
2022年11月7日
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私は20年ほどSEOの業界で仕事を続けています。その間にはGoogleの検索エンジンも大きな進化を遂げましたし、SEOで取り組む作業も変わりました。

まず10数年前の日本のSEOは「リンクスパム大会」のような状況でした。リンクスパムとは、被リンクによって評価を測るアルゴリズムを不正に利用して、検索順位を操作する行為のことです。
●多くのSEO業者がリンクスパムをやっていたので、リンクスパムをしないと順位を上げられなかった
●大手企業でもリンクスパムの需要があった
●スパムをやっても無効化されるだけで、いわゆるペナルティがなかった
といった事情から、私も含め、皆が自分たちのスパム行為を正当化していたわけです。
しかし2012年頃からは、SEOの業界からリンクスパムが急激に減ってきました。実質的なペナルティといえるマニュアルアクション(手動による対策)が行われるようになり、リンクスパムを用いたSEOはサイトにとってリスクが非常に大きくなったためです。この頃、不正リンクを悪用しているサイトの順位を積極的に下げるアップデートも行われました。
近い時期には低品質なコンテンツを検索結果の上位に表示しにくくする「パンダアップデート」も行われています。
その後のSEOは「とにかく長くて、網羅的なコンテンツを作って検索順位を上げる」という時代に入り、クラウドワーカーを使った雑なコンテンツが量産されるようになりました。リンクスパムが量産される時代から、コンテンツスパムが量産される時代に移ったともいえます。
そこで起きたのが2016年のWELQ騒動でした。
よく知られているように、医療情報サイト「WELQ」などで、医学的な根拠のない記事、画像の無断転載などが多数見つかり、サイバーエージェントが運営していたサイトも含めて、同種のキュレーションメディアが数多く閉鎖に至った騒動のことです。
この騒動に前後して、GoogleのWEBサイトの評価においては「E-A-T」と呼ばれるExpertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の重要性がより大きくなりました。
併せて、SEOはユーザー評価やユーザー行動が重要な要因になっていき、より身のあるコンテンツを作らなければいけない時代になったわけです。
Googleの仕組みをハックすることは本質ではなく、「検索者に最適化すること」が最も成果が上がるSEOなのです。
そして近年のSEOを理解するうえで欠かせないのがYMYL(Your Money Your Life)という概念です。
Google検索品質評価ガイドラインで示されている「人々の将来の幸福、健康、経済的安定、安全に潜在的に影響を与えるトピック」を指すもので、具体的には健康、医療や金融等の分野がこの領域に該当します。なおトランザクション(取引)が発生するものも基本的にはYMYL領域に入るので、ECサイトなどもここに該当します。

特にこの領域では、Googleは「検索者の保護」と「安全性」を何より重視していいます。
今の時代、検索は社会のインフラ。そのため「検索により新しい出会いを提供すること」よりも、「検索した人が不利益を被るような事故を起こさないようにすること」を優先するのが、今のGoogleの思想だと感じます。
YMYL領域においては、信頼性が確かな「大手企業」や「専門家」が非常に優位なアルゴリズムが採用されるようになりました。アルゴリズムの詳細は不明ですが、Googleがサイトを評価する際の信頼性に関するスコアが、YMYL領域においてはより重要視されているのでしょう。
例えば金融や法律の単語で検索をすると、今は専門機関と大手メディアが上位に表示されます。重篤な病名などの単語では、製薬会社すらヒットせず、専門性や権威性が高い病院のサイトが上位に表示されるようになっています(あくまで2022年11月の現時点)。
そのためYMYL領域は、スタートアップや中小企業、非専門機関が戦うには厳しい状態です。最近は専門的な医療、法律の分野のみならず、育児や睡眠、フィットネスに関する情報でも専門機関と大手が優位である状況が加速しています。先日のGoogleのアップデートでは、健康系のスタートアップの検索順位が急落したことも業界では話題になりました。
つまり、SEOばかりに力を注いで検索流入に頼っている企業、なかでも特にYMYL分野にかかわる企業は、Googleのアップデートで売り上げが急落するリスクがあるわけです。実際のところ、医療や金融の分野では、SEOでの苦戦により事業を撤退する企業も出てきています。
ただし、スタートアップや中小企業でも、大手に勝てる可能性がある分野や方法もあります。そして大手企業には大手企業の強みを活かした戦い方があります。第2話ではその話をします。