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生成AIバブルの後 日本は米国に勝つ
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2024年9月4日

「日本は優れた成果を上げる準備が出来ている」と語るのは元Salesforceのエンジニアで現在はZEALSエンジニアのグレッグ・ベネット氏。日本文化に見出した勝機とは。
「おもてなし文化」が日本のAIを強くする—元セールスフォースのプロンプトエンジニアが語る理由
日本の生成AI(ジェネレーティブAI)は世界に勝てるのか?この問いに対し、世界的企業セールスフォースで世界初のCRM向け生成AI「アインシュタインGPT」のプロンプトエンジニアリングを主導し、現在は日本のAI企業ZEOSに移籍したグレッグ・ベネットが興味深い見解を示しています。彼は日本の「おもてなし」文化こそが、グローバルな生成AIマーケットで日本に独自の強みをもたらすと考えています。

Q. なぜシリコンバレーを離れて日本に来たのですか?
シリコンバレーでは生成AIの開発が急速に進んでいますが、私が注目したのは日本、特に東京における生成AIへのアプローチの違いです。シリコンバレーでは「いかに強力なモデルを作るか」「いかにGoogleやAmazonに勝つか」という技術競争に焦点が当てられています。まるで軍拡競争のようです。
一方、日本では生成AIを社会にどう応用するかに重点が置かれています。新しいAIツールが登場すると、「ゴミ収集をどう改善するか」「バスの経路をどう最適化するか」「富士山近くにスマートシティをどう構築するか」など、具体的な応用方法が議論されます。
私は応用研究の背景を持つため、日本のこの実用的なアプローチに非常に共感しました。新しい技術をただ開発するのではなく、それをどう社会に役立てるかを考える姿勢に魅力を感じたのです。
Q. 日米のAI開発文化の違いはどこにあると思いますか?
日本の近代史を学ぶと、明治時代に日本が世界を見渡し、他国の教育システムや政治制度など様々な分野で「最良」と思われるものを取り入れ、それを日本流に改良して高めてきた歴史があります。
現代でもこの傾向は続いています。例えば日本のウイスキーは、元々日本の伝統ではなかったものを取り入れ、今では世界で高く評価されています。あるいは日本のパティシエがパリのコンテストでフランス人パティシエを打ち負かすようなケースも見られます。
日本には、他の文化から何かを取り入れ、それを独自の方法で発展させ、高めていく能力があります。生成AIにおいても同様のアプローチが取られており、この技術をどのように日本の生活を向上させるために応用できるかという視点が強いのです。
Q. 日本はAI競争で勝てると思いますか?
それこそが日本が特異な強みを持つ領域だと考えています。現在の状況は、2008年のモバイルアプリブームに似ています。当時、誰もがアプリを作っていましたが、「なぜアプリが必要なのか」という理由は必ずしも明確ではありませんでした。
現在も多くの人が生成AIを使おうとしていますが、「なぜそれを使うのか」という問いに答えられていない場合が多いです。一方、日本のアプローチは「生成AIを使わなければならない」から始めるのではなく、「解決すべき問題は何か、そしてそれを解決するために生成AIをどう活用できるか」という視点です。
また、日本には歴史的に他国から学び、それを次のレベルに引き上げる能力があります。生成AI技術も同様に、単に問題を解決するだけでなく、誰も想像しなかった場所にその解決策や体験を引き上げることができるでしょう。
Q. ZEOSで取り組んでいる「おもてなし」とAIの融合について教えてください
ZEOSでは「おもてなしを世界に届ける」という理念を持っています。おもてなしとは、完璧なサービス体験において顧客のニーズを先読みしながらも、相手の自由や意思を尊重する姿勢です。
「これをあなたに売りたいですが、あなたに合っていますか?」「これを提供するのは今が適切なタイミングですか?」というように、相手との関係や状況を理解し、最適なタイミングで最適な対応をする—これが「おもてなし」の本質です。
AIの開発においても同様の考え方を適用しています。多くの技術者はAIをより人間らしくすることを目標としていますが、私たちの目標はユーザーが快適に感じることです。これがZEOSでのプロンプトエンジニアリングに取り入れようとしている「おもてなし」の核心的な原則です。
Q. ChatGPT-4Oを体験してどう思いましたか?「おもてなし」の視点からはどうですか?
ChatGPT-4Oのデモを見ましたが、非常に会話的で、ある種のフレンドリーさや親しみやすさを感じました。しかし、私の理解する「おもてなし」の概念とは異なります。
デモでは「相手に好かれたい」という意図が強く感じられました。しかし、おもてなしにおいて「相手に好かれようとする」ことに焦点を当てると、実は相手ではなく自分自身に焦点を当てていることになります。これはおもてなしの本質ではありません。
また、私は子どもたちがこのようなAIと交流することで、AIが自己中心的な方法でスキルを見せびらかそうとするような、不健全な関係を築いてしまうことを懸念しています。それは相手のことを考える「おもてなし」ではなく、自分のスキルを誇示しようとする姿勢です。
Q. 日本語を学ぶことは「おもてなし」の理解にどう影響していますか?
言語と文化の関係は非常に深いです。日本語の特徴、例えば敬語の使い方は、日本文化における人間関係や社会構造の理解に直結しています。
初めて日本語を学んだとき、常に「です・ます調」の丁寧な言葉を使っていました。しかし、ホストファミリーからは「そのような話し方を続けると冷たく感じる」と言われました。丁寧すぎる言葉遣いは、距離を縮めようとしていないという印象を与えるためです。
この経験から、言語的な距離感と人間関係、そしてその距離を縮めたり操作したりすることで、どのように相手との関係を表現するかを学びました。日本語では、言語を通じて周囲との関係性を積極的に構築できるのです。
言語を学ぶことは、その文化に埋め込まれた「おもてなし」の概念を吸収することでもあります。日本語の表現や語彙に「おもてなし」の精神が根付いているため、言語を学ぶことでそれらを自然と身につけることができるのです。
Q. AIの将来と「おもてなし」の関係をどう考えていますか?
将来的には、プロンプトエンジニアリングは自動化されていくでしょう。しかし重要なのは、生成AIをどのように応用し、実際の問題解決に役立てるかです。
日本の「おもてなし」の考え方—相手を中心に考え、状況を理解し、最適な対応を提供する—は、AIの人間中心の開発と親和性が高いです。AIを単なるツールとしてではなく、人々の生活をより良くするための手段として捉え、具体的な問題解決に応用していく姿勢が重要です。
この分野で成功するのは、技術だけを追求する企業ではなく、技術をどう人々の役に立てるかを考え、それを実践できる企業でしょう。そして日本の「おもてなし」文化はまさにそのような思考の土台となり得るのです。