
2023年5月14日
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子供玩具といえば「乗り物」か「バトル」だった。そこに新ジャンルとなる「トレーディングカードゲーム(TCG)」が生まれたのは1993年、現在3500万人がプレイする米国発のマジック・ザ・ギャザリング(MTG)である(*1)。

最古のTCGが現在も「世界で最も遊ばれるTCG」とギネス記録される理由は、この遊び特有の“スイッチングコストの高さ”。覚えるのに手間がかかり、一度デッキを作るために集めた自分だけのコレクションはやめた瞬間に価値を失う。
周りは教え競い合う仲間たち、MMORPGでもよく言われるが、ソーシャル性の強さで参入障壁のハードルの高さを乗り越えるTCGは、一度やり始めると容易に他のカードに移れない、という特徴を持つ。
だからこそ25年の歴史を持ち、米国で300、日本で420もの「新規タイトル」が発売されてきたが、この四半世紀トップ3の順位が動いていない。
それがMTG(1993年発売。以下同じ)、ポケモン(PCG、1996:ポケモン)、遊戯王(1999:KONAMI)、日本市場ではMTGのWizards社が開発し、タカラトミーが販売するデュエルマスターズ(DM、2002:タカラトミー)が入る。日本市場ではなく、世界市場でのトップ3である。


1996年2月ゲームボーイにおけるポケモンの成功を見て、コロコロで連携する小学館が企画したのがテレビアニメ化だった。
だが「キャラクター寿命の消費が加速する」と任天堂含む関係者は全員消極的、一度拒否される。ゲームが売れなくなるとも考えられたし、当時のアニメは作品の人気を“消化”するだけで、スポンサー都合で中断する事例が後を絶たず、むしろ作品ブランドにダメージを与えるリスクを懸念された。
小学館は「ミニ四駆のテレビアニメはなぜ失敗したのか/どうすれば成功するか」提案し、なんとか了承をもらう(*2)。1996年ミニ四駆第2次ブームの大成功がなければ、ポケモンアニメは実現しなかった可能性もある。
PCGはこの小学館主導のアニメから商品化権を得て1996年10月に登場する。原作3社の1つクリーチャーズ社長の石原恒和(現在の株式会社ポケモン社長)の企画で始まるが、「こんな難しいゲーム、売れるわけがない」と任天堂からも問屋からも断られる。

最後「よく分からないけど、面白そうだからやってみたい」と拾ったのが、リクルート子会社のメディアファクトリー、当時10数名の会社だった。
印刷こそ花札・トランプを祖業とする任天堂だったが、この“当時誰も知らない”TCGビジネスで、ほかに発売元になろうという企業は1つもなかった。
発売時に特集したメディアはコロコロのみ、当時180万部売れていた小学館の月刊漫画誌の独占といえば聞こえはいいが、誰も取り上げなかったというのが実のところ。
問屋も大阪スターコーポレーション1社のみが手を挙げ、ゲーム専門店とイトーヨーカ堂でしか流通しない、あまりに期待値が低いスタートであった。

PCGが日本にTCGを根付かせた。半年後の1997年3月末までに8700万枚(1枚30円で26億円)と売れに売れ、1998年度には5億枚(150億円)。
1999年度7億6千万枚(228億円)となるころには競合が大量に殺到するレッドオーシャンとなり、まさに1999年に次なる大ヒット作・遊戯王OCGが生まれるとPCGの売り上げは5億枚(150億円)に落ちるが、8千億円の日本玩具市場に500億~1千億円級の市場がゼロから生まれたこと自体が驚きだ。
さらに最初の4年間で18億5千万枚売れた日本以上に、米国市場では24億枚、北米で1千億円近い市場を作りMTGを圧倒した。この20年前の参入以来、米国TCG市場はMTGに続き、PCGと遊戯王でずっと不動の地位を占め続けている。

このジャンルは失敗率が高い。TCG化したのは「スターウォーズ」「ハリーポッター」などの海外トップIP、「ドラクエ」「FF」「ときメモ」などのゲームIP、「NARUTO」「はじめの一歩」などのマンガIP、そのほとんどが数年とたたずに撤退していったのが2000年代。
新興の出版社・印刷会社ばかりでなく、大成功作品を持つKONAMI、タカラトミーすらも失敗を重ね、2006年には最盛期の半分で500億円を切る市場となった。
2006~2015年の市場を牽引したのは第4勢力となる初のTCG専業メーカー、ブシロードだったが、2016年から現在に至るまではPCGが奇跡の復活を遂げる。
実は長らく売り上げ30億~40億円で停滞して遊戯王、DMの陰に隠れていたPCGは、アプリゲーム「Pokemon Go」の世界的成功と家庭用ゲームの復活などと共鳴し、2018年に100億円を優に超え、2020年に300億円近く、2021年になると前人未踏の600億円超え。
実はこれは日本だけの現象ではない。北米でもMTGがオンラインも含め10億ドル超えの記録的な売り上げ、中国ではウルトラマンカードが同規模の急成長を見せ、開発会社の卡遊動漫が10億ドル超えのユニコーンとなっている。
TCGは今、全世界で玩具業界のキラ星となり、超有望ジャンルとなっているのだ。
【脚注】
(*1)MTGを運営するWizards社はポケモンカードの米国流通も担当しており(1990年代当時)、1999年に玩具メーカーのHasbroによって3.25億ドルで買収されている。そこから20年たち、現在はHasbroの最大自社IPブランドを形成している。
(*2)第1次ミニ四駆ブームの時は広告代理店が初めに放送枠ありきでつくったために、半年で番組が打ち切られたが、第2次ミニ四駆ブームでは小学館側が番組スポンサーと交渉し、タミヤのミニ四駆モデルとゲームソフト開発のアスキーとを調整しながら1996年1月『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の放映を始めるスタイルで展開していた。このモデルでミニ四駆ブームを牽引していたことが実績となり、小学館主導のポケモンアニメがGOとなった。