だ。一方的な偽情報だけでなく、「これは違う」という意見も同じくらい目につくようにしないと、後から見た人が誤った情報を信じてしまう。
Q. 不安を感じている人への対応も重要なのでしょうか?
その通りだ。例えば、福島の放射能問題で「子供を守りたい」と考える母親の気持ちは、偽情報に影響されたものではなく、誰もが持つ自然な感情だ。こうした不安に寄り添うことも情報発信側として重要だ。
悪意を持って情報発信する側は、自分たちにとって都合の悪いことを隠し、論点を減らそうとする。だからこそ、不安や疑問に丁寧に答えていくことが大切だ。
Q. テクノロジーによる対策はどこまで進んでいますか?
様々なツールがあるが、100%の精度ではない。我々の会社では複数のツールを使いながら重層的に分析し、最後は人間の目で見て検証することを意識している。機械だけでは文脈理解などの定性的な分析が難しいからだ。
例えば、福島のお母さんたちがなぜ不安に思うのか、そのバックグラウンドまではツールでは見ることができない。こうした文脈理解のために、アナリストが事前に情報を見ていく必要がある。
Q. 企業はどのような対策を取るべきですか?
グローバル企業は広告予算を持っているが、その5%でもこの領域に使えば、かなりのことができるだろう。従来のポジティブな声を増やすマーケティングコミュニケーションだけでなく、ネガティブな声に対するリスクコミュニケーションも一緒に行う必要がある。
小さな不安の声に寄り添う情報発信を含め、全体的なアプローチが重要だ。この問題は一企業でできることではなく、社会全体で取り組む必要がある。
Q. 今後の展望について教えてください
一つの企業でできることには限界があるため、国内外のパートナーとつながり、情報をシェアしていくことが大切だ。専門人材の育成や社会への情報提供も重要な役割だと考えている。
バランスを保ちながら、様々なパートナーと協力して取り組んでいければと思う。この分野は非常にやりがいのある領域だ。