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世界級スクープ連発。ベリングキャット誕生記

取材・構成/大野和基

オープンソースの情報を基にした調査報道ユニット、ベリングキャット。シリア政府の戦争犯罪をあばき、ロシアの暗殺者の身元を特定するなど、数々のスクープを飛ばしている。ベリングキャットとは何者であり、なぜ世界級のスクープを飛ばせるのか。創設者のエリオット・ヒギンズ氏に聞いた(全6話)。

ベリングキャット創設のきっかけ

 ーーあなたは昔ブロガーでしたが、どういうことについて書いていたのですか?

 始めたときは、2つのことです。

 一つはイギリスの電話ハッキング・スキャンダルで、イギリスのタブロイド紙が有名人の電話をハッキングしていたのです。有名人はその犯罪の犠牲者で、当時それは大スキャンダルでした。もう一つはシリア内戦で、オープンソースの映像を見て分析していました。

 ーーどうしてシリア内戦に関心を持ったのでしょうか。

 単に世界で何が起きていることに関心があっただけですが、私はアラブの春などのようなテーマについて、人と議論することに莫大な時間を費やすような人でした。

 この膨大な量の映像や画像がリビアやシリアのような地域から出てきているのに、その正確さを実際に調べている人は誰もいませんでした。ある意味で、それに対するフラストレーションがあったのです。

(写真:iStock)

 そこで私は、映像がどこで撮影されたものかを確認するべく、衛星画像のようなものを使うことができることに気づきました。それが出発点になりました。

 ですから私からみると、自分が関心を持っているトピックについてもっと知り、その映像がこういう国から出てきていることをできるだけ検証しようとすることが、目的になったということです。

 ーーベリングキャットは2014年7月に正式に創立されましたが、創立に至った主な出来事は何でしょうか。

 私にはジャーナリズムのバックグラウンドや調査報道や人権に関するバックグラウンドがないので、最初の頃は、ネットでランダムに検索していました。

 でも最初のビッグストーリーの一つは、反政府組織の映像に映っている兵器を調べたときでした。彼らがどういう兵器を使っているのかわかりました。

 2013年のはじめころ、彼らは武力衝突で今まで見たことがない新兵器を獲得し始めました。それがすべて、旧ユーゴスラビアの一部から出てきたものであることに気づきました。

 そこで私はその情報を私の仕事をフォローしていたニューヨークタイムズの記者とシェアしました。その記者が情報を政府高官に持っていくと、それはサウジがシリア人のために武器を密輸しているのであると言ったのです。それがニューヨークタイムズの第一面を飾り、シリア問題を取材していたジャーナリストたちが、少なくとも私がやっている仕事に対して認識を持つ、大きな触媒になったのです。

(写真:Fabio De Paola)

 次にビッグストーリーになったのは、2013年8月21日に起きたサリン攻撃です。

 そのころにはもう、人が自分自身でオープンソース調査をしたり、その方法を学ぶことに対しての関心が高まっていました。そこで私は新しいウェブサイトを作って、そこで人が調査をする方法を学び、自分たちが行った調査を実名で共有する場所を作ろうと考えました。それがベリングキャットになったのです。

世界の耳目を集めたMH17墜落のケース

 ーーあなたはそのベリングキャットが今の組織になるまでの成長を目の当たりにしてきましたが、ここまで成長すると予想していましたか?

 いいえ。私がこれを始めたのは純粋にそのテーマ(兵器)に関心があったからというだけで、これが人権やアカウンタビリティなどのことに役立つ可能性があるとはまったく考えていませんでした。

 ベリングキャットをローンチしたときでも、私と同じ関心を持っている人が、私がやっていることを行う方法を学ぶ場所を提供することの方が念頭にありました。しかし、ローンチして数日経ったときに、私がクラウドファンディングで集めたお金が入ってきて、ウェブサイトが離陸した感じです。

 ところが、ローンチしてから何日か経ったときに、MH17(マレーシア航空17便)がウクライナ東部で撃墜され、それがオープンソース調査コミュニティ全体の、本当に大きな触媒の役目を果たしました。

 ほとんどの人がその調査にかかわり、中にはボランティアで自分の時間をベリングキャットと一緒に調査することに充て、記事を発表し始めた人もいます。我々がみんな一丸となってMH17撃墜のケースを調査し始めたのです。

 このケースは即、特にロシアの多くのディスインフォメーション(意図的な虚報)にさらされている中で、実際に何が起きたのかを理解するのに、オープンソース調査が非常に明確な役割を果たすケースとして世界中で耳目を集めるケースになりました。

ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く

 ーー記事を発表する際の編集基準や証拠や透明性についてのルールを成文化する際に、BBCやニューヨークタイムズなどすでに確立したメディアが使ってきた、数々のルールを参考にしましたか?

 私がこれを始めたころは、ジャーナリストがどのようにして事実確認をしているのかについて、非常に理想的な考えを持っていました。

 さらに私が使っていた情報は公に入手できるものなので、私の情報については非常に透明性があると同時に、私自身の知識にも限界があります。ですから、ロケット発射装置を持った反逆者の映像があれば、私はそれがどこで撮影されたかは言えますが、その情報以上の想定は何もしていませんでした。

 しかし、そこから他の人が続けて調査をし、同じ情報を使って事実をダブルチェックして、我々が入手した情報に積み上げていくことができます。最初の頃私がやったのはそういうことです。

 そのことが我々の編集プロセスに影響を及ぼし、ここ2、3年発展させてさらに正式な編集プロセスになりました。2018年以降組織もかなり拡大し、30人のスタッフメンバーがフルタイムやパートタイムで仕事をしています。今は正式な編集プロセスとレビュープロセスがあります。

 我々はさらにアカウンタビリティの点からも、オープンソース調査についてかなり取り組みました。ですからアカウンタビリティの調査だけに焦点を合わせた、まったく別のプロセスがあります。

 このプロセスのミソは、こういう調査によって証拠を保存し、ケースファイルを作って、あとでそれをアカウンタビリティ・プロセスにかけ、さらにアーカイブに正しく保管され、他の人たちが自分たちの仕事と照らし合わせて、彼らの仕事に組み込ませることができるように、体系化されたプロセスをそこでみることができることです。それが今まさにウクライナ戦争で我々が行っていることです。

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