
2022年12月21日
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「成長を続けるために、本気でグローバル化を目指します」。2022年8月、マネーフォワードCEOの辻庸介氏は、エンジニア部門におけるNon-Japanese(外国人)採用と、国籍に関わらず活躍できる環境づくりに本腰を入れる方針を、日本語と英語で同時に発信した。
フィンテック・スタートアップの先駆けとして2012年に創業した同社は、toC・toB向けの事業を多角展開。
17年に上場して以来、毎年140%前後で売り上げを伸ばしており、19年にはベトナム・ホーチミンに、21年には同・ハノイにも開発拠点を拡大。さらに、インドでも現地採用を強化するための準備を進めている。
22年には数十人規模で外国人エンジニアを採用し、現在、エンジニア部門のNon- Japanese社員率は3割超に。「オフィスのフロアで英語が飛び交うシーンが、この1年ほどで格段に増えた」(同社People Forward本部グローバル採用部長・保科岳志氏)。

日本市場向けのプロダクトを、日本人メンバーで開発・販売してきた創業10年のスタートアップが、なぜ本気でグローバル化を目指さなければならないのか。
背景にあるのは、エンジニア人材の国内供給不足だ。2000年代以降に創業したITスタートアップが成熟期を迎え、組織拡大を続けているのに対し、「日本の高等教育機関では、システムを専門に学べる環境が乏しく、慢性的なテック人材不足にある」(同CTOの中出匠哉氏)。
また、人口減少が進む国内市場に閉じずに成長戦略を描くために、グローバル化は必須なのだという。
グローバル化に舵を切った先行事例としては、2012年に「英語公用語化」を発表した楽天が知られる。楽天の場合は全社員が対象だったが、マネーフォワードはエンジニア部門に限定している。
「他の部門についても英語化するかどうかは、まだ意思決定をしていない。ただ、エンジニアと業務上のコミュニケーションが発生するデザイナーやプロダクトマネジャーについても、必要に応じて英語化のトレーニングを提供している」(保科氏)
まさに現在進行形で試行錯誤中だという同社だからこそ見えている「日本企業がグローバル化を進めるポイント」は3つある。

まずは、外国人向けの「採用」の強化。世界中から引く手あまたの優秀な人材に選ばれる企業になるために、魅力をアピールする必要がある。
CTO室グローバル部長の小牧将和氏によると、グローバル化においては、マネーフォワードを含めた日本企業において一般的な「メンバーシップ型」の働き方に、海外で一般的な「ジョブ型」の要素をブレンドしていくことが重要だという。

「GAFAMでバリバリ実績を積んでいたような優秀なエンジニアを雇うには、業務内容や役割を明確に提示する『ジョブディスクリプション』の導入が必須になる。
誰が何をどこまでやるか、分担の規定が曖昧でも“ボールを拾い合う”メンバーシップ型の働き方に慣れている日本的な働き方とどうすりあわせていくか。実はこの歩み寄りが一番難しいと感じています」
ジョブ型の要素を取り入れていく第一歩は、今いるメンバーそれぞれの業務の棚卸しと役割の定義。外国人の採用を進めるときには、会社全体の働き方の見直しが自然と求められる。
「もう一つ、見えてきたのは『日本独特の商習慣や法律の知識をどこまで求めるか』という問題です。
当社もまだ試行錯誤中ですが、現時点では日本の商習慣や法律の知識は外国人エンジニアには求めず、それらの知識をエンジニアに伝達できるバイリンガル人材を補充する方法が最適解だと見ています」(小牧氏)

また、ゴールはあくまで、共にミッションを達成できる仲間を集めること。採用を急ぎ過ぎて目的を見失うと、その後の組織運営に支障が出るという理由から、「いくら能力が高い人材であっても、カルチャーフィットしない人材は採用しない」という方針はぶれさせない。
選考段階で、「ユーザーフォーカス」をはじめとする同社の行動指針を明確に伝え、共感が得られない場合には採用を見送るという。
では、外国人が「入社を決めたくなる日本企業」にはどんな条件が備わっているのだろうか。

今年2月に同社に入社したインド出身のエンジニア、バティア・ガヤトリ氏に聞くと、やはり筆頭にくる条件は「英語で仕事ができる環境」だったという。
インドで日本語を学び、日常会話は問題なく話せるガヤトリ氏だが、業務上の細かな確認はより正確に話せる英語でのコミュニケーションを希望していた。前職で勤めていた日本企業ではそれがかなわなかったため、バイリンガル環境で働けるマネーフォワードを選んだという。
しかし、ここで一つの疑問が湧く。同社の英語公用語化は未達であり、「バイリンガル環境」とはまだ言えないはずでは?という疑問だ。
この不足を解消するために生まれたのが、英語化組織第1号のグローバル・エンジニアチーム「Team Nikko」だ。
10カ国以上のバックグラウンドを持つメンバーが集まり、コミュニケーションはすべて英語。社内のロールモデルとして小さく始め、英語を使って仕事をしたい外国人社員の受け皿となっている。
さらにこの12月から、Team Nikkoのメンバーが数人単位で社内の他チームとの共同プロジェクトに参加する試みもスタート。「一極集中していた英語化組織が、徐々に社内のいろいろなチームに分散することで、日本人メンバーの慣れにもつなげていきたい」(小牧氏)

また、入社の決め手として、ガヤトリ氏は「グローバル化に対する本気度」も重要だったと語る。
「一時的な施策ではなく、中長期にわたって組織のグローバル化を進めていくというトップの方針が強く打ち出されていたことは心強かったです。CEOの辻さんの『お金の課題を解消したい』というビジョンにも共感できました」
自分の力を発揮しやすい環境と、挑戦するに値するビジョンがあるかどうか。これは世界共通の動機付けと言えそうだ。
※施策のポイント解説は第2話に続く。マネーフォワードのエンジニア採用戦略について、同社CTOの中出匠哉氏の映像インタビューはこちら。