
2022年2月1日
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竹下 農業に対する思い込みを取り払ってほしい、という言葉にハッとしました。なるほど、たしかにそれが必要なのかもしれないですね。
齋藤 ちなみに僕も農業に携わる事業者の一人ですが、田畑を耕したり収穫をしたりといういわゆる農作業はしていません。
従来の農業のイメージとは少し違うかもしれませんが、これも紛れもなく「農業」だと思うんですね。
精密機器と毎日向き合っているアグリストのエンジニアもそうです。農作業こそしていませんが、自分たちの力でピーマンやキュウリを育てることに貢献しているのですから、立派な「農業従事者」です。

竹下 彼らの技術によって野菜を育てているわけですからね。
齋藤 ビニールハウスで育っていくピーマンやキュウリを、パソコンの画面越しにデータ分析する。僕は、それもまた「農業」だと考えています。
今はちょうど、時代が移り変わるポイントに立っている。農業という概念も変化しつつあるんです。
今後は「農家というのはどんな人を指すのか」という議論も出てくるでしょう。
田畑を耕している人だけが農家なのか、農業ロボットをつくる人もまた農家なのか。農家と一口に言っても100万人以上いるわけですし、さまざまな農業の形があるんですよね。
今は、畑でつくったものをメルカリショップスのようなネットショップで売ることもできますよね。
「そんなの農業と言えないよ」と言う人もいるかもしれませんが、僕はそうは思いません。
私なりの農業、あなたなりの農業、さまざまある農業の形をそれぞれ認め合いながらやっていくという時代が来ています。誰もが自分なりの農業をやっていいんです。
佐々木 農作業の経験がない方も、ロボットがあれば参入しやすくなるかもしれませんね。

齋藤 そうですね。農業を始めるのがなぜ難しかったのかというと、「経験や勘」が求められるからです。
例えば、病害虫の状況や収穫量などを予測するのは、経験がなければ難しい。
でも、テクノロジーを駆使して画像データを収集し、過去の画像データと比較することで予測の精度を上げることができます。
また、AIが栽培方法を学習して教えてくれるので、初心者でも失敗しにくくなる。今後はますますそうした技術が発達していきますから、農業のハードルは低くなっていくはずです。
さらに、アグリストの事業としては「ビニールハウスパッケージ」というプランも考えています。
これは、ロボットによって最適化されたビニールハウスを丸ごと買えば、誰もが明日から農家になれるというものです。
ビニールハウスをスマホで購入して、データをもとに分析しながら農業をやっていく。これからは、そんな新しい形の農業も広がっていくのではないでしょうか。
竹下 農業の将来も含めて、世界の食糧問題についてはどのように考えていらっしゃいますか。
齋藤 具体的に考えています。例えば、アフリカなど食糧問題が起きている地域に、アグリストが開発したビニールハウスを建ててロボットを動かしていきたい。
現地で農業を発展させて食糧問題を解決しようと考えると、これまでであれば何年もかけて人から人へと農業技術を伝えていくしかありませんでした。
しかし、ロボットが技術を担えばどうなるのか。時間や手間をかけずに、いつでもどこでも実り豊かな農業が再現可能になるわけです。これまで農業が不可能だと言われてきたアフリカの砂漠のような場所であってもです。
世界中に日本の農業のノウハウを持っていって、食糧問題を解決する。それが、僕たちがみんなで達成したい大きなゴールですね。

ゆくゆくは、ロボットが宇宙で農業をして地球に食糧を供給するということも、夢ではなくなるでしょう。
そうしたビジョンを解像度高く語れるようになってきています。
食糧問題については、今この瞬間にも食べるものがなく亡くなる人もいる。
そんな状況を変えるべく、日本の農業テクノロジーを活用して解決に取り組んでいきたいと思っています。
佐々木 壮大なビジョンですね。しかも、言葉にブレがない。
齋藤 僕はこれまでに農業ビジネスを通して幸せになった農家さんたちの顔をたくさん見てきましたし、さまざまな地域の課題も解決してきました。
経済というと、お金儲けのスキルやツールだと考える人もいるかもしれませんが、決してそれだけではないんですよね。
だから僕はこれからも、資本主義の仕組みをうまく活用して、さらには世界とつながれる農業テクノロジーというものも活用して、地球規模でどこまで貢献できるのかを追求していきたいと思っています。
竹下 日本の農業の未来が楽しみになりました。齋藤さん、今日はありがとうございました。
(9 questions【映像版】もあわせてお楽しみください)