
2022年2月1日
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小林 自民党、そして政治家をアップデートしていくために、これから何がカギになるかと言うと、政治家としての“スタイル”の転換です。
私は従来の「陳情受け付け型」から「提案コーディネート型」への転換を提唱しています。
昭和、特に戦後は道路もインフラも整っていなかったので、地元の人から出される「ここに道路が整備されれば、この街は発展する」といった陳情を聞き、それを実行するだけの一方通行のコミュニケーションで良かった。
一方、昨今は貧困や人口減少のような複雑な課題を扱わないといけません。地元の人の意見を聞くだけでは、どこに「本当の課題」があるかわからない。
竹下 時代の変化と共に、課題の見極め方も変わったのですね。
小林 複雑すぎて誰も「本当の課題」がわからないから、多くの人とコミュニケーションを取りながら模索する。地元の人だけではなく、日本中、あるいは海外まで巻き込むかもしれません。
あらゆる場所から知恵を集めた上で、地元の当事者と一緒に、「本当の課題」を見つけて解決策を実装しないと結果が出ない。
「提案コーディネート型」のリーダーに変われるかどうかが、これからの政治家にとって重要なテーマになると思っています。
佐々木 企業でも同じような変化が起きていますよね。上司が上から目線で部下を指示するのではなく、1on1やコーチングを取り入れて一緒に課題を発見し、解決する。
小林 伴走型ですね。NTTドコモで営業をしていたときも経験しましたが、解決策を相手に一方的に押し付けてもうまくいかない。
しかも、お客さんから相談されている課題は、あくまで一部分でしかないことのほうが多い。
だから、一緒に掘り下げて「本当の課題」を見つけないと、本当の意味での価値提供はできません。
佐々木 やはり営業マンとしての経験が生きていますね。
小林 生きています。NTTドコモの2年目に、大きな取引を失注してしまった経験があります。
課長に言われた提案をそのまま持っていったところ、相手を怒らせてしまったのです。しかも、当時所属していた支店で一番大きな顧客でした。
竹下 それは悔しいご経験でしたね。
小林 失注したこと以上に、誰のせいにしていいのかわからないことが悔しかった。自分で決めずに、言われたものを持っていっただけだったので、自分で責任が取れないことを痛感しました。
そしてこの失敗を機に、「誰かに任せるのではなく、最初から自分でつくろう」「仕様を決めるところから自分でやろう」と決めました。
誰かに任せて失敗したら、腹立たしさをどこにも持っていきようがないことを身をもって知ったからです。

竹下 そこで課長のせいにはしなかったのですね。
小林 課長に提案を任せたのは私ですから。本当は私が課長を説得しなきゃいけなかった。
政治家になった今、私が直接関係者に会いに行き「本当にそう思っていますか?」「本当にそれが課題ですか?」とコミュニケーションし、巻き込むプロセスを厭わないのは、あのときのつらくて悔しかった経験と大失敗が糧になっています。
政治家として、日本の社会システムの仕様書、つまり国の根幹になる法律や制度をつくることに携わっているからこそ、人任せにしたり妥協したりしたくない
佐々木 なるほど。政治家の役割は、「日本の仕様書をつくること」なのですね。
小林 そうです。「日本の仕様書をつくる。そこのリーダーシップを取りたい」というのが、私が政治家になったきっかけです。
佐々木 最後の質問です。『文藝春秋』の2022年2月号に掲載された「5年後の総理予測ランキング」で、小林さんも7位にランクインしています。
「日本の仕様書をつくる」ために総理にならないといけないのか、ならなくても日本の仕様書を変えられるのか。5年後のビジョン、野心を教えてください。

小林 デジタル臨調の集中改革期間が3年。そこで規制改革の法改正が行われると1、2年後に施行、運用が始まります。
つまり5年後には、デジタル臨調で見直した規制改革が運用され始めています。その頃には「組織のために個人がある社会」から「個人が輝く社会」に変わっていてほしいですね。
けれど今、佐々木さんから求められている答えはズバリ、“どんな役職につきたいか”ですよね(笑)。
佐々木 はい、「総理になります」といったご回答はないですか(笑)。
小林 それを期待されているのでしょうけれど、私自身は目の前の役職や立場は気にしていません。政治家を9年やる中で、ポジションが変われば物事が実現するまでのプロセスが短縮されることは実感しました。
一方、どこの役職や立場にいてもプロセスを踏めば、物事が実現できるのを1年目から感じてきました。これからも役職や立場に拘らず、政策を実現していきます。
佐々木 政治家である以上、最終的には総理を目指したいのでは?
小林 政治家になろうという人は「何かになりたい」というより、「社会課題を解決したい」「こういう社会をつくりたい」という思いでなっています。
だから「この役職や立場でないとできない」と考える人もいれば、「別に役職や立場がなくても実現できる」とこだわらない人もいます。そこは人によって違うと思いますよ。
佐々木 たしかに。ビジネスでも、社長になること自体が目的化したらよくないですね。「何になるか」ではなく「何をしたいか」が大事だと考えているのですね。
小林 はい。だから私は「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を作る」というミッションに従い、全力を尽くすだけです。
佐々木 もう一つ、最後に聞きたいのですが、ビジネスパーソンが政治家との絡み方が分からずに困っていると思うんです。「政治は汚い」「政治に関わると危ない」と二の足を踏んでいる人がいまだに多い。
小林さんの立場からすると、ビジネスパーソンは政治とどう絡んでほしいですか?
小林 まずは“先読み”に使ってもらうと良いと思います。
法改正は、まさに「日本のシステムの仕様書を変える」ことです。「システムの仕様」が変わったら、そこで動くアプリケーションも変わります。
このアプリケーションがみなさんの生活やビジネスなのです。だから「どの法律が変わろうとしているのか」を見るだけで2年後の未来が見えてきます。

佐々木 おっしゃるとおりですね。政治の動向を敏感に知ろうとすることが、ビジネストレンドに対する感度とも直結する。
小林 まずそこから始めてみる。その先で「日本の行き先が変じゃないか?」「仕様の方向が合わないんじゃないか?」と違和感を抱いたら、政治と一緒に仕事をして仕様書を修正していただく。
もっと本質的に仕様書を変えたいという欲求が強くなったら、政治家に転身してもいいかもしれません。
竹下 分かりやすいですね。政治を変えることがOSを変えるみたいなイメージになり、かなり見方が変わりました。本日はありがとうございました。
(9 questions【映像版】もあわせてお楽しみください)