
火星に生命体いる?
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2024年9月27日
生命の起源を研究する宇宙生物学者、小林憲正氏をゲストに迎えたEXTREME SCIENCE。宇宙に生命の起源を探る理由、地球外に生命がいると語る理由とは。 <ゲスト> 小林憲正|宇宙生物学者 博士(理学)。横浜国立大学名誉教授。 東京大学大学院理学系研究科博士課程終了後、横浜国立大学講師などを経て...
地球外生命は「ポコポコできている」?小林憲正が語る宇宙生物学の最前線
地球外生命体はどのようにして誕生するのか。宇宙のどこかに知的生命体は存在するのか。そして人類の未来はどうなるのか。宇宙生物学の第一人者が語る生命の起源と未来の可能性について、Q&A形式でまとめました。

Q. 宇宙には生命が存在すると考えられますか?
私は以前から宇宙のあちこちで生命が誕生していると考えています。もちろん、まだ誰も地球外生命を見つけていないので、「本当にそうか」と言われて証拠を出せと言われたら困りますが、心情的には宇宙のあちこちで生命がポコポコと誕生していると思っています。
天文学者の立場から考えると、宇宙には星が山ほどあり、それらの星には惑星があることも分かってきました。そのような状況で、地球でしか生命が生まれないというのは天文学的な考え方からすればあり得ません。地球は特別な星ではなく、太陽も平凡な恒星の一つです。似たような星は山ほどありますし、生命にとってもっと良い環境の星もたくさんあるでしょう。
Q. RNAワールド説について、現在の見解を教えてください
RNAワールド説は、1970年代にRNAの一部が触媒機能を持つことが発見されたことから生まれました。RNAは遺伝情報を担うと同時に触媒作用も持つという特徴から、生命の起源において重要な役割を果たしたと考えられています。
しかし、現在は「原理主義的RNAワールド」とも言うべき考え方が流行っていて、「何もないところからいきなりRNAが現れて、それで生命になった」という議論になっています。これは少し問題があります。
地球では確かにRNAワールド的な時期があったかもしれません。その証拠として、現在の酵素の中にもRNAの破片を使っているものが結構あります。ただし、それは生命の最初の段階ではなく、途中のある時期にあったのではないかと考えています。
RNAは非常に複雑な分子で、ゼロから自然に作るのは非常に難しいことです。天文学者の戸谷友則先生の計算によると、太陽のような星が10の40乗個ないとRNAができる星が1個もできない計算になります。そう考えると、生命の起源にはもっと別の経路があったのではないでしょうか。
Q. 「ガラクタワールド説」とはどのような考え方ですか?
ガラクタワールド説は、きれいに整ったRNA分子やタンパク質が最初から存在したのではなく、様々な分子が雑多に混ざった状態から生命が誕生したという考え方です。
この考えの発端となったのは、アミノ酸の研究をしていた時に発見したことです。アミノ酸単体ではなく、よく分からない付録がくっついたアミノ酸が自然にできることが分かりました。それらは結構大きな分子なのですが、アミノ酸として使える部分はわずかでした。そういったものを「ガラクタ分子」と呼んでいます。
これらのガラクタ分子は非常に多様性があり、それぞれは優れた機能を持っていませんが、集合体として見ると触媒機能などを持っています。そのようなガラクタ分子を様々な「袋」に入れて、そこで競争させ進化できるような環境があれば、現在の生命の前段階となるものが生まれた可能性があります。
現在の生物が使っているDNA、RNA、タンパク質という組み合わせは非常に整っていますが、それ以前にはもっと多様な分子システムがあったかもしれません。それらは現在の生物には残っていませんが、生命の初期段階では重要な役割を果たしていたと考えられます。
Q. イーロンマスクの火星コロニー計画についてはどう思いますか?
月でまず練習して、その後に火星に行くというのは将来的には実現すると思いますが、マスク氏には急いで火星に行ってほしくないですね。なぜなら、地球の生物を火星にばらまいてしまうと、火星に存在する可能性のある生物を探せなくなってしまうからです。
私は個人的に火星に生命がいると思っています。過去の火星には水がたくさんあったことが分かっていますし、38億年前頃には地球と同じように生命が誕生していた可能性があります。地球と同じペースで考えると単細胞生物くらいまでの進化が予想されますが、常識は裏切られることもあります。
現在の火星表面は紫外線などによって有機物が破壊される環境ですが、地表から2メートル以上潜ったところには生命が存在する可能性があります。また、火星の地下洞窟なども生命が存在する候補地です。
NASAは火星生命探査に対して慎重なアプローチをしていますが、技術的には中国が先行してしまう可能性もあり、そのことを心配しています。
Q. なぜ宇宙生物学を研究するようになったのですか?
私は元々化学の研究者で、海と酵素の関係について研究していました。海洋中の有機物を調べる過程で、生命の起源が海にあるという話を知り、興味を持ちました。
博士号取得後、日本ではこの分野の研究をする場所がなかったので、アメリカで生命の起源の研究を始めることになりました。特に海底熱水噴出孔が生命の起源の場所であろうという考えに惹かれました。
海底熱水噴出孔には硫化水素やメタン、水素などのエネルギー源が豊富にあり、光合成に頼らなくても生物が存在できる環境があります。昔の地球は紫外線が強く表面は過酷な環境だったと考えられるので、海底は生命が誕生するには良い場所だったと思います。
Q. 地球外生命探査のためにどのような計画が進んでいますか?
木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスが、生命が存在する可能性のある天体として注目されています。特にエンケラドゥスでは、海底で少なくとも100℃程度の温泉が湧いていることや、有機物が存在することが分かっています。
現在、タイタンに向けて「ドラゴンフライ」という探査機が計画されており、2030年代には着陸する予定です。タイタンは生命が存在する可能性もありますが、もし生命がなかったとしても、生命が誕生する一歩手前の環境が残っている可能性があります。地球では生命誕生の過程は失われていますが、タイタンでは生命誕生前の環境が保存されている可能性があるのです。
また、日本の「はやぶさX」という計画も検討されており、エンケラドゥスから試料を持ち帰ることも将来的には可能かもしれません。エンケラドゥスでは海底でできたものが氷の割れ目から噴出しているので、それを捕獲して持ち帰る技術も開発されています。
Q. 地球外生命が発見されたら人類の世界観はどう変わると思いますか?
地球外生命が発見されれば、私たちは宇宙の中での一つの生命の形であるという認識が広まるでしょう。そうなれば、地球上での争いの意味が相対化され、平和な方向に進む可能性があります。
また、もし地球型生命とは異なるシステムを持つ生命が発見されれば、DNAやRNAに代わる遺伝システムなど、新たな可能性が見えてくるかもしれません。それは実用的にも大きな意味を持つでしょう。
宇宙で私たちと同レベル、あるいはそれ以上の知的生命体がいるという認識が広まれば、地球上での争いよりも宇宙全体での人類の位置づけを考えるようになるのではないでしょうか。