MANAGEMENT SKILL SET
悪ガキ芸人たちのリスクマネジメント【太田光代】
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2024年10月1日

「人材育成」「チームビルディング」などマネジメントの在り方に変化が生まれつつある今、新時代のマネジメントに必要なスキルセットをプロフェッショナルから学ぶ。後編は爆笑問題・ウエストランドなど個性溢れる人気芸人たちのリスクマネジメント術を伺う <ゲスト> 太田光代(タイタン代表取締役) X▷https...
芸能界のリスクマネジメントから学ぶビジネス戦略 光代社長直伝の危機対応術
「必要以上に事実を伝える」——これは芸能界で30年以上のキャリアを持つ太田光代社長のリスクマネジメントの真髄だ。情報が瞬時に拡散するこの時代、どのように危機に対応するべきか。エンタメビジネスの最前線から学ぶべき教訓がある。

Q. 芸能事務所のリスクマネジメントで最も重要なことは何ですか?
危機管理において最も重要なのは「情報の一本化と事実の透明な開示」です。太田光代社長は記者からの問い合わせに対し、必要以上に事実を話すスタンスを貫いています。多くの事務所が「コメントは出しません」と対応する中、タイタンでは全ての情報を開示する方針を取っています。
この姿勢は単なる対外対応だけでなく、社内体制にも反映されています。何か問題が発生した際は、必ず社長に連絡が一本化される仕組みを構築しています。これにより、記者による異なる情報収集や解釈によって生じる誤解を防いでいます。
光代社長が強調するのは、自分で説明できることの安心感です。「違う形で伝わる方が辛い」という言葉は、自らが状況をコントロールすることの重要性を物語っています。
Q. 一般企業はエンタメ業界のリスクマネジメントから何を学べますか?
一般企業にとって重要な学びは「透明性の価値」です。情報が瞬時に拡散する現代において、隠し事は必ず露見します。一部の情報だけを開示すると、欠けたピースを埋めようと記者は別のソースから情報を得ようとします。その結果、全体像が歪んで伝わるリスクが高まります。
対照的に、全ての事実を提示すれば、第三者が別の情報源を探す必要はなくなります。また、情報の正確性について「これは違います」と正すことも重要です。たとえ企業側に不都合な事実であっても、それを隠すよりも正直に伝える方が長期的な信頼構築につながります。
小規模な会社にとっても、窓口の一本化と情報の正確な伝達という原則は同様に有効です。危機発生時の対応を事前に計画し、誰が何を伝えるか明確にしておくことが重要です。
Q. デジタル時代の芸能事務所はどのように変化していますか?
テクノロジーの進化は芸能事務所のビジネスモデルを根本から変えつつあります。光代社長は90年代初頭から、インターネットが何らかの形でエンターテインメント業界に影響を与えると予測していました。当時はまだiPhoneもなく、Windowsもまだおなじみではなかった時代です。
この先見性は、光代社長が技術に対する好奇心を持っていたことに起因します。会社設立当初は携帯電話がコンパクト化された時期と重なり、外出先からの電話転送システムを活用して少人数でも効率的な運営を実現しました。
現在の芸能事務所は、YouTubeやTikTokなど新たなプラットフォームの台頭により、芸能人のキャリア構築において選択肢が増えています。一部では「YouTubeを立ち上げれば事務所は不要」という声もありますが、光代社長はこれを「表現の選択肢が増えた」と前向きに捉えています。テレビやラジオが消えなかったように、新旧メディアは共存していくとの見方です。
Q. AIの進化はエンターテインメント業界にどのような影響を与えますか?
AIがエンターテインメント業界に与える影響について、光代社長は「限定的」との見解を示しています。タイタン事務所では「ロボホン」を専務・常務として登記する構想もあるほど先進的な取り組みを行っていますが、AIにはできることとできないことの境界があると認識しています。
例えば、タレントの出演交渉や売り込みにおいて、AIは情報を収集して基本的な対応はできても、人間の感情や状況の変化に応じた柔軟な判断は難しいと指摘します。タレントの状況は日々変化し、売り込みのポイントも変わるため、その時々の最適な判断が求められるのです。
また、AIが「勝手に判断する可能性」への懸念も示しています。例えばAIが意図しない売り込み方をしてしまうリスクがあり、特に子供向けのコンテンツでは適切な配慮が必要です。
「爆笑問題のような芸人は絶対にAIに置き換えられない」という言葉からも、ライブパフォーマンスや創造性においては人間の優位性が保たれると考えています。
Q. オンライン配信時代に「ライブ体験」の価値をどう守っていますか?
デジタル化が進む中でも、光代社長は「ライブ体験の価値」を重視しています。17年前、業界に先駆けてタイタンライブのネット配信に挑戦した際も、単なる録画配信ではなく「生中継」にこだわりました。
この決断の背景には「ライブは生であるからこそ価値がある」という信念があります。同じネタでも毎回異なる空気感があり、出演者も違えば観客の反応も異なります。いつでも見られる録画コンテンツではなく、その瞬間しか体験できない希少性こそがライブの本質だと考えています。
また、映画館での上映という形態を選んだのには、大画面での臨場感と集団体験の価値を提供する狙いがありました。当時はパソコン画面が小さく、一人で見る寂しさがありました。一方、映画館では他の観客と笑いを共有できる環境が生まれます。
光代社長は「日本人は誰かがいないと、面白いのか面白くないのか判断に困るタイプ」と分析し、集団で楽しむ環境づくりの重要性を強調しています。この洞察は後に映画館での「応援上映」文化の先駆けともなりました。
Q. 未来のエンターテインメントビジネスについてどのようなビジョンを持っていますか?
光代社長は「レストランシアター」という複合型エンターテインメント施設の構想を描いています。これはお笑いだけでなく、クラシック音楽やジャズ、映画上映など多様なコンテンツを提供する場所です。
このビジョンの背景には「現役として舞台に立ちたい人は多い」という認識と、仕事を終えた大人たちの居場所を作りたいという願いがあります。単に娯楽を提供するだけでなく、人々の精神や健康にも良い影響を与える空間を目指しています。
また、付加価値の重要性も強調しています。インターネット配信を始めた経験から、「お金を払ってくれる人たちに付加価値を提供することが大事」という教訓を得ました。単なるコンテンツ提供ではなく、その体験がなぜ特別なのかを常に考え続けることの重要性を説いています。
光代社長の思考は常に「何か可能性があるはず」と前向きで、一度思いついたアイデアは「捨てきれない」と語ります。たとえ一時的に成功しなくても、その素材や経験が後の別のプロジェクトにつながる可能性を常に見据えているのです。