
CMOになるため20代、30代、40代にやるべきこと
聞き手/佐々木紀彦 撮影/林 直幸
マーケティング分野のプロとして注目が高まるCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)。CMOとはどんな仕事で、どんなスキルセットが必要なのか。第1回は、リクルート、ヤフーなどを経て、現在、イーデザイン損保のCMOを務める友澤大輔氏のスキルセットを解読する。
20代は強みを作り、30代で転職を
――今後CMOを目指す人がより増えそうですが、CMOを目指す人に対して20代、30代、40代の年代別にどうアドバイスしますか?
スタートアップでも大企業でも、20代の人たちは、失敗を恐れず打席に立ってバットを振ってください。成長できるか成長できないかの大きな差は、振ったバットのフォームを後で振り返れるかどうかです。

成長できる人は挑戦力と修正力がある人です。いきなりバットに当ててホームランを打てる人は天才ですので、大半の人は経験しながらバットに当てる感覚を学んでいきます。
その都度、軌道修正することになりますが、それを誰とやるかがポイントです。「こういうふうにバットを振れば、うまく当たるよ」と的確にアドバイスをしてくれる上司がいれば社内でもいいですし、もしいないなら、社外の人からフィードバックを受ければいい。そうして自分の型を作っていく経験を20代のうちにできるといいですね。
――例えばスタートアップでデジタルマーケティング担当になると、CPI(インストール当たりの広告コスト)がいくらだとか、細かい数字を毎日チェックしながら、PDCAを回すことになります。これは毎日打席に立てるという意味ではいいのでしょうか?
それは一面としてはいいですが、数字だけでちょこちょこやる人はどんどん思考が縮小均衡化しかねません。テクニック論に陥りがちになります。
20代は自分の強みを作ることが大切なので、デジタルマーケティングに集中するのもいいですが、30代以降には一度転職や部署異動や昇進をして、学んだことを一回壊せるといいですね。アンラーニングして、新しい施策に挑戦するのです。
例えば、デジタルだけやってきた人は、マスメディアの担当をしたり、獲得系のマーケティングをやってきた人は、ブランディングやPRもやるとか。そうすれば、スキルの幅が広がります。
――30代はどうでしょうか?
30代ぐらいから、スタートアップでも大企業でもマネジメントのレイヤーに入るので、いわゆるコンピテンシーが大事になります。より判断力を養ったり、テクニックを超えたものが問われ始めます。
そのためにも、極力、20代とは異なる業界に飛び込む方が、自分を研ぎ澄ますことができます。20代での転職はあまりお勧めしませんが、30代はもっと転職したらいいと思います。
3つの強みがある人はCMOコースに
――完全にマネジメントレイヤーに突入する40代はどうするのがいいでしょうか?
40代は大企業でもスタートアップでも大きな分かれ道です。
スタートアップでは、40代のCMOは今後どんどん増えてくるでしょう。あくまで個に振り切って自分の名前で勝負するか、ピープルマネジャーとして組織の中で自分を生かしていくか。そのどちらかに分かれる傾向があります。

40歳までに、自分の明確な強み、外の人にはっきり言える強みが3つ以上ある人は、CMOコースに行った方がいいでしょうね。
一つの会社にこだわらず、自分の強みをさらに尖らせて、副業もいろいろやればいい。様々な機会を通じて、世の中に発信していきながら、時に叩かれ、時に持ち上げられながら、価値を高めていくのもいいと思います。
逆に、それが言えない人は、人を生かすピープルマネジメントの道を進んだ方がいい。個よりも組織全体をチアアップして、下からグーッと引き上げていく方がいいですね。その役割のトップとして執行役員になるイメージです。
私の考える私の3つの強み
――友澤さんご自身は自らの3つの強みをどう定義していますか?
1つ目に、私は複雑な状況のものを構造化・抽象化して人に話して、納得してもらうことには長けているつもりです。そういう意味でプレゼンテーションなり登壇なり、話によって共感してもらうことはできると思っています。
2つ目に、イノベーションを起こすためには、コミュニケーション、モチベーション、コンフリクション、ハレーションが大事なのですが、その中で私はコミュニケーションにこだわっています。
コミュニケーションがあるとモチベーションをつくることができて、それがイノベーションにつながります。この相対にいるのがハレーションとコンフリクションで、これを抑える根回しみたいなものは得意ではないですが、スタートアップの人よりは圧倒的に強いと思います。

――スタートアップの人は根回し的な調整が苦手です。
そうですね。「最後にここで落としどころをつくる」とか、「これだけは絶対にやりたいから時間をかけて説得する」といった調整力が問われるところです。
そして、3つ目が、テクノロジーを自分の中に取り込んで、課題を解決するために用いる力です。テクノロジーの力を借りながら、失敗を恐れずに爆速で前に進めるのは結構長けていると思います。
――今後もCMOの定義や、求められるスキルセットは変化すると思うのですが、今後3〜5年を見据えて、特に注目していることはありますか?
第3話で話したエフェクチュエーションがより求められるでしょうね。

従来は自分たちの大きな会社の中で、自分たちの商品をどうプロモーションしていくかの時代でしたが、今後はマーケティングの中でもイノベーティブに何をしていくのかが強く要求されます。商品だけでなく、その会社やマーケターがイノベーティブかどうか。それ自体がブランディングにもなるしPRにもなります。
だからこそ自分たちの今までの活動をちゃんと自己否定して、新たなものにしっかり挑戦することがマーケティング領域でも求められるのです。
CMOは宣伝部のトップみたいなイメージがまだありますが、それはプロモーション分野のトップでしかありません。矮小化されすぎです。
今後のCMOは、社内のイノベーションを先導するような存在になれるし、なるべきだと思います。元P&Gで現在ファミリーマートのCMOを務めている足立さんはその最たる例です。
――その意味では、CMOは経営者へと直結するポジションなのでしょうか?友澤さんも社長になりたいという思いはあるのでしょうか?それとも、CMOを極めていくのでしょうか?
今の私の状態を話すと、イーデザイン損保のCMOをやりながら、副業もいくつかやっています。前職のパーソルグループとも関わっていて、パーソルテンプスタッフのデジタル戦略アドバイザーをしています。
つまり、私としては、一つの会社のトップになるよりは、いろんな会社でマーケティングやイノベーションのトップオブザトップとして関わっていきたいと思っています。デジタルやインターネットの力を使って、日本企業を元気にして、結果的に、業界を変えていきたいのです。
東京海上グループがまさにそうですが、それが実現できる場所で、私が求められる場所であれば、経営にコミットしながら関わりたいと思っています。できれば5社くらいマルチな形でCMOをできるのが一番いいですね。そうして本当のプロCMOになっていきたい。しかもそれを、外資系ではなく、日本企業でやり切りたいと思っています。
