
【成功体験を効果的に伝える簡単テク】
1.4万回視聴
2025年10月2日
最新脳科学で分かった子どもの「脳」を傷つけないために親がやるべき事を解説。また、成功体験を効果的に伝え、子どもの脳に良い効果をもたらすテクニックを伝授。 <ゲスト> 友田明美|小児精神科医/福井大学 子どものこころの発達研究センター教授 専門:小児発達学、小児精神神経学 熊本大学医学部医学科修了後...
親のストレスが子どもの脳に影響を与える?「マルトリートメント」の連鎖を断ち切る新常識
子育ては多くの喜びをもたらす一方で、親には大きなストレスと責任がのしかかる。仕事や日常生活でストレスを抱える親が増える中、その影響が子どもの脳や発達に及ぶ可能性が指摘されている。「マルトリートメント」、つまり子どもの脳を傷つけ得る不適切な関わりは、決して特別な家庭で起こるものではない。本稿では、親のストレスが子どもに与える具体的な影響から、そのストレスを客観的に評価するツール、そして科学的に効果が証明されている「ペアレントトレーニング」といった解決策まで、子育てを成功に導くための新たな知見をQ&A形式で解説する。

この情報を参考に、完璧を目指すのではなく、より良い親子関係を築くためのヒントを見つけ出してほしい。
Q. 親のストレスは、どのように子どもの脳に影響を与えるのか?
親のストレスは、時に意図せず子どもの脳の発達に悪影響を与える。心理学の世界では、「マルトリートメント」という言葉が、直接的な虐待でなくとも子どもの心身に有害な影響を及ぼす不適切な養育全般を指すことがある。具体的には、親が仕事の失敗や日々の疲れによって精神的に追い詰められている場合、感情的になりやすく、その苛立ちを自分より弱い立場にある子どもにぶつけてしまう傾向が見られる。このようなストレス環境に子どもが常に晒されることは、脳の健全な発達を阻害し、精神的な傷を負わせる可能性が指摘されている。
子どもの脳が傷つくことを防ぐには、まず親自身がストレスを自覚し、その状態を客観視することが第一歩である。ストレスが高まっている自覚があるだけで、「子どもに八つ当たりしてしまうかもしれない」という危険を意識でき、不適切な関わりを抑制する効果が期待できるからだ。自身の心理状態を認識し、コントロールする意識が、子どもの健やかな成長を守る上で不可欠だ。
Q. 親のストレスレベルを客観的に測る方法は存在するのか?
親のストレスレベルを客観的に把握する方法として、「スマイル認知アプリ」のようなツールが注目を集めている。これは、子どもの笑顔をどれだけ正確かつ迅速に認識できるかを評価するアプリである。研究により、親のストレスが深刻化すると、子どもの笑顔といったポジティブな表情を認識する脳の認知機能が低下することが判明している。

多くの親は、子育てストレスに関するアンケートに対して「大丈夫」と回答しがちである。これは、自分自身がストレス状態にあることを認識できていない、あるいは認めたくないという無自覚な心理が働くためだ。アンケートでは本音が出にくい状況において、客観的なデータに基づいてストレスレベルを測れるアプリは、親が自身の状態を正確に把握する上で非常に有効な手段となる。子どもの笑顔が見つけにくくなったら、それは脳が疲労しているサインであり、専門家の助けが必要であると考えるきっかけになるはずだ。
Q. 親のストレス軽減と親子の脳の回復を促す「ペアレントトレーニング」とは何か?
「ペアレントトレーニング」、通称「ペアトレ」は、専門家が親に対して子育ての具体的なスキルやコツを指導するプログラムである。これは単なるカウンセリングではなく、行動変容理論に基づいて構成されており、子どもの好ましい行動を増やすための褒め方や、望ましくない行動への対処法を実践的に学ぶことができる。一般的には1〜2週間に1回の頻度で、全6〜7回程度のセッションで行われることが多い。

ペアレントトレーニングの最大の効果は、親のストレス軽減に留まらず、その脳機能の回復に貢献することである。トレーニングを受けることで、親の表情認知能力が向上し、特に他者の表情を認識する脳領域の血流が回復することが科学的に確認されている。これは、トレーニングが単に技術的な知識を提供するだけでなく、親自身の心理状態や脳の健康にもポジティブな影響を与えることを示唆している。
さらに驚くべきことに、親がペアレントトレーニングを受けて子育てスキルを改善すると、子どもの認知機能まで向上することが研究で明らかになっている。例えば、課題に対する反応速度などが著しく改善するケースがある。このことから、「親が癒され、子育ての質が高まれば、子どもの脳も回復する」という強力な因果関係が導き出される。子どもの健全な発達を願うならば、まず親自身の心身のケアが何よりも重要であるとこの研究は教えてくれるのだ。
Q. 子どもを効果的に伸ばすための具体的な褒め方と、困った行動への対処法とは?
子どもの自己肯定感を高める上で、「褒める」行為は非常に重要だが、その方法にはコツがある。直接的に「すごいね」「よくできたね」と褒めることも大切だが、さらに効果的なのは「間接的に褒める」方法だ。これは、例えば父親が帰宅した際に、母親が子ども本人が聞いている場所で「今日うちの子はこんなに頑張ったんだよ」「本当に偉かったね」と話す「耳打ち効果」と呼ばれるものだ。間接的に褒められた子どもは、単に嬉しいだけでなく、脳内でドーパミン(達成感や意欲に関連する神経伝達物質)やオキシトシン(愛情や信頼に関連するホルモン)が分泌され、より強い喜びと自己肯定感を感じやすくなる。
一方で、子どもが望ましくない行動をした場合、その対処法も重要である。危険が伴わない軽微な問題行動に対しては、感情的に怒るのではなく「積極的無視(スルー)」をすることが効果的だ。子どもは注目を得たくて問題行動を起こすことが多いため、それに注目を与えないことで行動を減らすことを目指す。親には、子どもが良い行動をするまで待つという「試練」が伴うが、望ましい行動ができた瞬間に「できるじゃない!」と即座に注目し褒めることで、良い行動が強化される。
ただし、スーパーなどで走り回るなど他人に迷惑がかかる、あるいは危険な行為の場合は無視できない。このような状況では、「タイムアウト」を設定することが有効である。具体的には、「あと3分経ってもやめないなら、〇〇という理由でそれはだめだ」と時間的な制約を設け、それでも行動が改善しない場合は、しっかりと向き合い、その行為がなぜいけないのかを伝えることが重要だ。
Q. 子育てスタイルは世代間で「遺伝」するのか、そして「褒め育ての連鎖」をどのように作っていくのか?
子育てスタイルは、親から子へと受け継がれる「遺伝」のような傾向があると言われている。自分が幼い頃にあまり褒められずに育った人は、大人になって親になった際、どのように自分の子どもを褒めてよいか分からなくなることがある。これは「マルトリートメントの連鎖」に繋がる可能性があるため、断ち切らなければならない負の遺産となる。
この負の連鎖を断ち切り、「褒め育ての連鎖」を作り出すためには、まず親自身が他者から「頑張っているね」と肯定的な言葉をかけられ、自信を持つことが第一歩だ。例えば、ペアレントトレーニングなどで専門家や周囲の人々からサポートを受け、自己肯定感を高める経験は、やがて自分の子どもを自然な形で褒める能力に繋がる。

子育ては、決して親一人だけで行う「無理ゲー」ではない。祖父母、保育園、子育て支援施設など、周囲のサポートを積極的に活用し、負担を分散させることが不可欠だ。そして、今子育て中の親世代を社会全体で支え、彼らが自信を持って子どもを育てられる環境を整えることで、その子どもたちが将来、親になった時にまた自信を持って次の世代を肯定的に育てる。このような「褒め育ての連鎖」こそが、すべての生まれてくる子どもたちが幸せに生きるための、未来への最大の投資となると言える。
