
2022年9月15日
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クリティカル・シンキングを学んで、人生が変わった――。
これは決して誇張ではなく、僕の実体験そのものです。クリティカル・シンキングによって、僕の意思決定力は飛躍的に磨かれ、そのスピードは1000倍になりました。
この「1000倍」というのも誇張ではなく、リアルな実感です。
かつての僕は「君はどうしたいと思う?」と聞かれても即答できず、1日2日かけてようやく答えを出していました。
それがクリティカル・シンキングの手法を知り、徹底的に染みつくまで学んだ経験によって、数秒で自分の意見としてまとめ、人に伝えられるように。未経験の領域に飛び込むことも怖くなくなったのです。

意思決定と伝達のスピードが上がると、実現できることも格段に増え、世界がどんどん開かれていきました。
例えば今、僕は武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長として学生たちを連れてシリコンバレー研修に来ていて、短い滞在中に現地企業への投資まで決めました。
クリティカル・シンキングに出会う前には想像すらしていなかった変化に、自分でも驚きます。意思を決め、周囲に伝える力=クリティカル・シンキングの効果を日々体感しています。
僕が必死に体得したノウハウをまとめた拙著『1分で話せ』(SBクリエイティブ)は発行部数56万部と、多くの方の手に渡りました。それだけ、「伝え方」で悩んでいる方が多いのでしょう。

あらためて、「クリティカル・シンキング」とは何か。その言葉を直訳すると、「批判的思考」です。
批判ではなく批判“的”な思考、クリティカル・マインドのある思考。「批判的」というのは、他者ではなく自分に対してのものであり、主観によらない多角的な視点から根拠を示し、主張を組み立て、計画立案や問題解決、意思決定に活用するフレームワークです。
僕が学んだグロービス経営大学院の説明によると、「経験や直感だけに頼らず、客観的な視点で分析し、問題を解決する力。客観的な視点で考えた内容を周囲の人に納得感のある形で伝える力」と定義されています。
図解するとこうなります。複数の多角的根拠にひもづけて、一つの主張を導き出すピラミッド・ストラクチャーです。

「見たことあるぞ」と分かった気になるのは簡単です。これを実際の仕事に当てはめ、人に意見を伝える場面で毎回繰り返し実践する。あるいは、状況を仮定してシミュレーションをする。
型を強固なものにする“自主練”が非常に重要なのです(具体的な方法は後で述べます)。
僕は30代後半から愚直なトレーニングを重ねて、クリティカル・シンキング力を獲得しました。本気で自分を変えたのです。
今の僕に対して「堂々とエネルギッシュにプレゼンする人」という印象を持っている人は多いかもしれませんが、10年前までは別人でした。もともとは人前で話すのが大の苦手。「東大卒」という学歴も記憶力だけで突破したものであって、自分の頭で思考をまとめることが全くできない人間でした。
モヤッと言いたいことがあっても、それをクリアに整理できないから人に伝えることもできない。
新卒で入った銀行でつまずき、3年目には鬱状態になった経験も。周囲に助けられたことでなんとか浮上しましたが、30代で転職した先のプラスで、大きな壁に直面しました。
物流企画のマネジャーとして迎えられたにもかかわらず、意思決定がうまくいかない。とにかく時間がかかったのです。

金融から物流という未経験業界への転職で、ビジネスの構造そのものをつかめていなかったことも原因でしたが、それにしても決められない。必死に伝えようとしても、「君が言っている意味が分からない」と返されたことも一度や二度ではありません。
僕が一つ一つ現象を検証し、三日三晩寝ずに考えて出した答えを、物流業界30年の前任者は5秒で出す。「経験がなければ勝てないとしたら絶望的だ……」と頭を抱えていたときに、知人が「そんなに悩んでいるなら、思考の訓練をしてみたら」と教えてくれたのがグロービスでした。
勢いで参加した体験授業で展開されたクリティカル・シンキングの説明は、まさに目からうろこ。「仕事ができる人はこれをやっていたのか!」と開眼し、その日に申し込んで通い始めました。
複数の根拠をそろえて、自分の言葉で結論を出す。この思考力を身につけたことで、僕の仕事人生は一変しました。何が変わったかというと、「リーダー」として立ち振る舞う自信がついたのです。
リーダーに求められるのは決断力です。
何らかの課題が発生し、「今、決めてください」と言われたときに、すぐに差し出せる“仮の答え”は常に準備しないといけない。独りよがりではない、説得力のある答えを早く出せるリーダーでなければ、チームは迷う。結果、組織は停滞し、不幸に陥るでしょう。
絶対の答えなんかどこにもありません。不透明で変化スピードの速い時代においてはなおさらです。
だからこそ、自分なりに論拠を示して伝える力が問われる。

身につけるべきステップは二つで、まずは型を知ること。次に、型を磨き上げること。
実は、この二つ目の“型を磨く”のステップが、仕事に活かす上では超重要なのですが、その方法についてはあまり語られていません。型を知るにとどまっては、宝の持ち腐れです。
第2話では、僕が実践してきたクリティカル・シンキングの型の磨き方について、初めてお話ししたいと思います。