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ラジオの未来予測「AIが鍵」
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2023年3月31日

Video Podcast番組「PIVOT SESSION」。東京のFM局「J-WAVE」ナビゲーター(MC)川田十夢に、テクノロジーが起こす未来とラジオの強みについて伺った。【sponsored】 <ゲスト> 川田十夢/AR3兄弟 長男・開発者 1976年熊本県生まれ。J-WAVE『INNOVA...
ARとAIが拓く「拡張現実」の最前線とは?川田十夢氏が語る、新たなメディアの未来
AR(拡張現実)技術は、長らく「来る来る詐欺」と揶揄されることもあったが、チャットGPTに代表されるAI技術の飛躍的な進化は、その現状を打破する可能性を秘めている。
J-WAVEのナビゲーターでありながらテクノロジーで現実世界を拡張するクリエイター、川田十夢氏は、ARの普及には人々に刺さるキラーユースケースが必要だと指摘する。
本稿では、川田氏の考えるARとAIの融合がもたらす社会の変革、そしてラジオを含むメディアの未来について、Q&A形式で深掘りする。
Q. AR技術は現在どのような状況にあるのか?
ARの基礎技術、特に「スペーシャル」という空間を認識・操作する要素技術はほぼ完成したと見られる。Googleなど大手企業も多大な投資を行い、基盤を整えた実績は明らかだ。
しかし、一方で開発チームのレイオフや解散といった動きも見られ、技術は存在するものの、それを実際に社会に適用し、具体的な事例として世に送り出す担い手が不足している現状がある。
チャットGPTのように多くの人が一目で「すごい」「使える」と理解できるような普及モデルが、ARには未だ登場していない。技術的には確立されているにもかかわらず、「まだ来ない」と感じさせているのが現在のARが置かれた状況なのである。
Q. ARアクリルスタンドが大きな話題となったのはなぜか?
「アクリルスタンド」は通常、買って飾る以外の期待値がほとんどない製品だった。その"低い"期待値に対して、AR技術によってスタンドのキャラクターが飛び出し、演奏を始めるという"想定外"の体験を提供したことで、大きなギャップと驚きが生まれたのだ。
この予想をはるかに超える「拡張」は、SNS上で爆発的に拡散された。多くのユーザーが自分の「推し」キャラクターで同じ体験をしたいと願うようになり、そのニーズは国境を越えて多方面からのオファーとして具現化している。
これは、テクノロジーがいかに人々の期待値を裏切り、それを上回る感動を提供できるかを示す好例であり、ARが広く受け入れられるための重要なヒントを与えている。
Q. 物理的なモノにARを組み合わせることでどのような未来が考えられるのか?
川田氏は、音源が物理メディア(CDやレコード)から離れ、データとして存在するようになったように、今後はあらゆる「モノ」にデータや記憶が宿るようになると考える。
その具体例として挙げられたのが、「記憶のアップリケ」である。これは導電性の糸でデータが忍ばせたワッペンをベビー服に付けることで、スマートフォンをかざすと当時の赤ちゃんの姿がARで再現されるというアイデアだ。写真プリントアウトの機会が減った現代において、モノを介して思い出を保存する新たな手段となりうる。
都市開発においてもこのトレンドは顕著に現れるだろう。将来建設されるビルでは、物理的な広告スペースが極力廃され、ARレイヤーでの広告表示が前提となる可能性がある。これにより、街の景観はクリーンに保たれ、見る人それぞれの興味や設定に応じて情報がパーソナライズされる、という未来を描いている。
Q. GPTなどのAI技術は今後の社会や職業にどう影響するのか?
AI技術の進化は、今後あらゆる専門職に「+GPT」という形で融合していくと予想されている。例えば「ドクターGPT」や「会計士GPT」などが挙げられる。
これにより、専門家にかかる前にAIが一次相談の役割を担い、ユーザーは気兼ねなく質問できる環境が生まれるだろう。医療現場であれば、病院の混雑緩和に繋がり、本当に治療が必要な患者のみが医師と対面する効率的な医療体制の構築が期待される。
AR技術との組み合わせは、次の大きなトレンドとなる。現実世界にAIがパーソナライズした情報が重ねて表示されることで、個々人にとって「見える風景」が異なる世界が到来し、人々はAIの助けを借りながら、それぞれの専門分野や関心に応じて現実を拡張できるようになるだろう。
Q. ARとAIの融合によって、私たちの身の回り、特に都市やメディアはどう変化するのか?
ARとAIの融合は、人々が目にする街の風景を根本的に変える可能性を秘めている。例えば、同じ六本木という街でも、カルチャーに関心がある人には関連イベントの情報が、ビジネスに関心がある人には経済ニュースが表示されるといった具合だ。つまり、見る人それぞれの視点に合わせて世界が「チューニング」されるようになる。
これにより、個々人が異なる情報レイヤーを持つことで、互いの異なる視点を交換し合うことができ、新たな発見や理解が生まれると川田氏は期待する。
メディアとしてのラジオも大きく進化する。「Radio GPT」という構想では、AIが全ラジオ番組の会話内容をメタデータとして解析・蓄積する。街を歩くだけで、その場所や文脈に合致するような会話が展開されているラジオ番組が自動的にチューニングされ、聞こえてくるようになるだろう。
これは、能動的な検索では出会えなかった情報やコンテンツに、街を介して偶然に出会う「セレンディピティ」を日常にもたらし、ラジオが都市の「副音声」として機能する新たな価値観を創造する可能性を秘めている。
Q. 創造的なアイデアを生み出す秘訣は何なのか?
川田氏が語るアイデア創出の源泉の一つは、「未来のセンサー」としての子供だ。例えば、生後3ヶ月の我が子に防衛費といった難しいテーマを投げかけ、その反応(「あー」「うー」など)から予期せぬ解釈やインスピレーションを得るという。
学研の科学付録の例では、ヒマワリの標本を通じて「理科的な物差し」(拡大・縮小)だけでなく、「歴史的な物差し」(ヒマワリが日本に来るまでの経路や時代の受容の変化)も同時に体験できるARコンテンツを開発した。これは、一つの事象を複数の視点から多角的に捉えることで、新たな教育価値や体験を生み出すという思考プロセスを示している。
さらに、自分にはない感覚や、ときに「嫌いな人」とあえて対話することも重要だと説く。異なる価値観や、嫌悪感すらもクリエイティビティを刺激する源泉となり、自身の思考を相対化し、新たな発見をもたらすきっかけとなるのである。
Q. ラジオが将来にわたり存続し、発展していくためには何が必要なのか?
ラジオが若い世代にリーチするには、現状の「番組を最初から最後まで長時間聞く」というスタイルを見直す必要がある。YouTubeの「切り抜き動画」のように、番組の最も面白い部分を数秒から数分に凝縮した「切り抜き」コンテンツをSNSなどで積極的に展開し、短尺で興味を惹きつける戦略が求められる。
川田氏は、ラジオの本来の価値は、人生のメインイベントとしてではなく、「時代と並走する副音声」としての機能にあると考える。例えば野球中継をスタジアムで見ながらラジオで解説を聞くように、現実の体験を豊かに補完する存在として、精神的な豊かさをリスナーに提供すべきだという。
J-WAVEのような歴史あるメディアが未来を築くためには、若い世代との対話を深め、Z世代をナビゲーターやスタッフとして積極的に登用するなど、「若返り」を図ることが不可欠である。
そして開発者として、既存のブランドに甘んじることなく、常に新しい価値や体験を技術的に提案し、実装し続けることで、ラジオの可能性を広げることが求められている。