
2023年10月23日
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― 2023年9月、ウシオ電機・Photo electron Soul・みずほ銀行の3社の資本業務提携が発表されました。まず、このタッグの中心となったPhoto electron Soulの技術について、代表取締役の鈴木さんよりお願いします。
鈴木 当社は2015年に創業以来、「半導体フォトカソード技術」を強みとしています。現在の事業ターゲットは半導体デバイスの欠陥検査です。半導体デバイスの中から微小な欠陥箇所を発見するのは難易度がとても高く、例えるならば超高層ビル群が立ち並ぶ大都会に潜む〝アリ1匹〞を見つけるのと等しいといわれています。この課題を半導体フォトカソード電子ビームによって解決しています。
― この技術によって、どんな社会課題の解決につながっているのでしょうか。
鈴木 半導体の検査がより効率的かつスピーディーにできるようになるので、半導体の生産性が劇的に増します。つまり、高性能な半導体チップが早く大量に市場供給され、さまざまな製品に搭載されることになります。
結果、エンドユーザーが利用するスマートフォンや電化製品などもどんどん高機能化するメリットにもつながると考えています。

― 一般ユーザーにもメリットがあるということなんですね。そんな技術をお持ちのPhoto electron Soulとウシオ電機との業務提携にはどんな期待があったのでしょうか。
小島 ウシオ電機はもともと光技術を強みとし、半導体製造に用いる光源ランプで世界的に高いシェアを持っています。同社の馬場さんは新事業の創出に取り組まれていることもあり、次に進出する新しい領域を探されていました。
一方で、Photo electron Soulは電子ビームを作る唯一無二の技術を持ちながら、販路拡大やメンテナンス、海外展開について課題を抱えていました。両社には半導体という共通項があったため、シナジーが生まれるのではないかというイメージが明確に描けました。そこで、両社とお付き合いのあった私たちが〝つなぎ役〞となってご紹介したという経緯です。
鈴木 我々としては、ウシオ電機のご実績やリソースを生かして、短期間での当社製品の量産にご協力いただきたい、アメリカや韓国、台湾などの海外市場へ短期で展開できる仕組みを整えたいという願いがありました。その構想がバチンと合ったのではないかと思います。
馬場 大学発のスタートアップが盛り上がっていることはもちろん承知していましたが、正直、名古屋大学に関しては念頭に置いていませんでした。小島さんからお話を聞いたことをきっかけにPhoto electron Soulについて調べたり、社員を連れて見学に行ったりする中で、「とても良い機会をいただけた」と実感できるようになりました。

― お三方の出会いについて、詳しく教えてください。
小島 私は5年ほど前からPhoto electron Soulに注目していまして、社長の鈴木さんから「〝50年に1度〞と言えるほど高性能の次世代型電子ビームを製造している」というお話を聞いていました。
一方で、ウシオ電機の馬場さんが新しく進出する領域を探していることも知っていました。「まずは気軽にお会いしてみませんか」と私から両社にご提案したのが2022年3月のことです。
馬場 その約3カ月後に鈴木さんにお会いして、施設も見学させていただきました。実は 当時は見学してもあまりピンと来なかったんですよね(笑)。これは鈴木さんのキャラクターでもあると思うのですが、あまり過剰なリップサービスもされなかったですし。
小島 非常に先進的で優れた技術を開発していながらも、淡々と事実を述べるに終始して、自ら積極的なアピールはしない謙虚な経営者が時々いらっしゃいますが、まさに鈴木さんはそのタイプですね。
だから馬場さんも最初はビビッとは来なかったのだと思いますが、その後に馬場さんが技術者を何人も連れて再訪を重ねるうちに、急速に目線が合っていった印象があります。

― ウシオ電機から何人くらいの方がいらっ しゃったんですか。
馬場 20人くらいですね。スタートアップへの投資のために、こんなに大人数を連れて行ったのは初めてでしたよ。
小島 私たちは日ごろ、大企業がオープンイノベーションに挑戦する際のお手伝いもさせていただいていますが、「いかに社内に味方をつくるか」が課題になる企業が多いと感じています。その点、馬場さんの類いまれなる「巻き込み力」を発揮されている姿を拝見した際にはとても感動しました。
鈴木 同感です。きっと社内にも温度差があったはずですが、我々に関心を寄せる可能性 のある方々をスクリーニングしてリストアップ し、積み上げていかれる手法は非常に参考になりました。エスタブリッシュな歴史の長い会社で活躍するリーダーは、こうして人を 動かすのだと学びました。
馬場 個々の社員のパフォーマンスを最大限に発揮するのが管理職や上層部の役割ですから、そのきっかけとなる新しい機会を提供するために、私も一生懸命汗をかきました。
小島 ウシオ電機の技術者の方をPhoto electron Soulにお連れしたとき、皆さん目の色を変えていましたよね。
馬場 社に戻った後、みんな口をそろえて「あの会社と一緒にやるべきだ」と言うんですよ。出資担当者としては冥利に尽きますね。ウシオ電機のみんながこの技術を好きになってくれることが、出資する上では大事なことですから。偶然にも我々が半導体の事業領域に進出していたことも、功を奏したのかもしれません。
鈴木 そうかもしれませんね。ウシオ電機の技術者には当社の技術に注目される方もいれば、当社の技術の可能性についてお話ししてくださる方、ウシオ電機の光技術の強みと当社の技術や製品をミックスしてできることをお話ししてくださる方もいて、新しい視点や洞察をいただけてありがたかったですね。

馬場 ギブアンドテイクということでお互いを訪問したほうがいいだろうと考えて、Photo electron Soulの社員の皆さんにも、出資前にうちの工場を2ヵ所見ていただいたんですよね。
鈴木 ありがたかったです。実際に見に行くと、想像以上に技術的な親和性があり驚きました。うちのCTOとウシオ電機のエンジニアのディスカッションが盛り上がりすぎて、私は完全に置いてけぼりにされていましたね(笑)。
ビジネス担当者も馬場さんと話をガンガン進めていて、「おいおい、私を置いていくなよ」と言いたくなるほどでした。
一相思相愛のもとで資本業務提携が実現したんですね。
鈴木 そうなんですよ。本当に天の采配というか、何かに引き寄せられたというか。
小島 たしかに。見えない引力で3社が引き寄せられたような感じがありましたよね。
鈴木 あまり論理的な話ではないんですが、何か見えない力がはたらいていた気がしますね。そのきっかけをつくっていただいたみずほ銀行の皆さんには感謝しています。
一今回の提携では、みずほ銀行で今年2月に新設された「価値共創投資」を適用したと伺いました。これはどういうものなのでしょうか。
小島 価値共創投資は、「お客さまが取り組む新事業や社会課題解決の取り組みにおいて、みずほ銀行が価値提供できる領域では、大企業と一緒にリスクをシェアして出資していこう」とする取り組みです。今回の提携においても、行も出資をする形で参画しています。
一みずほ銀行が「価値共創投資」に取り組む意義とは?
小島 出資を通して業界の動向や潮の変わり目をよりビビッドに感じ取ることで、みずほ銀行が今後どういう方向に進むべきかが見えてくるでしょう。我々の部署では新しい領域に挑戦する企業を多く担当していることもあり、課題を発見したらフットワーク軽く動いて解決に導くこともできます。
一出資先の企業にとってのメリットはどのようなものですか?
小島 みずほ銀行の国内外のネットワークをフル活用していただける点ですね。事業戦略にもとづいて、アライアンス候補先などに関する情報提供も積極的に行う用意がありますし、資金が必要になった際も銀行としてしっかりお支えします。
一銀行が融資ではなく、出資することはどうお感じになられましたか?
馬場 驚くと同時に、みずほ銀行の本気度を感じましたね。自らリスクをとって腹をくくってイノベーション企業支援に取り組もうとする姿勢はとても素晴らしいと思います。

小島 本取り組みを通じて今回の提携に貢献できることとなり、うれしく感じています。銀行は融資に慣れてしまっているので、正直当初は、実際に出資の枠組みを使うのは難しいのではないかという懸念はありました。
一方で、今回のフェーズで融資のみでご支援させていただくことには違和感も覚えました。「やはり、事業の成長加速が見込める今こそ出資すべきだ」と考え、今回の「価値共創投資」に踏み切ったのです。
― 出資の決め手は何だったのでしょうか。
馬場 成長戦略との合致です。「半導体領域でしっかりと会社全体の成長戦略を描きたい」と考え、その武器となる技術を探していたタイミングで鈴木さんの会社の技術に出合い、「我々が成長する上で欠かせないものだ」と判断し、出資を決めました。
小島 一番の決め手は、両社がやっていけそうなイメージがとても鮮明に描けたことですね。社会的な意義が大きな挑戦であるがゆえに、それだけインパクトを起こすまでの時間はかかることは予測できました。両社を見ていて、「 3〜5 年はかかりそうだが、確実に変わっていくぞ」と確信したんですよ。
馬場 何がきっかけで確信できたのか、知りたいですね。
小島 相互訪問された後の皆さんの表情が目に見えて変わったからですね。両社のコミュニケーションがなんだか楽しそうに見えたんですよ。Photo electron Soulの皆さんもお話しするときの表情が今までと異なっていましたし、ウシオ電機の社員の方々も気分の高揚を隠せない様子でした。
その雰囲気が、まるで少年の頃のように興奮しながら秘密基地にこもって、新しいモノを生み出そうと相談しているように見えたんですよね。
馬場 なるほど。たしかに「秘密基地」でひそかに壮大な計画を立てているような雰囲気はあったかもしれないですね。「ここからすごいビジネスを生み出すぞ」という同じ夢を描ける感覚がありました。
― 大企業との連携によって、大学発の研究開発型スタートアップが多く誕生することは、 日本の経済の起爆剤として期待できます。そのための課題や必要なアクションは何だと思いますか?
鈴木 まず、大学発スタートアップの技術の質を磨くことは必須ですね。
馬場 それは大事ですね。一方で、大企業側からすると、研究開発型スタートアップの経営者が少々尖り過ぎているという印象を抱くことも少なからずあるんです。結果、せっかく〝お見合い〞が実現したとしても、次の〝デート〞に 進むのに難航するというケースも聞かれます。
小島 たしかに。大企業と大学発スタートアッ プでは組織上の事情やカルチャーが異なる 部分もあるので、とっつきづらいところがあるかもしれません。
大学発スタートアップは、非常に先進的な技術開発に挑んでいる企業が多く、ゆえに「分かりづらさ」の課題も抱えがちです。その価値をいかに世の中に分かりやすく、かっこよく伝えて理解を得るかが大事になってくるのではないでしょうか。

馬場 当社の場合、出資するときは自社とスタートアップがともに成長できる「戦略投資」 となることを条件としています。両社のフィーリングがしっかり合うように柔軟性を持ちながら、自社の姿勢をお互いに調整していく必要があると思いますね。
そのプロセスに向けては中立的かつ両社の事情を熟知している方にお引き合わせいただくことが不可欠です。今回、みずほ銀行が立ち回ってくださった役割がまさにこれであったと思います。
― 最後に、皆さんが描く未来について教えてください。
馬場 私たちが子どもの頃には想像もできなかったスマートフォンが今普及しているように、10年後、20年後にはもっと想像できない現象が身近に起きているでしょう。その中心となるのは、やはり最新の技術です。
特に半導体は最新の技術を支える重要な存在であり、幅広いソリューションやプロダクトとひもづきます。日本で半導体事業に携わる人が増えれば、みんながもっと豊かになれる社会が実現するのではないでしょうか。
鈴木 半導体って、実際に削って見てみると、本当に人が作ったものとは信じがたいほど繊細で精度も高いものなんです。純粋に感動します。今後も高度なものづくりを支える役割をしっかり果たしていきます。
ウシオ電機、みずほ銀行とのシナジーにとって、質の高い半導体デバイスがより一層普及される世界を開拓していきたいなと思います。
小島 この両社が組めば、ものすごく明るく照らせるビームを使って今まで見えなかったものが見えるようになる未来が実現すると確信しています。電子顕微鏡の世界も変えるかもしれないし、ビームで何か描いたり、宇宙空間でも新たな用途に生かせるかもしれません。
ウシオ電機の持つ光学技術も合わせて、同社のコンセプトである「人々と社会の未来を照らす」をこの3社で実現していきたいですね。
