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世界的サービスFigma CPOが語るチーム作り
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2024年8月28日

デザインツール・Figmaの最高製品責任者を務める山下祐樹氏は、GoogleやUberなどでもアプリデザインの経験を持つ。Figma、そして山下氏の製品デザインの哲学とは。
Figmaのビジョンとチームビルディング
アイデアから製品へ:Figmaが目指す未来とは
Q. Figmaの将来的なビジョンや追加したい機能について教えてください。
Figmaは本質的にデジタル製品を作るためのツールだ。ユーザーのほとんどは、アプリやウェブサイト、デジタルインターフェースなどの製品開発に使用している。しかし、その開発プロセスにはまだ多くの課題や障壁が存在する。
製品開発のプロセスでは、「翻訳の損失」が大きな問題だ。頭の中のアイデアをデザインに落とし込むのは難しく、デザインからコードへの変換でも多くの情報が失われる。Figmaで作成した美しいモックアップと、実際のアプリ画面が大きく異なることは珍しくない。これはエンジニアのせいとは限らず、デザイナーが様々なケースや状況を考慮していないこともある。
この「翻訳の損失」という問題に対して、Figmaは二つの方向性で解決策を模索している。一つはデザインとコードの関係性を強化し、両者の概念を近づけることでデザイナーとデベロッパーが同じ言語で話せるようにすること。もう一つはAIを活用して、アイデアから製品へのプロセスを高速化し、素早く往復できるようにすることだ。
Q. FigmaでのAI活用について、どのような展望を持っていますか?
AIには主に二つの可能性があると考えている。一つは「床を下げる」こと。つまり、参加するための最低要件を下げ、より多くの人がデザインに携われるようにすること。これはFigmaの「デザインを全ての人にアクセス可能にする」というビジョンに直結している。現在、Figmaユーザーの3分の2は実はデザイナーではないが、多くは閲覧やコメント機能の利用に留まっている。AIによって、これらの非デザイナーがより深く関われるようになる可能性がある。
もう一つは「天井を上げる」こと。プロのデザイナーがより効率的に作業できるようにすることだ。デザインプロセスには多くの手作業があり、例えばiPhone、Android、ウェブサイトなど様々なプラットフォームでの表示確認や、長い記事・短い記事などの異なるケースの検証などがある。これらは戦略的な仕事ではなく、機械にやらせることができる作業だ。AIがこうした作業を担うことで、デザイナーはより創造的で戦略的な仕事に集中できるようになる。
チームビルディングの秘訣:儀式の力
Q. チームビルディングについて、「儀式(リチュアル)」の重要性を強調されていましたが、詳しく教えてください。
チーム文化は一種の製品と考えるべきだ。HubSpotのCTOであるDarmesh Shahから学んだのは、会社は二つのものを構築している—製品と文化だということ。文化を製品として捉え、理想の文化を実現するために儀式をデザインする視点が重要だ。
儀式とは、「新入社員が最初の金曜日の終わりまでに知っている、名前のある会社の習慣」と定義できる。例えば、Amazonでは有名な「6ページドキュメント」の儀式がある。会議の最初の30分間は全員が静かに座って資料を読み、その後議論に入る。また、HubSpotでは創業者がフィードバックを与える際、ハッシュタグでその重要度を示す。例えば「#FYI」ならば単なる情報共有で、それについて何かする必要はないということを意味する。これは創業者の発言に全員が過剰反応することを防ぐための工夫だ。
Figmaでも独自の儀式がある。例えば30分のミーティングでは、最初の10分間はFigJamの中で音楽をかけながらタイマーを設定し、全員が大きな質問や合意・不合意のスケールに顔を置く作業をする。この10分間のサイレントリーディングで、どこに合意があり、どこに不一致があるかを把握し、残りの20分間は意見が一致しない部分の議論に集中できる。
Q. 優れたチームを作るための他のアドバイスはありますか?
チーム作りで重要なのは、自分の価値観を共有しつつも自分とは異なるスキルセットを持つリーダーを見つけることだ。例えば、企業向けビジネスや課金システムに詳しい人材を採用することは重要だが、同時に優れたユーザー体験に対する同じ基準を持ち、エンドユーザーを深く気にかける人であることが重要だ。
価値観を共有しつつも新しい視点をもたらす人材を見つけることが鍵だ。30〜40%は共通の価値観を持ちつつも、多様な視点を持つチームが必要だ。特にテクノロジー企業では多様なユーザー層を持っており、そうした異なるユーザーの視点を代表できるチームが重要になる。
日本から学ぶデザインの哲学
Q. 日本の文化やデザインから学んだことはありますか?
日本には顧客体験に対する素晴らしい思いやりがある。空港から電車に乗るまで、あらゆる場面でデザインに対する配慮が感じられる。自動販売機やコンビニエンスストアなど日常生活の細部に至るまで、多くの思慮深さが込められている。そこにはプライドと奉仕の精神が感じられる。
日本文化の特徴は、周囲で起きていることをよく観察することだ。これは良い面も悪い面もあるが、まず理解しようとする姿勢と自己認識を促す。これらはデザイナーにとって非常に重要なスキルだ。
Q. 日本のFigmaユーザーと国際的なユーザーに違いはありますか?
日本のデザイナーコミュニティは非常に勉強熱心で学ぶ意欲が高い。これは日本ではデジタルプロダクトデザインがまだ比較的新しく、成長段階にあるからだと思う。アメリカではプロダクトデザインを大学で専攻できるが、日本ではそうした機会は限られている。
そのため、多くのプロダクトデザイナーはグラフィックデザインやエンジニアリングなど他の分野からの転向組だ。こうした背景から、より多くを学びたい、お互いから学びたいという欲求が生まれている。また、デザインの重要性を高め、お互いにアドバイスを共有するためにコミュニティが形成されている。
日本では、デザイナー1人に対してエンジニアが100人という比率のケースもあるが、アメリカではデザイナー1人に対してエンジニア7人程度の比率だ。デザインへの戦略的投資の重要性を理解するための事例がまだ十分ではないのかもしれない。
キャリア構築のアドバイス
Q. GoogleやMicrosoft、Figmaと国際的なキャリアを築いてこられましたが、これからのビジネスリーダーへのアドバイスはありますか?
キャリアを考える際に重要なのは、「誰かが自分に大きな賭けをしてくれる役割」を見つけることだ。つまり、書類上では自分が適任ではないはずの仕事を任せてもらえるような機会を探すことだ。
例えば、MicrosoftからYouTubeに転職した際、私はiOSアプリのプロダクトマネージャーになった。当時それは世界最大のiOSアプリだったが、私はiPhoneを持っていなかった。初日にマネージャーからクレジットカードを渡され、「Appleストアに行ってiPhoneを買ってきなさい。それがあなたの仕事だから」と言われた。振り返ると、私のようなiOSユーザーではない人間に賭けてくれたマネージャーの決断に驚く。Figmaでも、私は経営幹部としての経験がなかったが、創業者は私に賭けてくれた。
もう一つのアドバイスは、急成長している企業に参加することだ。企業が急成長すれば、あなたの機会も増える。また、たとえ思ったような成長がなくても、そのミッションに共感していれば幸せでいられる企業を選ぶことも大切だ。Figmaはその好例だ。これほど大きなビジネスになるとは想像していなかったが、デザインをより多くの人にアクセス可能にするというミッションに共感していた。
最後に、特にキャリア初期においては、周囲のリーダーが全てを知っていると思い込まないことだ。実際には誰も全てを知っているわけではなく、私たちもまた答えを模索している。この視点を持てば、何か問題を見つけた時により自信を持って改善策を提案できるはずだ。リーダーとして、そのような姿勢を持つ人材を高く評価する。
AIと共にあるデザインの未来
Q. ソフトウェアとデザインの未来についてどう考えていますか?
ソフトウェアとデザインの未来に対して非常に楽観的だ。AIがこれらの必要性をなくすのではないかという懸念が多く聞かれるが、最終的にはエンドユーザーを深く考慮する設計者の役割はさらに重要になると考えている。AIが問題の約80%を解決できたとしても、残りの20%を人間中心に考えることが今まで以上に重要になる。
これからは、エンドユーザーの強力な擁護者になることがさらに重要になる。同時に、より効率的で効果的な仕事をするための強力なツールが手に入ることになる。AIによって多くの製品が似通ってくる現実もある。「十分に良い」標準的なものが増える中で、製品やビジネスを際立たせるには、感情や本物らしさがより重要になってくるだろう。