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【五輪展望(陸上):為末大】日本の短距離が強くなった理由
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2024年8月7日

100メートル9秒台の選手も出るなど、躍進著しい日本の短距離競技。なぜ日本は短距離に強くなったのか?パリ五輪でメダルを狙えるのか?世界陸上2大会銅メダリストの為末大氏に聞いた。 <ゲスト> 為末 大 1978年生まれ、広島県出身。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。現在は...
陸上はなぜ日本人が強くなってきた?為末大が語る「競技の奥深さ」と「足の速さの正体」
陸上競技の世界で日本人選手の活躍が目立つようになってきた。なぜ今、日本人選手が世界で戦えるようになったのか。陸上競技の複雑な魅力とは何か。元400mハードル選手の為末大氏に聞いた。
Q. 今回のオリンピックで注目の日本人選手は?
北口榛花選手(女子やり投げ)は世界で最も勝率が高い選手の一人。世界選手権でも金メダルを獲得している。男子110mハードルでは泉谷選手と村竹ラシット選手がメダル候補。私が競技していた400mハードルでは豊田兼選手も素晴らしい実力を持っている。
Q. なぜ短距離やハードル種目で日本人が強くなってきたのか?
明確な理由は特定できないが、2つの要因が考えられる。まず、誰かが記録を破ったことで「行けるんじゃないか」という空気が生まれたこと。それから技術的な進化として、例えば110mハードルではスタートから1台目のハードルまでの歩数を減らす技術が取り入れられた。
もう一つ大きいのは、ダイヤモンドアスリート制度の導入だ。これまでは高校時代に1番の選手を強化するという方針だったが、この制度では将来性のある選手をピックアップして英才教育する仕組みを作った。
また、走り方の科学的理解も進んだ。1991年の東京世界陸上でカール・ルイスのデータを分析したところ、地面に足がついている時に足首関節も膝関節もほとんど動いていないことがわかった。それまで私たちは地面を蹴ることを重視していたが、そうではない走り方が正しいと認識が変わった。桐生選手や山縣選手の世代は、小さい頃からこの科学的に正しい技術を学んで育った世代だ。
Q. 日本人と海外選手の走り方の違いは?
文化圏によって歩行の形が違う。アメリカ人の歩き方は三次元的に左右のブレも上下のブレも大きいが、日本人はそれが小さい。これは人種よりも文化圏の影響が大きい。両親が日本人でもアメリカで育つと揺れが大きくなる。
日本人は水平移動して満員電車の中をすり抜ける文化があるため、なるべく体を動かさずに進む走り方になる。ジャマイカの選手のようなリズミカルな走りとは異なり、山縣選手や田中望美選手のようにまっすぐ体幹をぶらさずに走るのが日本人に合った走り方だ。
Q. 100mレースをより深く見るコツは?
100mは3つの区間(加速、中間疾走、減速)に分けられる。全ての選手が最後は必ず減速する。加速区間では「倒れる」ことと「弾む」ことの2つが重要だ。スタートでは角度を攻めるのがポイントで、ギリギリまで倒れるほど前に進むが、ある角度を超えると踏ん張れなくなって潰れてしまう。
また、100mのレースでは自分のリズムを守ることが大切だ。横の選手のリズムに引きずられると調子が狂ってしまうことがある。例えば、ウサイン・ボルト選手とタイソン・ゲイ選手のオリンピック決勝では、ゲイ選手がボルト選手のリズムにつられていった。多田選手のような日本のスタートが早い選手と一緒に走ると、9秒台が出やすいという現象もある。
Q. ウサイン・ボルト選手はなぜあんなに速かったのか?
人間は棒が前に倒れるように走り、反対の足を出して支える。身長が高いほど有利だが、身長が高すぎると手足をリカバリーするのが大変になる。ボルト選手(198cm)は長い手足をうまくコンパクトにたたみながら走り、自分の重心の高さも活かせた。長い手をまっすぐ振ると遅くなるので、コンパクトに動かすことで速さを生み出していた。
Q. 足の速さの違いは何で決まるのか?
小学生の足の速さは努力だけでは決まらない面がある。足の構造として、アキレス腱の付き方や骨格の構成で力の出しやすさが変わる。例えば、脛骨がかかとの端からどれだけ離れているかでテコの原理が働き、地面を踏む時の力の大きさが変わる。
また「ジャーク」という筋肉の使い方も重要だ。筋肉は通常、緩んでいる状態から徐々に力が入るが、トレーニングすると一瞬で力が入るようになる。これが短くなればなるほど、足が早く回転しても地面をしっかり踏めるようになる。
Q. ハードル競技はどういう特徴があるのか?
ハードル競技はリズムの競技だ。110mハードルでは、ハードルを超えて「1、2、3」と3歩でまた次のハードルを越えるというリズムを10回繰り返す。最終的には一定のストライドになるため、いかにそれを早くするかが勝負になる。
難しいのは、横から違うリズムの選手が見えてくることだ。ボイスパーカッションをしている横で誰かが違うリズムで音を出しているようなもので、自分のリズムを守り通せる選手が勝つ。
400mハードルは歩数が少ない方が有利な競技だが、恐怖心との戦いでもある。秒速9mほどのスピードでハードルに入るため怖さがあり、さらに最後にヘロヘロになってハードルに引っかかって転倒する恐怖もある。
Q. 豊田兼選手はなぜ期待されているのか?
400mハードルのデータは日本が世界で最も蓄積している。「高身長で足が速く、ハードルをスムーズに飛べる選手が出てきたら記録が伸びるだろう」という仮説があったが、豊田選手はその条件を全て満たしている。まだ本格的なトレーニングをほとんど積んでいない段階で為末の記録に近いタイムを出しており、今後の伸びしろは大きい。
ただ、高身長選手にありがちな課題として、最後のハードルを飛ぶ時に窮屈そうな飛び方をする傾向がある。これは足がハードルに当たる恐怖感があるためかもしれない。この技術的な課題と心理的な恐怖感を克服できれば、さらなる記録更新が期待できる。
Q. 陸上選手の収入はどうなっているのか?
日本の陸上選手の収入源は主に3つある。企業に所属する「実業団」、スポンサー契約、そして賞金だ。ただし賞金で生活できるのは世界大会の8位以内に入るような選手に限られ、日本の選手でそれだけで食べていける人はほとんどいない。
実質的には企業に所属するか、スポンサー契約を結ぶかの2つが主な収入源になる。企業に所属する「実業団」選手の収入は一般社員とそれほど変わらず、大きな大会で活躍すると手当がつくこともある。企業内での位置づけとしては、各部署に分散して配属されることが多く、企業自体も陸上部にどれだけコストがかかっているか把握していないことも多い。
マラソンの金メダリストなど一部のトップ選手を除いて、年収1億円を超えるような選手はほとんどいない。理由の一つとして、陸上競技は1つの大会で10種目以上あり、賞金が分散することも挙げられる。
Q. 陸上界を強くするためにはどうすればいいか?
まず強化のコーチに対して適切な報酬を支払うべきだ。現在、陸上競技の代表コーチになる人は大学などの教育機関の人が多く、労働時間を削って無償で協力している状態だ。サッカーのように優秀なコーチを報酬を払って招聘することができていない。
また、選手の育成については、データに基づいたポートフォリオ的な考え方が必要だ。25歳くらいまでにメダルを取っていない選手はその後メダルを取る確率が低いというデータがあるので、若い優秀な選手に集中的に投資するべきだ。選手の引退を早め(26歳くらい)、またはデュアルキャリア(競技と仕事の両立)を促す仕組みも作るべきだ。
※こちらは生成AIによるまとめ記事です。