
出産前後のブランクを 「無痛分娩」でカバー
構成/宮本恵理子 撮影/林 直幸

――これまでのお話から、家族の協力や社会インフラをフル活用して子育てと事業を両立している様子が分かりました。出産の前後のブランクに関してはどう対策しましたか?
私の場合、計画無痛分娩を選択したことで、時間的にも体力的にもかなりの負担を軽減できました。
実際には計画の半日前に陣痛が来たので、陣痛の感覚は経験したのですが、麻酔のおかげで一番つらいと言われる痛みはまったくなし。気持ちよく分娩を終えることができて、聞いていたとおり、産後の回復がめちゃめちゃ早かったです。
もちろん個人差はあると思いますが、私の場合は体質にも合っていたようで、産後1週間後にはほぼ体力が戻っていました。「1カ月は寝ていなきゃダメ」という時代に出産した母からすると信じられなかったみたいです。

――無痛分娩に対してはさまざまな意見がありますが、岩崎さんにとっては満足できる選択だったということですね。
大満足ですし、「これまでの人生で使ってよかった10万円のお買い物ナンバーワン」だと周りにも勧めています。
「お産の痛みを味わってこそ母親」という意見もありますが、たとえ無痛でも出産は命懸けです。痛みが軽減することで出産の日をハッピーに過ごせるのならそのほうがいいと私は思います。
子どもの誕生をゆとりを持って迎えて、母親にとってもハッピーな日になるほうがいいじゃないですか。
――出産でも事業でも「こうあるべき」という従来の価値観や常識をアップデートしようという姿勢が共通していますね。資金調達直後という大事な局面で長期の休暇取得を可能にする準備は?
出産予定日に合わせて、私がいなくても事業が回るようにチーム体制を組み、早めに準備を進めていました。事前計画を立てやすくするためにも、計画無痛分娩という選択は合理的だったんです。
あと、私自身の失敗から得た反省もありました。実は妊娠中に子宮筋腫が見つかって急に入院したことがあって。そのときは引き継ぎの準備ができていなかったことで、メンバーにもすごく迷惑をかけてしまったんです。
自分の仕事の進捗を見える化してチームに共有することの重要性を身をもって学んだので、出産のときには入念に準備できたと思います。
――子育てを効率化するための工夫は他にもありますか?
言葉やスキンシップで愛情を伝えることは大前提として、手を抜いていいところは抜く。メリハリが大事だと思っています。
弊社の株主でもあるけんすうさん(アル社長の古川健介氏)が送ってくださった「子育てに役立つ買い物リスト」も役に立ちました。中でも子どもを乗せて適度に揺らすことができるバウンサーは寝かしつけに大活躍でしたし、睡眠中も心拍をチェックするセンサーも使いました。

生後半年くらいまでは突然死のリスクもあるので、すやすやと寝息を立てていても心配になっちゃうんですよね。センサーを起動させていたら、その間は集中して仕事ができるので欠かせないアイテムですね。
あと、両親や義理の両親に息子を見てもらうときの情報共有ツールとして役立ったのが「ぴよログ」というアプリです。これはミルクをあげた時間や量、おしっこやうんちが出た時間を記録して家族間でシェアできるアプリで、預けるときに欠かせない「申し送り」が不要になるので超便利。
預けている間も、「あ、今さっきミルク飲んだんだな」と遠隔で様子がチェックできるから安心なんです。このアプリは担当VC(当時)の一人、根岸奈津美さんから教えてもらいました。
今は子育てを効率化するベビーテックのプロダクトやサービスがかなり充実してきましたし、上手に使いこなしている先輩の知恵も集めようと思えば集められる。積極的にアンテナを張って情報収集することが、日々の子育てをラクにするポイントだと思います。
――最新のテクノロジーもフル活用して、肩の力を抜いて子育てと事業を両立しているのですね。
出産の前後で比較すると、むしろ仕事の生産性は上がりました。「原則18時半までしか働かない」というリミットがあるから、無駄な業務は徹底的に省きますし、本当に事業のためになる仕事に集中するようになりました。

保育園に送った後の始業が8時台と、以前よりも前倒しになったので特に午前中の生産性が上がりましたね。集中して考える作業を午前のうちにできるのは、経営者としては大きなメリットです。
「でも夜の時間帯が不自由では?」と言われがちですが、産前に何をしていたかというと飲みに行くか、家でゆっくり過ごしていたくらいなので、仕事に集中する時間はあまり変わらない。むしろ増えたかもしれないとさえ思うほど。工夫次第でなんとでもなるよと、私よりも若い人たちには言いたいですね。