
2022年9月16日
読了目安4分

プラスで事業統合を実行したとき。ヤフーに転職し、社内リーダー育成事業を任されたとき。武蔵野大学で新たな学部創設を任されたとき。
僕のキャリアの重要なフェーズで、いつもクリティカル・シンキングの思考力は活かされてきました。
例えば、Yahoo!アカデミア学長として迎えられたときには、入社前から「ヤフーで求められるリーダーとは?」というお題を頭の中に置きました。
しかし、アンサーを決めるだけの根拠は不十分だったので、入社当日からフロア中をあいさつ回りして「こんにちは。伊藤羊一です。あなたはどんなお仕事をしているんですか? ここで求められるリーダーってどんな人だと思いますか?」とひたすらヒアリングをしたのです。後日にアポをとって、30人と1 on 1でじっくり話もしました。
そうやって集めた材料をもとに根拠を導き出し、仮説を立てながら一つの答えを出し、アカデミアのプログラムに応用していったのです。
自分の手足で集めた仮説・根拠に裏付けられたアンサーがあるから、方針がブレることはありませんでした。
こういったプロセスのある瞬間だけを見た人は、僕の行動は「ひらめき」に映るかもしれません。しかし、僕は天才ではありません。
自分なりに仮説を立てて、自分自身も他者も納得できる根拠を集めて、答えを導き出す。これをひたすらやっています。
しつこいようですが、練習は量が命。量をこなせばスピードが磨かれます。
リーダーの立場では、瞬時に意思を問われる場面も少なくありません。「今決めるとしたら、どうするか?」と問われたときに、仮の答えはいつでも差し出せるように。

メンバーに任せる場面でも、自分の中に答えは常にある状態にする。常にアイドリング状態で、「もし彼・彼女たちが決められなかったとしたらこうする」と、半歩先に思考を進めておく。
リーダーやマネジャーとして、チームを率いて新しい価値をつくれる存在になるならば、それくらいの思考力は身につけておこうぜと言いたいです。
今、「リスキリング」という言葉が流行していますが、「学び直し」なんて甘い。生涯ずっと学び続けるのだ!と僕は各所で吠えています。
「スキル」というと、個別の知識や技術を習得するようなイメージがありますが、それを使いこなす思考力がないと意味がない。
歴史、美術、文学など、リベラルアーツと呼ばれる教養も、思考を形成・表現する材料として使いこなして初めて、ビジネスに活かせるものになるはずです。
ビジネスパーソンがまず学ぶべきは思考力、クリティカル・シンキングです。それも上位層になるほどに、シビアに磨かなければいけない。誰よりも早く問いを立て、答えを出すのがリーダーに求められる姿だからです。
学び始めるのに遅すぎることはありません。
ここで、クリティカル・シンキングを磨く上で参考になる本を3冊紹介します。
まず、Zホールディングス シニアストラテジスト、安宅和人さんの名著『イシューからはじめよ』(英治出版)。
「解を出そうと急ぐ前に、問題の本質を見極めよ」という視点を与えてくれる本です。

次に、今やインフラとなった宅急便を創始したヤマト運輸による経営の要諦、『小倉昌男 経営学』(日経BP)。
経営を極めて綿密に分析していて、まさにクリティカル・シンキングの実践版というべきものです。星野リゾート社長・星野佳路さんの思考にも通じるものがあるなと勝手ながら結びつけています。

もう1冊は、ボストン・コンサルティング・グループシニアアドバイザーの内田和成さんによる『仮説思考』(東洋経済新報社)です。
16年前にタイトルに引かれて読んだ本ですが、仮説から思考を始めることで早く成果が上がる効果をロジカルに解説しています。クリティカル・シンキングを学び続けるモチベーションが高まります。

3冊の本を薦めましたが、インプットだけで「知ったつもり」にならないように注意を。これも陥りがちな罠です。
クリティカル・シンキングとは、自分の中にたまった材料の形を整え、オリジナルの思考としてアウトプットするための道具。
アウトプット、すなわち普段の仕事で使ってこそ身につきます。
思考の型が回り始めると、行動のスピードが格段に上がります。意思を決める数が爆増するからです。
僕はここ1年半の間、高校を出たばかりの大学生に対しても「WHY?」と問いながらクリティカル・シンキングのトレーニングを重ねてきましたが、「勉強の面白さを知らない」とぼんやりしていた学生が、半年もしないうちに仲間と起業するなど、顕著な変化が見られます。
思考の型を回した数だけ、新たなアクションが生まれるはずです。そして、自分の意思で決めた行動には、自信が伴います。新たなステージが開けます。
学べばあなたの人生は変わると約束します。今すぐ始めましょう。
