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日本の漫画はマーベルに勝てるのか
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2024年8月29日

『SPY×FAMILY』や『チェンソーマン』など数多くのヒット作を手がけた漫画編集者・林士平氏が登場。紙からデジタルへと変化する時代にヒットを生み出す漫画編集者の思考とは。
漫画編集者が語る日本の漫画が世界で愛される理由とは?
日本の漫画は世界中で人気を集めていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。漫画編集者の林士平氏に、日本の漫画の海外展開や、日本の漫画家の創作姿勢、そして表現の自由について聞きました。
Q. 日本の漫画は世界の漫画と何が違うのですか?
基本的な違いとしては、海外の漫画はフルカラーが主流である点があります。また、日本の漫画は小回りが効くという特徴があります。しかし、それ以外の部分は各作家の個性の違いでしかないという印象です。
Q. 日本の漫画は世界で圧勝していると言えるのでしょうか?
何をもって「圧勝」と言うかによります。例えばマーベルのようなIPビジネスを考えると、映画やグッズも含めた展開では必ずしも圧勝とは言えないでしょう。
Q. 日本の漫画はマーベルのようなビジネスを目指すべきですか?
そもそも特質が違うので、日本の漫画は日本の漫画として面白いものを突き詰めていくべきです。マーベルのようなものを目指すと、結局本家と違うものになってしまいます。そういう方向性を目指す人がいるのは構いませんが、基本的には自分たちの個性を大切にするべきでしょう。
Q. 漫画家は映像化やメディア展開を最優先に考えているのでしょうか?
多くの漫画家は「面白い漫画を書きたい」「多くの人に読んでもらいたい」という価値観を優先しています。アニメ化やハリウッド映画化はその途中経過にあるもので、それを最終目標として書いている人はそれほど多くないと思います。マーベルも最初は自分たちがかっこいいと思うキャラクターを描いていただけで、それが後に世界的な展開につながったのだと思います。
Q. 編集者として映像化はうれしいですか?
もちろん、作家が望んでいればうれしいニュースです。ただし、映像化されると脚本や宣伝などの打ち合わせが増え、関係者も増えるので「うれしいけど大変」という印象です。作家が望んでいないのに映像化するのはNGですが、作家が希望するなら可能な限り良いものにしようと取り組みます。
Q. 漫画原作の映像化で最も大きな課題は何ですか?
複合的な問題があります。漫画、実写、ドラマ、アニメなど、それぞれのメディアには独自のルールがあります。漫画で大事なことが映像では表現できないこともあるので、そこをどう調整するかが重要です。また、業界によって価値観も違います。このような問題を解決するためには、きちんとしたコミュニケーションが必要です。
また、日本では放送後に契約を結ぶことが多いのですが、最初に契約を結ぶ文化に変わった方がいいという意見もあります。これは比較的簡単に改善できる部分だと思います。
Q. 人口減少が進む中で、漫画ビジネスは世界に広げていく必要がありますか?
人口減少は統計学的にほぼ確実なので、それを前提に考える必要があります。幸い、漫画は絵というメディアなので言語を超えやすい特性があります。日本の人口が減っても、世界のお客さんに届けることで作家さんに還元できる仕組みを作っていくべき時期だと思います。
Q. 世界に受け入れられるには日本らしさが必要ですか?
必ずしも「日本らしさ」が必要というわけではありません。例えば「ベルセルク」のようなファンタジーや「エヴァンゲリオン」のようなSF作品も世界に届いています。京都を舞台にした青春物語も「日本らしい」と思いますし、戦隊もの、巨大ロボットものも「日本らしい」と思います。
重要なのは、まず日本の読者に刺さる作品を作ることです。日本の読者は若い作品も見つけて育ててくれる素晴らしいお客さんなので、そこに刺さった後で「これを全世界に届けるにはどうすればいいか」と考えればいいのです。
Q. 海外のどの国で特に日本の漫画が人気なのですか?
フランスは特に漫画が好きな国民性があり、アニメと漫画のファンが多い国です。フランスの書店に行くと、驚くほど多くの日本の漫画がフランス語で出版されています。マニアックな作品も多く翻訳されており、「この作品もフランス語で出ているの?」と驚くことが多いです。
Q. 海外でウケやすいジャンルや作品の特徴はありますか?
恋愛ものは「告白文化」が日本特有なので、海外では刺さりにくい場合があります。また、ギャグやコメディも日本の現代的な状況を前提にしたものは海外では理解されにくいことがあります。
一方で、学園ものは比較的普遍的です。いじめのような問題は世界中にあり、閉鎖的な空間での人間関係という普遍的なテーマだからです。「ハリーポッター」も閉鎖的な学園が舞台ですし、「スパイファミリー」でもアーニャが学校に通います。
また、国によって表現の許容範囲も異なります。胸元が映っているだけでNGな国もあれば、ミニスカートで膝上が出ているとすべて修正が必要な国もあります。その場合は作家の了解を得た上でローカライズの際に修正することもあります。
Q. 日本は表現の自由が広い国なのですか?
個人的には日本が最も表現の自由が広い国だと思っています。「チェーンソーマン」のような作品が受け入れられるのもその証拠です。この表現の自由は守るべきものですが、そのためには私たち自身がゾーニングなどの住み分けのルールを作り、守っていく必要があります。
表現には意味があるものもあれば、特に意味なく表現しているものもありますが、それも含めて表現の自由として許容することが大切です。ただし、時代とともに感覚は変わっていくので、常に議論しながら「今はこれがベストなのではないか」と考え続ける必要があります。
Q. 今後やってみたいことは何ですか?
今お付き合いしている作家さんたちと一緒にいいものをたくさん作っていきたいです。また、まだ手がけたことのないジャンルにも挑戦してみたいと思っています。例えば少女漫画の作家さんとお仕事をしたことがありますが、小さな子ども向けの作品を一から作ったことはないので、いつかやってみたいです。また、大人向けの青年誌的な作品も面白そうだと思います。
基本的には、面白さを重視した漫画作りを続けていきたいです。特定のジャンルにこだわるのではなく、いろいろな作品があった方が読者としても楽しいですし、作り手としても退屈しないと思います。
Q. 漫画の魅力とは何だと思いますか?
新しい漫画に出会う楽しさがあります。私自身、読みきれないほど漫画を買っていますが、それでも新しい作品が読みたいと思います。また、みんなで同じ作品を見て「あれじゃない、こうじゃない」と語り合う楽しさもあります。友達に「これ超面白かったから読んで」と勧める瞬間も好きです。
漫画という文化がこれからも続いていけば良いと思います。読みきれないほどの漫画がある中で、目が見える限り読み続けて、好きな漫画の最終回は見届けてから死にたいですね。