
2022年1月20日
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スタートアップ転職についてよくある相談が「どのステージのスタートアップに転職すべきですか」というものです。
スタートアップも、創業したてのシードラウンドから、1回目の大型資金調達を終えたシリーズ A、2回目のシリーズB、上場直前のシリーズなど千差万別です。最近では、上場後のスタートアップへの転職もとても人気になっています。
この問いに対する私の答えはシンプルです。
上場前の企業、具体的にはシリーズA、B、Cあたりのスタートアップを狙うのが、最も賢明だと思います。
シリーズA、B、Cであれば、まだ企業価値がそこまで高くなくて、そこから一気にバリュエーションが上がるポテンシャルがあります。
しかも、PMF(プロダクトマーケットフィット。商品やサービスが市場に受け入れられている状態)前のシード期とは違い、実績もある程度出ているはずなので外れる可能性も低い。
第5話で述べたように、投資企業のKPIや成長戦略や内部統制を把握しているVCに相談すれば、精度の高い意思決定ができるはずです。
さらにシリーズが進んでシリーズDやEになると、上場の可能性は上がりますが、配布するストックオプションの比率は下がる可能性が高い。
シリーズA、B、Cのスタートアップに飛び込む自信や勇気がなければ、シリーズE、Dでもいいですが、対価は大きくならないでしょう。
例外は、幹部として厚遇されるケースや、信託型ストックオプションを早期に発行していてキャピタルゲインの金額が大きくなりやすいケースです。ストックオプションの種類や条件によって話が変わってきます。
すなわち、リスクとリターンを踏まえて、もっとも魅力があるのが、シリーズA、B、Cのスタートアップなのです。
だが、日本では不思議なことに、すでに上場した「ポストIPOのスタートアップ」への転職が人気です。逆転現象が起きています。
理屈で考えると、大きなキャピタルゲインを得るチャンスのある、上場前のスタートアップの方が優秀な人材を集めやすく、逆に、すでに上場していて、成長率が鈍化しているスタートアップは人を集めにくいはずなんです。
中には、上場後も株価を数倍に伸ばせているスタートアップもありますが、そうした企業は多くありません。 しかも、幹部以外はストックオプションがもらえない企業も多い。
であれば、正社員として1社しか同時に働けないのであれば、わざわざ上場後のスタートアップに入る理由はないはずなのに……。
あえてポストIPO企業に入るとしたら、やりがいをしっかり見極めるべきです。その上で、高い成長率を維持していて、バリュエーションが過大ではなく、ストックオプションや持株会などの形で株価上昇の恩恵を受けられる企業に絞るのがいいでしょう。
もう一つ、転職者が勘違いしがちなのは、「大企業や大企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が投資しているから安心だ」ということです。
大企業と純投資のVCは、出資のロジックが異なります。大企業やCVCはバリューアップよりも、アライアンスの価値を見て投資をします。それに対して、純投資のVCはリターンにフォーカスして投資をします。
そのため、純投資のVCが投資を見送った結果として、大企業に出資してもらっているケースもありますので、その場合は注意した方がいいでしょう。
だからこそ、一般的な世間の基準で、スタートアップのポテンシャルを判断してはいけないのです。
スタートアップの転職先を選ぶ際に、もう一つ精査すべきは、「マネジメントチームの強さ」です。「勝てるチームになっているか」どうかです。
スタートアップの成否は、結局、チームで決まります。CEOや創業者の能力だけでなく、どんなチームになっているかを見るべきです。Pre-IPOでバリュエーションが高くなる可能性がある会社には、情報感度の高いメンバーが集まっています。
好例が、2021年に約156億円の大型調達をした、SmartHRです。
キーとなったのは、2017年7月にCOOとして倉橋隆文さんが入社したことです。倉橋さんは、マッキンゼー、ハーバードMBAを経て、楽天で海外子会社社長や社長室を経験し、楽天の事業を成長させた若手のエースでした。
SmartHRは2016年に多数のピッチコンテストで優勝していたので、いろいろな人が「自分をCXOにしてくれ」と当時社長だった宮田さんに売り込んでいたはずです。その中から、宮田さんは倉橋さんというベストな才能を選びました。
その後、宮田さんが、倉橋さんにうまく権限を委譲して、戦略立案やビジネスチームのマネジメントを任せたことで、SmartHRの成長が一気に加速しました。同社にはその後も、優秀な人材が続々と入社しています。
SmartHRに限らず、Pre-IPOの有望な企業は、上位レイヤーに優秀な人材を多く集めています。
メルカリも上場する時点で、経営者経験者が数十名もいました。それなのに当時の取締役は4人ですよ。つまり、経営経験豊富なメンバーがCXOではなく、各部門のマネジャーとして仕事をしているわけです。
ビッグゲームをみんなで勝ちに行っているーーそうした優れたチームを持つ企業にこそ、入社するべきなんです。