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日経平均2200円安、1ドル140円台に慌てるな
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2024年8月4日

8月2日、日経平均は2216円安と史上2番目の下落幅を記録した。また、1ドル140円台になるなど、ドル円相場も大きく動いた。円安の要因は構造的だと解説する、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏に話を聞いた。 <ゲスト> 唐鎌大輔|みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 2004年...
専門家が解説:「円安時代」は構造的なもの、局面だけで判断するな
急激な円安や株価下落といった金融市場の混乱の中、みずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌大輔氏に「弱い円の正体」について伺った。専門家の視点から見ると、現在の円安は一時的な変動ではなく構造的な問題に根ざしていることが明らかになった。金融市場の日々の変動に惑わされず、長期的な視点で日本経済を考えるための示唆に富んだ解説をQ&A形式でまとめた。
Q. 現在の為替市場をどう見ていますか?
為替相場は変動相場制なので、円高も円安もあるのが当然です。ドル円相場は113円から始まり161円まで行きましたが、このまま一方的に進むということはありません。「変動相場制は上下がある」ということは常に強調しています。
昨今の円相場の動きを見ると、8月2日時点で149円付近まで円高が進んでいますが、これは円安が修正されている「局面」に過ぎません。重要なのは、日々の相場変動ではなく、長期的に見た「時代」の流れです。
Q. 円安は構造的な問題だという主張の根拠は?
円安の構造的要因として大きく2つ挙げられます。1つ目は貿易収支の変化です。日本は2011〜2012年頃を境に貿易構造が大きく変わりました。日本企業の海外生産移転の動きが盛んになり、また東日本大震災後に原発を使わなくなったことで高い化石燃料を輸入するようになった影響が大きいです。
2つ目はデジタル赤字の問題です。日本は様々なオンラインサービスやクラウドサービス、外資系コンサルティングなどを利用することで、バンバン海外企業にお金が流れている状況があります。2023年度のデジタル赤字は5.4兆円に達しています。これにはYouTube、Netflix、Google、Amazonといったプラットフォームへの支払いだけでなく、オフィス365などのソフトウェア利用料も含まれます。
こうした構造的な変化により、かつては「安全資産としての円」と言われ、世界で何か危機が起こると円高になる傾向がありましたが、最近10年はそういった現象はほとんど見られなくなりました。
Q. 長期的に見て円相場はどのレベルに落ち着くと予想されますか?
1973年の変動相場制移行から2012年頃までの約40年間は「円高の時代」でした。その中でも円安局面はあったものの、長期トレンドとしては円高でした。しかし今は「円安の時代」に入っていると考えるべきです。
130円から150円が新しい戦闘レンジになってきそうという印象です。確かに150円を超えるレベルは一時的な思惑も入った動きでしたが、元々の水準であった110円と比べるとかなり遠いところに連れてこられたと認識すべきです。円高局面は今後もFRBの利下げなどを通じて訪れるでしょうが、変動相場制の中での上下と捉えるべきです。
Q. 円安対策として観光業の強化は有効ですか?
旅行収支は日本が能動的に外貨を獲得できる数少ない分野であり、可能な限り伸ばすべきです。2023年には訪日外国人が約5兆円を使ってくれました。
しかし、ここでも人手不足という深刻な問題があります。日銀短観を見ると宿泊・飲食サービス業は圧倒的に人手不足です。インバウンド需要があってもインバウンド供給がない状態が既に始まっています。実際、錦糸町のホテルでは満室営業を諦めたという事例もあります。
また、観光業による収入はGDP590兆円に対して1%にも満たないため、これだけで構造的な問題を解決するのは難しいでしょう。
Q. 対内直接投資の促進についてはどうでしょうか?
日本の対内直接投資残高はGDP比で5.3%と非常に低く、これは北朝鮮よりも低い水準です。198カ国中196位という驚くべき数字です。政府は2030年までにこれを倍増させる目標を掲げています。
外資系企業が日本に進出しない理由としては、英語が話せない人材の問題や人手不足、さらに撤退コストが読めないといった課題があります。先進国ではM&Aによる投資が一般的ですが、日本ではそれが難しく、グリーンフィールド投資(新規投資)が中心になっています。
熊本県のTSMCのようなベストプラクティスをいくつ作れるかが課題ですが、人材とエネルギーの安定供給という2大課題をクリアしない限り、投資は進みにくいでしょう。
Q. 個人としてはどのように対応すべきでしょうか?
個人として最適な行動が国全体の最適解にならないという「合成の誤謬」が起きています。しかし、国としての取り組みが進まない中、個人としては外貨で運用するといった選択肢を取らざるを得ないのが現実です。
「簡単に体は海外に行けないのであれば、お金は海外で働いてもらう」という発想で国際分散投資を行う人が増えているのは自然な流れです。
Q. 株式市場の見通しはどうでしょうか?
日本は2011年頃からデフレの時代からインフレの時代へと移行しています。デフレの時によくない言われていた「円高」「賃金の停滞」「不動産価格の低迷」が全て逆になっています。円安になり、不動産も上がり、人が減って賃金も上がる傾向にあります。
このような環境下では、株価水準自体も変わってくるでしょう。日本のインフレに従って株価指数の数字は上がる可能性が高いです。ただし、企業が稼いだ収益が必ずしも日本に十分還元されていないという分配の問題が、円安をめぐる議論の肝になっています。
Q. 最後にメッセージをお願いします
局面と時代は違うということを理解してほしいです。今は円安の時代が始まっていますが、その中でも円高になる局面は必ずあります。しかし、その際に「元に戻った」と考えるのは危険です。
変動相場制の中での上下はあっても、構造的な問題が解決されない限り、円安という大きな流れは変わらないでしょう。日々のヘッドラインに惑わされず、長期的な視点で経済を見ていくことが重要です。