PIVOT TALK BUSINESS
世界よ日本のチバ・シティを知っているか?
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2024年9月11日

軍事評論家の小泉悠氏と共著『サイバースペースの地政学』を執筆したサイバーセキュリティの専門家、小宮山功一朗氏が登場。データセンターと地政学の深い関係とは。 <ゲスト> 小宮山功一朗|サイバーセキュリティの専門家 博士(政策・メディア)。慶應義塾大学SFC研究所 上席所員。一般社団法人JPCERTコ...
「データセンターは仲間を呼ぶ」- インターネットの集積地と新たなデジタル風景
インターネットの世界は、私たちが当初思い描いていたような分散型の構造から、集中型へと変化している。ユーザーが意識することなく使っているネットサービスも、実は物理的な場所に集中して存在している。サイバーセキュリティの専門家・小宮山功一朗氏は、その実態を調査するため、データセンターが集積する千葉県印西市を訪れた。今回は、その発見と洞察について、Q&A形式でまとめる。

Q. なぜデータセンターを実際に見に行こうと思ったのですか?
サイバーセキュリティの仕事をしていると、多くの事象が「見えない世界」で起きていることに気づきます。高度なサイバー攻撃は気づかれることすらなく、私たちが認識できる攻撃もすべてデジタルの中で発生しています。
しかし、ウクライナとロシアの紛争など安全保障上の危機が起きると、現実世界でインフラが破壊され、データセンターにミサイルが打ち込まれ、通信施設に兵士が突入するといった事態が発生します。そうした状況を目の当たりにして、「では日本のデジタルインフラはどうなっているのか」という疑問から調査の旅に出たのです。
Q. データセンターが集まる千葉県印西市とはどんな場所ですか?
印西市は東京と成田空港の中間あたりに位置する地域です。かつては田中角栄政権時代に団地が造られ、その後千葉ニュータウンとして首都圏で働く人々のベッドタウンにしようという計画がありましたが、どちらもあまり成功しませんでした。
しかし約20年前、企業がデータセンターを建設し始め、それが呼び水となって次々とデータセンターが集積するようになりました。現在、千葉ニュータウン駅を降りると右にも左にも巨大なデータセンターが立ち並ぶ光景が広がっています。
Q. データセンターが集積する理由は何ですか?
データセンターに必要な3つの要素があります。第一に安定した電力供給、第二に高速なインターネット接続、そして第三に広い土地です。印西市エリアはこれら3つの条件をすべて満たす数少ない地域の一つなのです。
初期に日本の金融機関が東京のバックアップ拠点として選んだ後、近年ではGoogleやAmazonといった外資系企業も進出しています。外資系企業は日本企業以上に資金力があり、より大規模なデータセンターを建設しています。
Q. データセンターの内部はどのような環境なのですか?
データセンター内部は人間にとって過酷な環境です。まず寒いことが特徴で、気温は20〜23℃に設定されています。また、一般的なイメージと異なり、静かな場所ではありません。コンピューターが稼働し、それを冷却するためのファンが回り、大型空調も稼働しているため非常にうるさい環境です。
さらに、地下や屋上には非常用のバックアップ発電機や特殊な空調設備があり、全体として非常に大規模な施設となっています。人間にとっては最悪の環境かもしれませんが、コンピューターにとっては最適な環境なのです。
Q. なぜデータセンターが集まる「仲間を呼ぶ」と表現されるのですか?
一度ある場所にデータセンターが建設されると、次々と他社のデータセンターも集まってくる現象があります。例えば北海道石狩市では、さくらインターネットのデータセンターができた後、周辺に新たなデータセンターの建設が始まっています。
これは「データグラビティ」と呼ばれる概念で説明できます。例えば個人がAppleの製品を使うなら、パソコン、タブレット、時計など全てApple製品を揃えた方が便利なように、データも一か所に集中して管理した方が効率的です。
企業としても、例えばAmazonのデータセンター近くに自社のデータセンターを建設することで、AWSを使用する顧客に高速サービスを提供できるといったメリットがあります。こうした理由から、データセンターは一度できると次々と「仲間を呼ぶ」ようになるのです。
Q. インターネットは分散化されているイメージがありますが、実際は集中しているのですか?
かつてのインターネットは分散型コンピューティングと呼ばれ、世界中のあらゆる場所にコンピューターがあり、データが分散し、一人ひとりがデータの決定権を持つという理想がありました。
しかし現実を見てみると、私たちが「インターネットを使う」と言っているのは、GoogleやApple、Netflixなど10社にも満たない企業のサービスを利用していることがほとんどです。スマートフォン内の写真ですら、実際にはデータセンターに預けられています。
2024年の現在、私たちが生きているサイバー空間は、かつて思い描いていたものとは全く異なる集中型に変化しています。データセンターを実際に見ることで、この集中化の現実を目の当たりにすることができるのです。
Q. データセンターの運営にはどのような人材が関わっているのですか?
データセンターの運営には、3つの専門分野の人材が必要です。まず、ネットワークを担当するコンピューター技術者がいます。次に電力を担当するエンジニアがいて、そして施設・土地管理の担当者がいます。
興味深いのは、この3つの専門分野の人材はそれぞれ特徴が異なることです。例えばネットワーク担当者は典型的なIT技術者の特徴を持ち、電力担当者は物静かで堅実なタイプが多く、施設管理担当者は活発でコミュニケーション能力の高い人材が多い傾向があります。
各データセンターによってこの3つの人材の配分が異なり、それがデータセンターごとの特色を生み出しています。
Q. 実際にデータセンターを見て、専門家として新たな発見はありましたか?
コンピューター技術者として、現場に行かなければ分からないことが多くあることを実感しました。通常のIT業務はコンピューター画面上で完結しますが、実際に海底ケーブルを敷設する船や大型冷却装置を目にすると、その規模の大きさに圧倒されます。
特に印象的だったのは、インターネットという無形のものが、実は巨大な物理インフラによって支えられていることです。コンピューター作業は手首から先で完結しますが、データセンターは人間が集団で24時間365日稼働させ続けなければならない存在なのです。
Q. 今後のデータセンターや国際連携についてどう考えていますか?
現在、海底ケーブルなどのインフラ整備は、GoogleなどのGAFAが主導するケースが増えています。従来の通信事業者が所有・管理していたインフラが、グローバル企業の手に渡りつつあるのです。
このような状況では、企業の単独の力だけでは対応が難しくなっています。国際的な重要インフラについては、しっかりと国内で管理する体制を整えるべき時代になっていると考えます。