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石破茂は首相らしくない【総裁選】
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2024年9月25日

日本に住む外国人が、「ニッポン」の文化や経済をテーマに議論。どうすれば日本がもっと良くなるか?を考えていく番組。 <ゲスト> ジョセフ・クラフト|経済アナリスト 1986年カリフォルニア大学バークレイ校卒業後モルガン・スタンレーNYKに入社。 1987年同社東京支社に着任し為替と債券トレーディング...
14人の候補の政策論争が始まる―麻生氏と菅氏の動きと新リーダーの条件

Q. 今回の自民党総裁選の特徴は?
今回の自民党総裁選は14名もの候補者が立候補を表明する可能性があり、かつてない乱立状態になっている。岸田政権の支持率低下に伴い、次期総理への期待が高まる中、派閥解体の影響で様々な政策論争が活発化している。特に注目されるのは麻生太郎氏と菅義偉氏という元総理経験者の動きだ。
菅氏はすでに小泉進次郎氏への支援を明確にし、応援演説にも立っている。一方、麻生氏は石破茂氏と小泉進次郎氏の両候補に否定的な見方を示しているという。麻生派関係者によれば、麻生氏は「石破氏は総理の顔ではない」「小泉氏はまだ子役で俳優になりきれていない」との見解を持っているようだ。
本音を分析すると、麻生氏としては「小泉氏は第二期菅政権になるから嫌だ」「石破氏は自分が総理の時に引きずり下ろされた幹部候補だから嫌だ」という理由が推測される。このままだと麻生氏の影響力が低下するため、どのように動くかが注目される。
Q. 自民党党内の票の動向はどうなっている?
自民党内では、重鎮たちの指示によって票が動く傾向がある。前国会議員の宮崎謙介氏によれば、派閥の長が「あの候補に入れよう」と言えば、多くの議員がそれに従う圧力がある。最近でも野田聖子氏が「菅氏に推薦人を剥がされた」と発言するなど、影響力の強さがうかがえる。
ただし、元総理らの長老は表立った介入が批判を招くことを警戒している。自分たちが応援する候補の支持率が下がらないよう、これまでとは異なる応援の仕方を模索しているという。
現時点では菅派の方が勢いがあると見られているが、麻生派も河野太郎氏や茂木敏充氏、上川陽子氏といった候補者を検討している様子だ。上川氏の突然の参戦も、麻生氏の働きかけがあったのではないかと推測されている。
Q. 候補者の経済政策ではどのような論点があるか?
現在、経済政策に関する議論では、年末調整の廃止や増税ゼロ、解雇規制などが取り上げられている。特に小泉進次郎氏が主張する解雇規制の緩和については、セーフティネットの話が抜け落ちていると指摘されている。ドイツのように、セーフティネットをきちんと整備した上で解雇規制を緩和するのであれば理にかなうが、セーフティネットなしで解雇規制だけを緩和すれば、安倍政権第一期のときのように大反発を招く恐れがある。
小泉陣営は、大企業に対してリスキリングと再就職を義務付ける案を検討しているようだが、これは解雇規制緩和と矛盾する面もある。企業側からすれば「従業員を残すためのリスキリングなのに、なぜ同時に解雇規制緩和を主張するのか」「リスキリングは言われなくても自社でやる」という反発も予想される。
また重要な経済政策としては、あまり選挙では触れられていない原発再稼働の問題がある。特に中東情勢が不安定化する中、エネルギー政策は喫緊の課題であり、安全性を確保しつつどのように原発再稼働を進めていくかという議論が必要だ。
Q. 金融政策に関する議論はどうなっているか?
金融政策に関する議論は、これまでの総裁選ではあまり表に出ていないが、実は非常に重要なテーマだ。安倍政権時代は、安倍首相と黒田日銀総裁の間に「アコード」があり、政府と日銀の協調関係が保たれていた。しかし、上田新総裁の下で日銀は金融政策の正常化を進めようとしており、政策金利が1%や1.5%に上がれば、財務省の借金返済負担が増大するなど様々な課題が生じる。
注目されるのは「誰が上田総裁とうまくやれるか」という点だ。高市早苗氏や河野太郎氏は日銀の独立性に積極的に口を挟みたがる傾向があるのに対し、その他の候補者は一定の距離感を保つと見られている。
外国投資家は日本の金融政策を非常に注視しており、この点では候補者の政策の違いが明確になる。一般的に投資家は、金融政策の正常化を支持する傾向があり、財政出動より財政規律を重視する候補者を評価する傾向がある。しかし、こうした金融政策の議論は党員にとって身近に感じにくいため、各候補者はあまり深く言及していない。
Q. 外交面ではどのような議論があるか?
外交面では、誰がアメリカ大統領とうまく渡り合えるかという点が重要だ。安倍政権では、安倍首相とトランプ大統領の関係が日米関係を支えた面があった。首脳同士の相性は、緊急時に極めて重要な要素となる。
特に、次期アメリカ大統領がトランプ氏かハリス氏かはまだわからないが、フットワークが軽く、相手の懐に入れる総理が望ましい。小泉進次郎氏や小林鷹之氏のような若手は「じじ殺し」のスキルがあり、トランプ氏との交渉でもうまく立ち回れる可能性がある。
また、アメリカだけでなく、アジア諸国との関係も重要だ。特に韓国や中国との外交、そしてインドネシアなどASEAN諸国との関係強化も課題となっている。インドネシアは成長市場であり、日本企業との繋がりも強いため、構造的な関係強化が求められる。
Q. 日本とアメリカの政治資金の違いは?
日本とアメリカでは政治資金に関する考え方に大きな違いがある。アメリカでは選挙に莫大な資金が使われ、2020年の大統領選挙ではバイデン候補が2400億円、トランプ候補が1600億円もの資金を調達して使い切ったという。
アメリカの政治資金規制で特徴的なのは、企業献金が禁止されていることと、使途の透明性が確保されていることだ。企業は政治献金ができず、経営者が従業員に特定候補への投票を指示することも違法とされている。これは企業と政治の癒着防止という面もあるが、従業員全員が経営者と同じ政治的立場とは限らないという考えに基づいている。
一方で、アメリカでは政治資金の使途は1ドル単位まで報告義務があり、透明性が確保されている。これに対し日本では、使途に厳しい制限がある一方で、透明性が低いため「裏金ではないか」と疑われやすい。
また、アメリカには個人が政党や母校に寄付する文化があるが、日本にはそうした文化が薄い。これは政権が変わっても生活があまり変わらないと感じる日本人の政治に対する距離感が影響しているかもしれない。
Q. 新しい総理に期待することは?
新しい総理には若い世代のリーダーが望まれる声がある。世代交代を進め、明るい未来を作るには若い世代の力が必要だという意見だ。
一方で、バランス感覚も重要視されている。若手が総理になるなら官房長官は経験豊富な人材を、ベテランが総理なら若手を閣僚に起用するなど、バランスのとれた人事が求められる。
また、派閥にとらわれない人事や、専門性を重視した適材適所の配置も期待されている。「USBがわからないIT担当大臣」のような状況は避け、日本の停滞感を打破するリーダーシップが求められている。
今回の総裁選では多様な候補者が政策を競い合うことで、日本の政治への関心が高まり、投票率の向上にも繋がることが期待されている。