
2022年10月9日
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アトム以降「ロボットアニメブーム」「怪獣ブーム」「スポ根ブーム」など、1つの大ヒットが起こると、各社が類似の作品をかき集めてアニメ化し、子供向けの菓子・玩具メーカーがスポンサーとなったが、商品が売れないとみるや、次に行こうとあっという間に打ち切りになった。
テレビ局アニメ時代は、スポンサーとなる広告主から集めた「番組提供費(CM枠代)」5千万円分の広告費を、電通などの代理店が1千万を取り、系列の地方局に2千万を配分し、東京キー局が残った2千万のうちの半分の1千万でアニメ制作を委託する、というのがオーソドックスな形だった。
広告主は広告費用だけで、その意向の影響力はあったが、著作権という意味では100%発注主であるテレビ局であった。

では肝心の「テレビ」での視聴率はどうだったかというと、視聴率は落ち続けている。1970年代が最良の時代だろう。
世帯普及率100%に近づいたカラーテレビの電波にのせて、色鮮やかな『サザエさん』や『ドラえもん』が日曜18時半という習慣化された枠で毎週放送され続けた(ちなみに50年を超える放送を続ける『サザエさん』はギネス世界記録を保持している)。
1980年代まで30%を維持していた“お化けアニメ番組”は、2000年代には20%代、2010年代末には5%代にまで落ち込んでいる。これは『クレヨンしんちゃん』も『名探偵コナン』も等しい状況で、個々の作品の出来不出来によるものではないことは一目瞭然だろう。
ゲームチェンジャーとなったのは『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)である。(現在の委員会の仕組みとは違ったが)テレビ東京、日本アドシステムズやキングレコードなども絡めて製作された同作は、“製作委員会方式による成功作”として取り上げられた。



視聴率を目的とした番組提供費は切り捨てて(通常のCM営業は行って枠売りはする)、毎週放送の12話3カ月モノのアニメ製作費1.5億~2.0億円(1話1千~1.5千万円)を3~10社程度から集め、「皆で所有して、皆で広げる」アニメが一般化する。
上の図のように年100本から2倍、3倍と大量のアニメ作品が作られるなかで、現在はほぼすべてが委員会式である。
これまで視聴率ベースで商品の販促に使っていた企業が、出版・代理店・商社・映画配給・ゲーム・玩具業界から、「アニメそのものに出資してビジネスをする」形式に変わる。
実際に作っているアニメ制作会社自体は同じでも、投資家・プロモーターとしての企業数が数十倍に膨れ上がったのである。
10社程度のキー局・準キー局が100社のアニメ制作会社に委託して作っていた時代から一変し、数百社のアニメ関連企業が投資・委員会のプレーヤーとして参入し、300~800社のアニメ制作会社に委託する(こちらも5%など部分的に出資して権利を持つ)時代に入る。
これには収益源の多様化も影響している。スタジオぴえろ制作、フジテレビ放送の『うる星やつら』(1981~1986)を33万円の豪華LDセットで売り出したところ、6000本が完売している(2億円の収益)。
また『となりのトトロ』(1988)も放映から2年ほどして関連グッズの商品化売り上げがぐんぐんと伸びた。
視聴率の良しあしと菓子・玩具の短期的な反響だけでなく、中長期的に権利資産としてファンになったユーザーが商品を買ってくれる。
またアニメで育った“オタク”世代が、数万円といった出費を惜しまない時代になった。
そうしたなかで、これまでは見られなかった「ニッチ」なジャンル、萌えアニメからエロアニメまで作品のすそ野は爆発的に多様化する。
こうなってくると平日夕方やゴールデンタイムといわれる「子供を含めて家族で見るアニメ」という時間帯の必然性もなくなってくる。
下の図を見ると、1990年の東京キー局5局のみで放映されていた時代から、2005年ごろの全国系列局が少なく番組提供費も低いテレビ東京が半数を占める時代になり、同時に半分近くが0~6時の深夜帯に放送されている。
2010年代になるともはや印税や提供費のいらない東京MXが強くなり、人々が起きている全日帯のアニメが完全にマイノリティとなっている。

1990年代までのアニメと、2000年代からのアニメは、放送局も時間帯もがらりと変わり、すなわちターゲットも中身も異なるところとなり、同時に出資者や担い手までもが変わったのである。
『鋼の錬金術師』(2003)や『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)が生み出されてくる理由は、こうした時代背景の劇的な変化の中にある。
そして今海外で多くのファンを引きつけているのは、まさにこの20年間に独自進化した深夜帯・大人向けアニメなのだ。
これがそこから10数年たった動画配信の時代になって、日本コンテンツに思ってもみなかったキャラクター大活況時代を演出する起爆剤となる。
いまだ3カ月ごと、30分ずつの週次放送、という「テレビアニメ」時代の慣習は続いているが、もはやアニメは「テレビ」アニメではないのだ。
*本連載は毎週日曜日に更新します。第32話は10月16日に公開します。