
2022年9月16日
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クリティカル・シンキングの型を磨くには「お題」と「仮説」を大量に投入・蓄積する“自主トレ”が必要だという話を続けたいと思います。
前回は事例を集め、「仮説」をひたすら書きためて見返す習慣について、僕の体験を紹介しましたが、次は「お題」について。
お題とは、すなわち「問い」のこと。クリティカル・シンキングは問いがあってこそ使えるものなので、上質な問いを大量に浴びることが、思考力の鍛錬に欠かせません。
問いはどこから降ってくるのでしょうか。上司から? 否。受け身で待っているだけでは、全然足りません。
問いを自らつくって、1日に何度も自分の中で想定問答を繰り返しましょう。
リーダーになれる人となれない人の違いは、自ら問いを立てられるか、そして行動できるかの違いである。僕はそう思っています。
では、どんな問いを立てたらいいのか。簡単です。3つだけ覚えてください。WHAT、WHY、SO WHATの3つです。

WHATはすなわち「そもそもAとは何か?」という問いです。
「そもそもインターネットとは何か?」「そもそも流通とは何か?」「そもそも体験価値とは何か?」と、俯瞰して概念を定義付ける。思い込みや前提を疑う問いでもあります。
次にWHY。これはシンプルに「なぜAをするのか?」と理由や背景を明らかにする問いですね。
「なぜ出社するのか?」「なぜインドではなくベトナムの市場をねらうのか?」「なぜ今、主力商品のデザインリニューアルをするべきのか?」
WHYの問いをお題に据えるパターンは、クリティカル・シンキングの基本形ともいえます。
最後が、SO WHAT。「それでどうする?」と結論を促す問いです。これは仮説や根拠につながる事象の気づきがいくつもある状態で、「それで結局、オレは何をしたいんだ?」と行動を決める問いになります。
WHAT、WHY、SO WHAT。この3種の問いを常に自分自身に投げかけるクセをつける。すると、クリティカル・シンキングの思考トレーニングを絶えず繰り返すことになります。
とりわけ重要なのはWHYです。
自分自身だけでなく、チームメンバーにもWHYを問いかける意識が、リーダーには必要です。

例えばメンバーから企画の提案があったときに、「なぜそれをやりたいと考えたの?」とWHYを問うのです。WHYとは、その人の思いであり、動機そのもの。WHYさえ強く握れていたら、途中でつまずいてもなんとか踏ん張れるし、周囲がサポートする際に何を大切にするべきかも明確になります。
ありがちなのは、HOWのみに終始するマイクロマネジメント。目的のための方法や進捗管理にばかり目がいき、せっかくのメンバーの「これを成したい」という思いの火を消してしまう。
リーダーがやるべきは、一人ひとりのWHYを明らかにする支援です。「なぜそれをやりたいと思うのか?」と最初に問いかけてすぐに答えが出てこなかったとしても、何度も聞く。
あるいは、「こういう根拠もあるんじゃないか」と答えを導くサポートをしてもいい。それでWHYが明らかになれば、本人の動機付けも強固になる。「じゃ、どうやって進めようか」とHOWを問うのはそれからです。
メンバーにWHYを問い続けることは、育成とも直結します。
日本の多くの会社組織では、「下々の者はとにかく言われた通りに動けばいい。WHYを考える必要なんてないのだ」という無言の圧力がまかり通っています。あるいは「理由はどうでもいいから、結論だけ言え」と、部下のWHYに耳を傾けようとしない上司も少なくありません。しかし、それでは自ら考えて動けるリーダーは育たない。
なぜなら、リーダーシップとは自分で考えて意思決定すること。役職がついて初めてWHYを問うようではリーダーになれないのです。
僕自身も、「自分の意思で行動を決めることがリーダーシップだ」と身をもって学んで今があります。

プラス時代、東日本大震災が発生したその日、リソースをすべて東北に集中する意思決定を行えたのも、脳内で高速にWHYを問うことができたからです。
「今すぐ東北の物流再開に集中すべきである。なぜなら、飲料水や土のうなど人命に直結する物流を最優先すべきだから。また、それは長期の顧客の信頼につながるから。加えて、私たちにはそれをやり切る力とチームワークがあるから」
これも、複数の客観的視点による根拠によって結論を導く、クリティカル・シンキングそのものです。
「西日本の物流が滞るじゃないか」というクレームもありましたが、自分で考え、自分の言葉で発した意思決定にはブレない力があったようです。
社内の各部門を巻き込んでルート修正に成功し、業界で最も早く被災地への配達を再開できただけでなく、結果として新拠点開発や復興事業にも発展。この事例はグロービスのケーススタディーにもなりました。
「君の話はよく分からない」と話を遮られていた僕が、クリティカル・シンキングの鍛錬によって、ピンチを乗り切れるリーダーになれたのです。
自分で考え、意思を決めて行動する。リーダーシップは才能ではなく、思考の練習によって身につくものなのだと僕は言い続けたい。
そして、それは誰でもいつでも始められるものなのです。