PIVOT TALK BUSINESS
「性は難関大に行くな」親・教師世代の偏見をなくせ
(32)
4,350回視聴
2024年10月16日

教育分野のジェンダーギャップ解消に取り組み、『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』を出版したYour Choice Project。地方女子を取り巻く大学進学の壁とは。 <ゲスト> 江森百花|YourChoice Project 代表 2000年生まれ、静岡県出身。静岡県立静岡高校卒業後、1年の浪...
「女性が東大を目指さない」心理的・社会的背景とは? 女子学生比率格差の実態と解決への道筋
女子学生がなぜ難関大学を目指さないのか、特に地方の女子高生になぜ東大志向が少ないのかという課題について、東京大学の学生が自ら調査・分析した結果をまとめた対談。日本特有の教育分野におけるジェンダーギャップの実態と、その背景にある無意識の偏見について深掘りしていく。


Q. 東大をはじめとする難関大学に女子学生が少ない理由は何ですか?
東大や難関大学における女子学生の少なさの大きな要因の一つはメディアの影響です。地方の女子学生たちの間で、東大に対するステレオタイプなイメージが広がっています。テレビ番組やクイズ番組、YouTubeチャンネルなどで東大生が特殊な人物として面白おかしく取り上げられることが多く、「東大にはこういう人しかいない」「そういう人でないと東大には行けない」という固定観念が植え付けられています。
周りに東大生がいない地方の女子学生たちは、こうしたメディアの描写を通してのみ東大のイメージを形成するため、自分がまさか東大に行けるかもしれないと思わないことが問題です。本来は全ての大学を選択肢として捉えた上で、地元の大学を選ぶのであれば個人の自由ですが、まずはその選択肢を揃えることが重要です。
Q. 地方の女子学生が難関大学を目指さないのは保護者の影響もあるのでしょうか?
保護者の期待や地元志向は確かに大きな影響を与えています。この問題に対するアプローチは難しい課題ですが、まずは保護者自身にこの問題を知ってもらうことが大切です。
自分がよかれと思ってしていた声掛けや子供の進路に関する意思決定が、実はステレオタイプやバイアスの影響を受けていたかもしれないと自覚してもらうことが必要です。特に焦点を当てるべきは、そもそもこの問題に関心を持たない保護者たちです。
具体的なアプローチとしては、学校の保護者面談や三者面談の機会に学校の先生から伝えてもらうこと、あるいは子供自身が親を説得する方法を子供たちに提示することなどが考えられます。例えば、浪人を反対されたり、資格取得を勧められたりするような場合に、それがステレオタイプの影響を受けている可能性を指摘し、情報を提示できるようにするのです。
Q. なぜ国際的に見ると日本だけが女性の高等教育在学率が低いのでしょうか?
世界的なトレンドでは、女性の高等教育在学率や大学進学率、4年制大学の在学率が男性より高くなっています。しかし日本だけが女性の進学率が低く、男性が高いという状況です。これは何らかの深刻なジェンダーギャップの原因が潜んでいることを示しています。
形式的な差別はだいぶ解消されてきましたが、無意識のうちに作用する偏見がまだ残っています。例えば「女子は案外行かない方がいい」「難関大は男子の方が有利」「家事は女性がやった方がいい」といった考えが、日常の些細な声掛けや進路の意思決定に影響を与えています。
また、「おしとやかで半歩下がる」といった理想の女性像を押し付けるような言動も残っています。これは女性だけでなく男性に対しても同様で、「失敗できない」「常に上を目指さなければならない」「難関大に行かなければならない」「大黒柱として家族を支えなければならない」といったプレッシャーを首都圏の中高一貫校の男子学生は強く受けています。
Q. 教育分野のジェンダーギャップを解消するために何をすべきでしょうか?
政治や経済分野の深刻なジェンダーギャップの根本に教育分野のジェンダーギャップがあるという認識がまだ浸透していません。日本の高等教育における課題と、特に難関大学での著しい女性比率の低さは、世界的に見ても日本特有の問題です。
これは大学だけでは解決できない問題で、小中学生の頃からの積み重ねが大きく影響しています。教育関係者だけでなく、教育に関わる全ての人がこの意識を持って変えていく取り組みを始めるべきです。国が教育分野のジェンダーギャップ解消を明確な目標として掲げることも重要です。
現在、理系分野におけるジェンダーギャップの解消は国の目標に含まれていますが、理系に限らず文系を含めた難関大学全体における女子学生の少なさという問題に対する取り組みや課題認識はまだ不十分です。
リーダー層に女性が少ないことがこうした問題の解決を遅らせている面もあります。現状のリーダーは難関大学出身者が多いため、難関大学の女子学生を増やすことで将来的にリーダー層の女性も増えていくでしょう。
Q. 高校生への調査はどのように行われたのですか?その難しさは?
高校生に対する調査は非常に難しいものでした。企業や大学が高校生に調査をしようとしても、学校の協力を得ることが難しいのが現状です。今回の調査では約4000人の高校生から回答を得られたことに大きな意義がありました。
調査では言葉遣いに特に気を配り、質問がニュートラルになるよう心がけました。あからさまな表現を避け、誘導的に問題を設定しないよう注意しました。高校生も調査者の意図に合わせて答えようとする傾向があるからです。
この4000人の協力が得られたのは、東大内にいる各高校の卒業生の協力があったからで、卒業生からの要請ということで高校側が協力してくれました。
Q. 高校生自身はこの問題をどう捉えていますか?
高校生自身が強く「こうしたいのにできない」と思っているわけではないことも課題の一つです。高校生が本当に浪人したいとか、遠方の大学に行きたいと思っていて、それを保護者に説得できないという状況であれば取り組みやすいのですが、高校生自体が自分のポテンシャルや選択肢の少なさに気づいていないという状態なので、取り組みが難しくなっています。
しかし、これは高校生だけの問題ではなく、人間は皆、自分が本当に何をすべきかを常に明確に理解しているわけではありません。大人でさえ転職すべきか起業すべきかわからないことがあるのと同様に、高校生が浪人が本当に自分にとって良い選択かどうかを完全に理解するのは難しいことです。
Q. 入試制度自体に問題はありませんか?
現状の入試制度、特に国立大学については、一発勝負の側面が強く、日本の場合は特に前期試験で落ちると中期・後期試験がない大学も多いという状況です。このような制度は浪人という選択肢が取れる人に有利で、取れない人にとっては不利な制度になっています。
女子学生はステレオタイプの影響で浪人が難しい場合が多く、また男子学生でも金銭的な事情で浪人ができないケースがあります。こうした選択肢が取れない人でも難関大学を受験できるよう、より良いマッチング方法に変わっていくことが望ましいでしょう。
一発勝負の入試ではさまざまな事情が重なるため、より公平な制度が必要です。1年間のコストや偏見などの理由で浪人が選択できない人とそうでない人の間の格差を是正する必要があります。
Q. 高校生へのサポートとして何を提供していますか?
「ユナチョイスプロジェクト」では、地方の女子高生向けにメンタリングコミュニティを用意しています。そこでは難関大学の女子学生の話を聞いたり、様々な職業の世界の話を聞いたりする機会を提供しています。
また、浪人を考えているけれども反対されている場合や、地元を離れたいけれども反対されている場合などには、保護者を説得するためのデータや方法を提供しています。本人だけでなく、プロジェクトのメンバーと一緒に説得する体制を整えています。
高校生が自分がそういう環境に置かれていることを知り、それを助けてくれる人が世の中にたくさんいることを知ることが大切です。高校生に向けてさまざまなサポートを提供している人たちがいるので、そういったリソースに積極的にアクセスすることで自分の世界が広がる可能性があります。