
解散総選挙と株価/日経平均は6万8000円へ/高市自民勝利で株高
解散総選挙と株価/日経平均は6万8000円へ/高市自民勝利で株高
目まぐるしく変化する市場環境の中、日本株は今、新たな局面を迎えている。日経平均が歴史的な高値を更新する中、突如として浮上した解散総選挙の可能性は、今後の相場を左右する重要なテーマの一つだ。さらに、世界的なAI技術の進化が株式市場に与える影響も無視できない。
本稿では、大和証券チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏、そして元手200万円から2億円の資産を築き上げた個人投資家山下拓馬(ヤーマン)氏という二人の識者の視点から、2024年の株式市場の展望を深掘りする。政治動向、経済政策、テクノロジーのトレンドが複雑に絡み合う中で、個人投資家が直面するリスクとチャンス、そして効果的な投資戦略について解説する。

Q. 解散総選挙が実現した場合、日本の株式市場はどう動くと予測されるか?
木野内氏の分析によると、過去26回の解散総選挙では21勝5敗という高い確率で政権与党が勝利している。これは、与党が勝てる情勢と判断した場合に解散が行われる傾向があるためだ。市場もこの歴史的背景を織り込み、総選挙が行われれば与党が勝利し、その後の株高に繋がると見込んでいる。特に、過去の郵政解散やアベノミクス開始時の解散後には、半年から8ヶ月にわたる持続的な株高が見られた。今回の選挙で大勝すれば、同様に長期的な株高が期待されるだろう。

日経平均は「3割高値に向かえ」という相場格言の通り、節目となる5万2000円で一旦足踏みしていた。しかし、解散総選挙という強力な材料を背景にこの節目を突破したことで、木野内氏は年の半ばには6万8000円への到達も視野に入ると予測する。政局の安定と政策への期待感が、市場を押し上げる大きな原動力となる可能性が高い。
Q. 高市総理が政権を維持した場合、経済政策は株価にどのような影響を与えるか?
高市総理の経済政策は「高圧経済政策」を志向すると見られている。これは需要を喚起し、GDPの需給ギャップを埋めることで物不足の状態を作り出し、インフレと賃上げを促進しようとするものだ。この政策が実行されれば、企業は需要増に対応するため、研究開発投資や設備投資を活発化させることが予想される。この結果、全要素生産性(TFP)が上昇し、イノベーションを通じて企業が効率的に生産できるようになる。加えて、物価上昇と相まって、売上の単価と数量が同時に増加する。このような経済の好循環は名目GDPの成長を力強く押し上げ、歴史的に名目GDPと強い連動性を持つ株価の早期上昇に繋がると考えられる。市場は高市総理が掲げる17の成長戦略テーマに注目し、これらが中長期的な物色対象となる可能性が高い。
Q. 個人投資家が現在の相場局面で注意すべきリスクと取るべき戦略は何か?
総選挙後の株高が期待される一方で、個人投資家が注意すべきリスクも存在する。特に「高市トレード」によって急速な円安が進んだ場合、政府が為替介入に踏み切る可能性が高い。財務省がすでに円安への過度な進行に警戒感を示していることから、介入によって円高に反転すれば、一時的に株価、特に輸出企業の業績に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、高市政権が長期化すれば、中国との関係がさらに悪化するリスクも無視できない。過去には中国との関係悪化が陸運や空運株のアンダーパフォームに繋がった事例があり、インバウンド関連企業の中でも特定のセクターに打撃を与える可能性がある。ただし、ヤーマン氏はインバウンドを「一括りにすべきではない」と指摘する。中国からの団体旅行客が減少しても、個人旅行客は民泊施設などを活用し堅調な需要を示している。このように、大きなトレンド全体が下降していても、その中の「隙間」で成長を続けるニッチな銘柄を発掘することが重要であると示唆する。自身も民泊事業を手がけているヤーマン氏は、予約状況など具体的なデータを参考に個別銘柄を選定していると語る。
さらに、金利環境の変化にも注目が必要だ。高市トレードによる株高は債券利回り上昇をもたらし、一時的に銀行株を押し上げた。しかし、もし為替介入により円高が進み、利上げ観測が後退すれば、銀行株には逆風となるだろう。その場合、木野内氏は資産運用株や証券株など、株高の恩恵をより直接的に受けるセクターが魅力的な投資先になると分析する。長期的には資産形成層の拡大を背景に、証券・資産運用業界は持続的な成長が見込まれる。
Q. ヤーマン氏の提唱する「予測しない投資術」とは具体的にどのようなものか?
ヤーマン氏は、日経平均の具体的な目標値などを「予想しない」ことが自身の投資成功の鍵であると語る。市場の動きを固定的に予測すると、自身の投資判断がその予測に囚われ、柔軟性を失うリスクがあるためだ。彼はむしろ、相場全体の「強さ」や他の投資家の「雰囲気」を肌で感じ取ることに重きを置く。情報収集の際には、X(旧Twitter)などのSNSを積極的に活用し、実際に実績を出している信頼できる投資家のアカウントを起点に、その人物がフォローしている関連アカウントを辿ることで、質の高い情報源のネットワークを構築する。このアプローチにより、市場の多様な視点や集合的な心理を把握し、自身の投資行動に反映させている。
特定の指標やテーマに固執せず、常に客観的かつ柔軟な視点で市場を捉えることで、刻一刻と変化する相場に対応していくことがヤーマン流の「予測しない投資術」の本質であると言えよう。
Q. AI相場は2024年の前後半でどう推移し、どのような銘柄に注目すべきか?
2024年のAI相場は、年の前半と後半で異なる様相を呈すると予測される。前半のキーワードは「ブラックウェルウルトラ相場」である。NVIDIAの新型AIチップ「Blackwell Ultra」の出荷開始に伴い、AIサーバーを製造する台湾企業の売上が急増していることが示唆する通り、AIインフラ関連の需要が引き続き高まるだろう。この時期に注目すべきは、AI関連事業で得た利益を、工場新設や製造能力の拡張といった「拡大再生産」に積極的に投資する企業だ。古河電工のように、水冷モジュールの工場を新設したり、光ファイバーの製造能力を5倍にしたりする企業は、保守的な業績予想を出す可能性が低く、株価が大きく評価されやすい傾向にある。

一方で、後半には次世代チップ「Rubin」の登場により、NVIDIAの粗利益率が一時的に悪化するリスクが指摘されている。これは新製品の初期段階における製造の歩留まり悪化が原因だ。しかし、このチップ刷新は同時に、AIデータセンターの利用コストの大幅な低下を意味する。このため、後半はAIデータセンターを利用してサービスを展開する企業、すなわち「AIのユーザー側」に注目が集まるだろう。サイバーエージェントのようなAIエージェント開発企業や、既存システムにAIを組み込む支援を行うNECや富士通といったシステムインテグレーターが恩恵を受ける可能性が高い。木野内氏は、サイバーエージェントには優秀なAI研究者が集まり、潤沢な資金で計算資源を活用できる環境があることを指摘する。AIを導入することは、単なるコスト削減(プロセスイノベーション)に留まらず、馬車から自動車への転換期に見られた「新しいものが欲しい」という経営層の根源的な欲求(プロダクトイノベーション)に支えられており、AIへの投資は今後も巨大なトレンドとして持続する見通しだ。
