
2022年3月16日
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日々の生活習慣が他者との違いをもたらす――。
今やスポーツ界ではジュニア年代の選手も意識する常識だろう。食事、呼吸、睡眠、姿勢などはトレーニングと同じくらい大切だと考えられている。
例えば食事改善によってプレーを進化させたのが、サッカー選手のリオネル・メッシ(現パリ・サンジェルマン)だ。

メッシは20代後半まで「吐きぐせ」に悩まされており、ピッチの上で吐いてしまうことも少なくなかった。ドイツに敗れた2014年W杯決勝がまさにそうだった。
サッカー界ではプレッシャーと疲労から嘔吐感を覚える選手は少なくなく、本田圭佑はオランダ2部時代に毎試合のようにキックオフ前にトイレで吐いていたという。内田篤人も鹿島アントラーズ時代に原因不明の嘔吐感に悩まされていた。
ただでさえピッチを走り回って消耗するのに、試合中に何度も吐いたり、吐き気を覚えたりしたら、潜在能力を100%発揮できるはずがない。何かを変えなければならないのは明らかだった。
そんなときメッシはアルゼンチン代表のチームメイトの紹介で、イタリア人栄養士、ジュリアーノ・ポーザーと出会った。カリスマ栄養士は次のことを指示した。
・砂糖を避ける。精製された小麦も避ける。
・添加物、農薬、抗生物質で汚染された食品をなるべく取らない。
・ミネラルウォーター、オリーブオイル、全粒粉穀物、新鮮な果物・野菜、ナッツ類を口にする。
・アルゼンチン的な食生活は肉を食べすぎなので、肉を減らす。
ここで「精製された小麦」とは、多くの人が普段口にしている通常の白い小麦のことで、全粒小麦から外皮と胚芽を取り除いたものだ。精製度が高いほど白くなり、口当たりは良くなるが食物繊維やミネラルが減る。
「精製された小麦」(白い粉)と「全粒小麦」(黒っぽい粉)は、白米と玄米の関係と同じだ。
メッシは大のピザ好きだったが、上の指示によって一切口にしなくなったという。また、牛肉の量を減らし、魚を食べる回数を増やした。つまり「食べたい物」ではなく「体に必要な物」を取る食習慣に変えたのだ。
2014年から取り組むと、効果は絶大だった。吐き気を抑えられたうえに4キロも体重が落ち、体のキレが増したのだ。
2015年にメッシは3度目のバロンドールに輝き、2019年と2021年にも同賞を獲得。34歳になった今でも世界のトップを走り続けている。
メッシと長年バロンドールを分け合ってきたライバル、36歳のクリスチャーノ・ロナウド(現マンチェスター・ユナイテッド)も似た取り組みをしている。

ロナウドは砂糖と精製された小麦を避け、高タンパク、全粒粉穀物、果物・野菜を食べることを心がけている。あえてメッシとの違いをあげると、食事を小分けにし、1日の食事回数が多いことだ(最大6回)。
例えば朝1回、ランチ2回、夕方1回、ディナー2回という感じだ。また、昼寝の回数も多く、最大5回の仮眠を取るという。
ロナウドは自身のこだわりをこう語る。
「いいワークアウトは、いい食事と結びついてないと意味がない。トレーニングを1日に複数回するときは、体のエネルギーレベルを高く保っておく必要がある。だから最大6回食事をするんだ。
メンタルの強さはフィジカルの強さと同じくらい重要で、それが目標達成を助けてくれる。そのためには日々のルーティンが鍵だ」
その徹底ぶりはチームメイトをも驚かせるようで、ユベントス時代にともにプレーしたダウダ・ペーテルスは記者会見でこう明かした。
「クリスチャーノは常に同じ物を食べていた。ブロッコリー、チキン、ライスだ。そしてたくさんの水を飲む。もちろんコカコーラは絶対に飲まなかったね(笑)。ジムへ行くと常に先にクリスチャーノがいた。自分の肉体にも自信があったが、まだまだ上がいることを見せつけられた」
サッカーだけでなく、他の競技のトップアスリートもコンセプトはほぼ同じだ。
テニス界の「ビッグ3」のひとり、ノバク・ジョコビッチは著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(新装版・扶桑社)で有名になったように、小麦などに含まれるグルテンを排除する「グルテンフリー」を貫いている。

グルテンに対してアレルギーがあるためで、代わりにキヌア、ソバ、玄米などが主食になる。アーモンドやクルミといったナッツを好んで食べ、オイルの質にこだわってオリーブオイルや亜麻仁油などを口にする。
この食事改善によって、怪我が多くバテやすかった選手が一気にトップへ上り詰めた。
他の「ビッグ3」に目を向けると、ロジャー・フェデラーはジョコビッチほどストイックではなく、ワッフルなどのスイーツが好きだし、ピザを食べることもある。
それでも砂糖入りの飲み物は口にせず、ファストフードやトランス脂肪酸が含まれる食品を排除している。
なぜ「砂糖」や「精製された小麦」は、アスリートのパフォーマンスにとって悪なのか? 血糖値が急に上がりやすいという理由以外にも、科学的な根拠があるはずだ。
腸内環境を研究する「サイキンソー」の沢井悠社長に聞くと、明快な答えが返ってきた。
「安い糖分を長期摂取すると、腸にダメージが来るからです。スポーツ選手だけでなく、ビジネスパーソンも食事に気をつけないと、パフォーマンスを安定して発揮できなくなる恐れがあります」
“安い糖分”を食べると、腸で何が起こるのか?